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玄海諸島における静脈物流ネットワークのあり方に関する調査研究報告書

 事業名 玄海諸島における静脈物流ネットワークのあり方に関する調査研究
 団体名 九州運輸振興センター  


参考資料3. 他の離島における静脈物流の現状(事例)
 ここでは、玄海諸島における検討の参考とするため、全国の離島における、静脈物流に関連して生じている課題、および課題解決に向けた取組みについて整理する。
 
1. 社会・生活面からみた課題とその解決に向けた取組み
(1)課題
(1)人口規模が小さく、島内で完結した廃棄物処理・リサイクルが困難
 離島では、都市型ライフスタイルの普及や農業・漁業等の近代化・機械化に伴い、廃棄物の排出量は増加し、廃棄物の組成も島内で自然分解が困難なプラスチック等の割合が増加している。また、環境面への配慮から、個別リサイクル法が制定され、廃棄物の焼却、埋め立てにかかる規制が強化されており、従来型の島内での廃棄物の自家処理は困難である。
 しかし、ごく一部の大型離島を除き、多くの離島では人口規模が小さく、廃棄物の排出量は少ないため、島内で、大規模な投資を必要とする廃棄物処理施設やリサイクル施設を整備することは難しい。このため、島内で完結した廃棄物処理・リサイクルのシステム構築は困難な状況となっている。
 
(2)島外輸送に伴う、住民1人あたりのコスト負担の増加
 上記のような観点から、適正な廃棄物処理やリサイクルを行うためには、廃棄物やリサイクル財の本土への輸送が不可欠となり、これらの輸送にかかるコストが廃棄物処理コストに上乗せされて、住民1人あたりの負担が重くなるため、リサイクル等が進みにくい要因となっている。離島の年間ごみ処理経費をみると、人口1人あたり約15,000円だが、人口規模が小さい島ほど処理にかかるコストが高い。
 
図3-1 人口規模別にみた離島のごみ処理に要した経費(2000年度)
資料)国土交通省「離島地域における循環型社会形成に関する基礎調査」(2001)
 
(2)課題解決に向けた取組み
(1)廃棄物排出量の削減
 離島では、高齢化や過疎化が進み、地域コミュニティの弱体化は懸念されるものの、大都市と比較して、相対的に地域社会の一体性は高い。また、空間的にみた独立性が高く、地域を限定した社会実験等を実施しやすい。このような地域特性を活かして、島民が実施主体となる、廃棄物の排出量削減に向けた取組みが行われている。
 
■女性団体によるリサイクルの促進(弓削島/愛媛県上島町)
【島の概要】愛媛県北東部に位置し、上島町役場が位置する。弓削島を含む上島地域の交通の中心は因島(広島県)であり、因島への航路は頻繁に運航。主要産業は漁業。
【取組内容】地元女性の団体「ゆげ女性塾」が中心となり、生ゴミの堆肥化の普及(ぼかしづくり)、廃油の有効活用(石けんづくり)、段ボール・牛乳パックの再利用(アート利用)、不要品リサイクル等の取組を行っている。ゴミ減量化・リサイクルの取組は小中高の総合学習にも取り入れられ、塾メンバーが指導にあたる。また、ゴミ減量化の講演会や清掃活動、啓発イベント等を実施している。
【取組経緯】平成5年から、県が人材育成の観点から各市町村で「生活文化女性塾」をつくる施策を実施してきた。施策終了後も活動を継続させ、平成8年に女性が中心となった「ゆげ女性塾」を発足。各地区からの30〜40歳代の女性メンバー(18人)で構成され、女性の視点で身近な環境問題の解決に向けた取組や、民族誌作成等を行っている。
 
■デポジット制の導入(姫島/大分県姫島村)
【島の概要】瀬戸内海西端に位置し、国東半島の伊美港より北へ6kmの地点にある。人口は3,000人弱。主要産業は漁業(車エビ養殖等)
【取組内容】商工会が事務局となり、島内で販売する缶飲料に店があらかじめシールを張り、10円を上乗せして販売。空き缶を小売店に持ち込めば10円が返却される。約9割の空き缶を回収して、ポイ捨てを防止しリサイクルを実現している。これにより、空き缶だけでなくビンやペットボトルのポイ捨ても激減している。
 このほか、姫島村ではビニールの買い物袋を削減するため、婦人会と連携して、布製の買い物袋を1,200枚作製し、全戸に配布した。その結果、平均3割が持参し、ビニール袋削減に寄与している。
 
デポジットシール
 
【取組経緯】空き缶散乱防止を目的に昭和59年に開始された。一自治体としては全国初の試みである。もともとは県のモデル事業として開始されたが、予想以上の成果が見込めたことから、その後も村単独で継続して実施している。
 
(2)輸送コストの削減
 離島から本土への輸送手段は限定されており、同一ルートで輸送している廃棄物やリサイクル財を共同で輸送することで、輸送コストを効率化しているケースがみられる。
 
■廃家電の共同輸送(種子島/鹿児島県西之表市・中種子町・南種子町)
【島の概要】鹿児島県南部に位置し、鹿児島−種子島間では飛行機および高速船・フェリーが多数運航。人口約36,000人。
 
種子島西之表港
 
【取組内容】鹿児島県電機商業組合種子島支部が中心となり、船社(大部分の家電製品の輸送を担う)と連携して廃家電の本土への共同輸送を実施。船社が、家電小売店から廃家電を回収し、本土への海上輸送、指定引取業者までの一貫輸送を請け負う。鹿児島県電機商業組合種子島支部の組合店は現在17店である。共同輸送には、組合未加入の量販店も参加している。
【取組経緯】輸送事業者によって輸送料金に格差があり、また、店舗ごとの輸送では、特に本土での陸送費が高いことが課題だった。そこで、組合として一括共同輸送することでコスト面、手続き面での効率化を図るため、組合と事業者で交渉した。
 
■実習船による本土への空き缶輸送(大島/東京都大島町)
【島の概要】東京都伊豆諸島の北端に位置し、東京から約120km、高速船で2時間弱の距離である。人口約9,000人。
【取組内容】地元の高校ボランティアクラブが地域でアルミ缶を回収している。回収したアルミ缶は、自校の実習船で島外搬出し、事業者に直接引き渡している。
 
2. 立地・自然面からみた課題とその解決に向けた取組み
(1)課題
(1)増加する漂着ゴミの処理負担が大きい
 離島では、周囲を海洋に囲まれている特性上、海岸に漂着するゴミによる景観破壊や環境汚染が問題となっている。特に、日本海側の離島や海岸では、国内外から廃棄物等が漂着し、中には医療廃棄物や劇物指定の化学薬品の容器などもみられ、対策が必要とされている。これらの漂着ゴミは品目によって産業廃棄物または一般廃棄物として処理されるが、処理費用負担が大きな問題となっている。
 
(2)固有の自然環境・生態系を有し、保全の必要性が高い
 離島では、固有の自然環境や生態系を有しているケースが多いが、近年、廃棄物の不法投棄や観光客の増加によるダメージが問題となっている。また、これらの自然環境や生態系は、隔離された地域特性により維持されているものであり、外来種の流入など島外からの影響を受けると、その回復に大きな困難を伴う。
 
(2)課題解決に向けた取組み
(1)漂着ゴミの回収
 多くの離島で、自治体負担による漂着ゴミの回収作業が行われている。玄海諸島においても、沿岸域全般に漂着することから、陸上からの回収が困難な地域もあり、船舶などを使用するため、多額の経費が必要となっている。そのような中で、島内外のボランティアによる一斉回収を継続的に実施しているケースがみられる。
 また、国では、2006年4月、環境省や国土交通省など1府6省がこれらの問題解決に向けて局長級の対策会議を設置し、検討を始めたところである。
 
■島内外のボランティアによる漂着ゴミの回収(飛島/山形県酒田市)
 
 
【島の概要】山形県酒田より北北西約39.3kmの沖に位置し、本土への所要時間はフェリーで1時間30分。人口は約300人、主要産業は漁業。
【取組内容】大量の漂着ゴミから美しい海岸を取り戻すため、2001年からクリーンアップ作戦を実施している。NPO、東北公益文化大学、山形県及び酒田市などで構成される実行委員会の呼びかけに、ボランティア、島民、関係者など総勢約300人が参加し、一斉に清掃活動を行う。参加者は県内だけではなく、関東方面からの参加もある。
【取組経緯】漂着ゴミの増加を受けて、島民から行政に対応要望があり、2001年度に行政主導で市民ボランティアによる回収作業を実施。翌年NPO主導で作業を実施し、離島ゴミサミットを島で開催したことで島民、自治体、国、研究者等が一堂に会して議論し、活動が活発化。
 
3. 産業・物流面からみた課題とその解決に向けた取組み
(1)課題
(1)海上輸送の往路と復路、季節間の貨物量のばらつきが大きい
 一般に離島航路は、生活物資等が本土から輸送される一方、離島から本土に輸送する貨物量が少なく、また主要産業である農水産業は季節によって出荷量が変動するため、往路と復路、あるいは季節によって輸送量のばらつきが大きくなる。これにより、フェリーや貨物船等を利用して貨物を輸送する場合、運賃が他地域に比べて割高になりがちである。
 
(2)廃棄物の輸送が可能な船舶が限定
 産業廃棄物の輸送にあたっては、産業廃棄物収集・運搬業の免許を取得した航路事業者の利用に限定される。また、廃棄物によっては、輸送時の異臭や船内の汚れ等が発生し、その性質上、旅客や一般貨物と同時輸送が難しいケースもみられる。
 これらが、輸送に適した貨物船の手配が難しい一方で、空きスペースのある復路の船舶が利用されにくい等の問題が生じる要因となっている。
 
(3)産業規模が零細なため、廃棄物は少量多品目
 離島の産業規模は概して零細であり、発生する廃棄物やリサイクル財も同質の品目が大量に発生することはなく、少量多品目の構成となる傾向がある。このため、廃棄物処理にあたってスケールメリットが見込めないことから、小規模離島であるほど、廃棄物処理・リサイクルビジネスは成立しにくく、収集・運搬業においてもコストが割高となる要因となる。
 
(2)課題解決に向けた取組み
(1)復路の空きスペースの活用
 廃棄物やリサイクル財の輸送は、(自動車リサイクル等作業工程に期限がある場合を除いて)スピードよりもコスト削減が優先されるため、輸送ロットをまとめて大口で輸送することが効率的である。また、廃棄物やリサイクル財の輸送に適した容器等を用意し、定期航路の復路の空きスペースを活用して輸送するケースもみられる。
 
■定期貨物船の復路空きスペースを活用した使用済自動車の本土輸送(種子島/鹿児島県西之表市・中種子町・南種子町)
【島の概要】鹿児島県南部に位置し、鹿児島−種子島間では飛行機および高速船・フェリーが多数運航。人口約36,000人。
【取組内容】種子島の航路事業者が、使用済自動車を丸車の状態で、本土の処理事業者まで輸送する際に、航路事業者が丸車を2台積載可能なコンテナを予め用意し、定期貨物船で本土の委託先事業者まで小口輸送を行っている。
【取組経緯】2005年10月から、自動車リサイクルの離島支援対策事業が開始されたことを受けて、サービスが開始された。
参考)国土交通省「離島地域における循環型社会形成に関する基礎調査」(2001)、九州運輸振興センター「鹿児島県における静脈物流ネットワークのあり方に関する調査」(2005)、国土交通省離島振興課ホームページ ほか


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更新日: 2022年5月21日

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