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(4)処理の役割
a)関係者の役割分担
 自動車メーカーを含めて自動車のリサイクルに携わる関係者が適切な役割分担を行い、特に、自動車メーカーおよび輸入業者(自動車製造業者等)がリサイクルの責任を果たすことが義務づけられた。
 また、従来の自動車リサイクル事業者の機能が活かされ、これらの関連事業者は、都道府県知事または保健所設置市長の登録・許可制となっている。
 
表2-8 自動車リサイクルにおける関係者ごとの役割
関係主体 登録・許可 自動車リサイクルで求められる役割
自動車所有者 - リサイクル料金を負担し、最終所有者は引取業者に使用済自動車を引き渡す。
引取業者(自動車販売、整備業者など) 登録制 自動車所有者から使用済自動車を引き取り、フロン類回収業者又は解体業者に引き渡す。<リサイクルルートに乗せる入口の役割>
フロン類回収業者 登録制 フロン類を適正に回収し、自動車製造業者等に引き渡す(自動車製造業者等にフロン類の回収費用を請求できる)。
解体業者 許可制 使用済自動車の解体を適正に行い、エアバッグ類を回収し自動車製造業者等に引き渡す(エアバッグ類について、自動車製造業者等に回収費用を請求できる)。
破砕業者 許可制 解体自動車(廃車ガラ)の破砕(プレス、せん断処理、シュレッディング)を適正に行い、シュレッダーダストを自動車製造業者等に引き渡す。
自動車製造業者・輸入業者(自動車製造業者等) - 自らが製造又は輸入した自動車が使用済となった場合、その自動車から発生するフロン類、エアバッグ類及びシュレッダーダストを引き取り、リサイクル(フロン類については破壊)する。
資料)環境省ホームページをもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
b)(財)自動車リサイクル促進センターによる制度運営
 自動車関係業界が中心となって設立された(財)自動車リサイクル促進センターは、指定再資源化機構として、自動車製造業者等が、単独でのリサイクルは困難な小規模メーカー・輸入業者(特定自動車製造業者等)である場合や、並行輸入車など、リサイクルの義務を負った自動車メーカー等が存在しない場合(義務者不存在車等)は、これに代わりリサイクルを担う。
 また、資金管理法人として、ユーザーから徴収したリサイクル料金を管理する機能(離島対策含む)や、情報管理センターとして、使用済自動車のリサイクルに関する移動報告情報を管理し、必要な情報提供を行う移動報告制度の管理機能なども担う。
 
c)費用負担のしくみ
 リサイクル料金は前払い方式が導入され、自動車の最終所有者が費用を負担する。リサイクル料金は、予め自動車メーカー・輸入業者が設定・公表することとなっており、普通乗用車の場合約1万円〜1.8万円である。自動車所有者から預託されたリサイクル費用は、資金管理法人である(財)自動車リサイクル促進センターが管理・運用し、リサイクル実施時に自動車メーカー・輸入業者が払い渡しを請求し、支払われる。
 リサイクル料金の支払いは、1つの車について原則1回である。リサイクル料金が預託された際には、それを証明するリサイクル券が発行され、自動車の所有者は適切に保管することが必要である。リサイクル料金を預託済の自動車を譲渡する場合は、新所有者が旧所有者に対して、預託金相当額を中古車売買代金に含めて支払い、リサイクル券も引き継ぐこととなる。
 
表2-9 自動車リサイクル料金の目安
分類 おおよその料金 その他
普通乗用車
(エアバッグ類4個、エアコンあり)
1万円〜1万8千円程度 ○資金管理料金
新車購入時:
380円
車検等時・廃車時:
480円
○情報管理料金
130円(別途加算)
軽・小型乗用車
(エアバッグ類4個、エアコンあり)
7千円〜1万6千円程度
中・大型トラック
(平ボディー、エアバッグ類2個、エアコンあり)
1万円〜1万6千円程度
大型路線・観光バス
(エアバッグ類2個、エアコンあり)
4万円〜6万5千円程度
資料)自動車リサイクルシステムホームページより三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
d)離島対策支援事業
 リサイクル料金預託済の中古車を輸出した際にリサイクル処理が不要となった場合などは、リサイクル料金が剰余金となり、この剰余金の一部をもとに、離島から本土への使用済自動車の輸送に対して補助を行う離島対策支援事業が実施されている。
 対象となる離島は、離島4法(離島振興法、奄美群島新港開発特別措置法、小笠原諸島振興開発特別措置法、沖縄振興特別措置法)の対象地域でかつ地理的条件や交通事情等から引取業者への使用済自動車の引渡しが他の地域に比べて著しく困難な地域である。
 資金出えんの対象は、本土への海上輸送(港湾荷役を含む)分である。二次離島から中核の離島への海上輸送も対象となる。また、資金出えん額は海上輸送にかかる費用の対象経費額の8割以内である。
 具体的な実施方法については、(財)自動車リサイクル促進センターにおいて設置された離島対策等検討会で検討が行われ、2005年10月から事業が開始された。
 資金出えんの対象となる海上輸送のパターンは表2-10のように、島内における自動車リサイクル関連事業者の有無や利用する航路等の状況から、5パターンが想定されている。
 
表2-10 海上輸送パターンのイメージ
パターン 輸送方法 対象経費 証拠書類(例)*1
A 市町村がチャーターする運搬船により、最終所有者が運搬
・チャーター船運搬・荷役
・その他の費用
・船会社、荷役会社との契約書・領収書
・引取証明書
B 最終所有者(又は委託を受けた者)が定期船又はチャーター船を利用して運搬
・定期船運賃又はチャーター船運搬・荷役・その他の費用
・定期船乗船券半券等
・船会社、荷役会社との契約書・領収書
・引取証明書
C 市町村がチャーターする運搬船により、関連事業者*2が運搬
・チャーター船運搬・荷役費用
・船会社、荷役会社との契約書・領収証
・移動報告の画面コピー
D 関連事業者が運搬船をチャーターして運搬
・チャーター船運搬・荷役費用
・船会社、荷役会社との契約書・領収証
・移動報告の画面コピー
E 関連事業者が定期船を利用して運搬
・定期船運賃・荷役費用
・定期船乗船券半券等
・荷役会社との契約書・領収書
・移動報告の画面コピー
*1:資金出えんにあたって輸送・引取実績等を証明する関連書類で、離島市町村において管理するもの。標記証明書類が入手できない場合は、これに代る輸送・取引実績等を証明する関係書類を証拠書類とする。いずれにしても事業計画書に何を証拠書類とするかについて記載することが必要。
*2:島内に存在する自動車リサイクル法関連事業者(登録引取業者や許可解体業者等)。
資料)第4回離島対策等検討会資料「離島対策支援事業要綱別紙」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
 2005年度の離島対策支援事業の結果は以下のとおりである。離島対策支援事業を申請した市町村は70市町村、発生台数は57,249台を予定していたが、実績は1割強にとどまった。
 本調査の対象市町村は、2006年4月より離島対策支援事業の要請を行っている。なお、2006年度新たに申請を行った市町村は49市町村である。
 
表2-11 2005年度離島対策支援事業の結果
要請(A) 実績(B) 事業計画比(B/A)
市町村数 70市町村 57市町村 81.4%
発生台数 57,249台 6,082台 10.6%
出えん額 274,833千円 28,910千円 10.5%
台あたり単価 6.0千円 5.9千円 -
資料)第8回離島対策等検討会資料
 
e)電子マニフェスト(移動報告)制度
 各関連事業者等が使用済自動車等の引取り・引渡しを行った際に、一定期間内に引取り・引渡しの内容を情報管理センター((財)自動車リサイクル促進センター)に事業者のパソコンからインターネットを通じて報告する電子マニフェスト(移動報告)制度が導入された。期間は各処理工程ごとに定められており、引き取りは1ヶ月、フロン回収は20日、解体は4ヶ月、破砕は1ヶ月である。
 (財)自動車リサイクル促進センターでは、使用済自動車のリサイクルに関する事業者から移動報告情報を受け、これをファイルに記録、保存し、関連事業者等に必要な情報を提供することにより電子マニフェスト(移動報告)制度の維持、管理を行う業務を担っている。
 移動報告期限を過ぎた場合は、当該事業者が登録または許可を受けている自治体から遅延理由の確認が行われている。なお、国が定める「遅延報告対応マニュアル」に基づき、以下のような場合は、遅延がやむを得ないと判断されている。
 
<移動報告遅延がやむを得ないと判断されるケース>
・海上輸送(廃車がら輸出を含む)、遠隔地への陸上輸送で、輸送ロットに見合った出荷量を確保する場合
・非意図的に配船が遅延した場合
・年度末に大量の引取が発生した場合
 
f)自動車重量税の廃車還付制度
 自動車重量税の廃車還付制度は、自動車リサイクル法に基づき、電子マニフェスト上で最終工程まで終了し、かつ永久抹消が確認された後に、自動車検査証の残存期間に応じた自動車重量税額の還付を受けることができる制度である。
 離島では、使用済自動車を最終処理するまでの工程が長くなるケースが多い。この場合、運行停止時に一時抹消登録をまず行うことで、自動車リサイクルが開始された日(引取業者が(財)自動車リサイクル促進センターに引取報告をした日の翌日)、あるいは一時抹消登録日のいずれか遅い日を確定日として、確定日の翌日から車検証の有効期間の満了日までの期間を(車検残存期間が1ヶ月以上ある場合は)「車検残存期間」として、それに応じた金額の還付を受けることができる。
 つまり、自動車リサイクルの工程期間が長くなった場合も、還付金の返還時期は遅れるが、保管期間に関わらず、還付金額は車検残存期間に応じた金額を受け取ることが可能となる。


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