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2. 課題解決に向けた基本的な考え方
(1)定期航路による廃棄物等の輸送の促進
 玄海諸島では、離島ごとに独立した定期航路が開設されている。廃棄物等の輸送にあたっては、毎時RORO船を利用するよりも、最大限定期航路を活用するのが効率的と考えられる。
 
表2-3-1 玄海諸島に就航する船舶の概要(再掲)
番号 航路区間 事業者名 船名 総トン数 航海速力 旅客定員 就航年
1 高島〜唐津 唐津市漁業協同組合 ニューたかしま 19 13.0 98 1998
2 神集島〜湊 からつ丸 58 18.0 96 1997
3 神集島〜湊 (有)ユージングボート宇野 第八ほうめい 18 20.0 48 1997
4 小川島〜呼子 川口汽船(有) そよかぜ 85 13.0 95 1999
5 加唐島〜呼子 (有)加唐島汽船 かから丸 45 19.0 86 2003
6 松島〜呼子 中尾政友 新栄丸 10 - 12 -
7 馬渡島〜名護〜呼子 (有)郵正丸 ゆうしょう 57 20.0 80 2005
8 向島〜星賀 樋口勝 向島丸 12 - 12 -
資料)九州運輸局資料等より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
(1)対象品目
 定期航路の利用にあたっては、対象となる品目が限定される。具体的には、島内収集において積載型小型移動式クレーン等を必要とせず、かつ現行規模の旅客船で輸送可能な品目(自動車や廃船などを除く品目)である。
 
表6-2-1 定期航路で輸送が可能と想定される主な品目
輸送頻度 定期航路で輸送可能 定期航路で輸送不可
定期 可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミ 粗大ゴミ*
不定期 廃家電 使用済み自動車、廃船
備考*)島によっては不定期
 
(2)船舶設備
 定期航路で廃棄物等の輸送を行うためには、荷役設備等の整備が必要である。現在、小川島航路の旅客船は、貨物輸送に対応可能な荷役設備を備えており、可燃ゴミを輸送している。可燃ゴミの輸送に際しては臭気発生等が懸念されるが、空気清浄機等の設備を整備することで旅客からの苦情はみられない。当該航路では、可燃ゴミ以外の品目拡充が事業者から求められている。
 同様の設備を、高島や神集島、加唐島、馬渡島の旅客船においても整備できれば輸送が可能となる。今後船舶のリプレースの機会に合わせて設備を整備し、収集・運搬体制を順次整えていくことが期待される。ただし、設備の増強にあたっては船舶の大型化等が必要になる可能性があり、特に国庫補助航路においては、国や県の関係者との十分な協議が必要である。
 なお、松島、向島の定期航路は海上タクシー事業として運航され、船舶が極めて小型であることから、現在向島で実施されているように、島民が手荷物として輸送する形態が適当と考えられる。
 
(3)収集体制
 定期航路を活用して廃棄物等を輸送する場合には、行政や民間処理業者が乗船しないため、島内収集体制を構築する必要がある。島内の集落分布などを考慮して、可能な限り渡船場付近にステーションを集約して、島民協力の下で収集を行うことが望ましい。
 小川島や馬渡島のようにステーションの集約化が適当でない場合には、島民の個人事業者に収集を委託することが想定される。
 
図6-2-1 輸送段階別にみた輸送形態
 
(2)RORO船の効率的な活用
 嵩が大きく定期航路での輸送が困難な品目や定期航路で輸送しきれない大量輸送の場合はRORO船で輸送する。定期的に排出される粗大ゴミ(一部の島では不定期に排出)は、現行通りチャーター船による輸送を行う。
 一方、不定期に排出される使用済み自動車は年間発生数が少ないため、一斉回収による共同輸送を行うよりも、別用途で寄港したRORO船の空きスペースを活用した輸送が効率的と考えられる。なお、廃船については大部分が自航もしくは他の船に牽引してもらう形態で輸送されるため、RORO船を利用するケースは少ないと考えられる。
 
(1)チャーター船による収集
 現在、粗大ゴミは旧市町村単位で収集が行われているが、ルートを「加唐島・松島・馬渡島(旧鎮西町)・小川島(旧呼子町)」と「高島・神集島(旧唐津市)」2つに再編して、ルートごとに収集日が同一となるよう島間で調整することにより、島ごとに個別に輸送するのに対し、輸送効率化を図ることが可能となる。
 
(2)別用途のチャーター船の空きスペースの活用
 RORO船の寄港する用途として、一般廃棄物の収集や建設工事等の資材運搬、ガスボンベ運搬(一部の島のみ)等があげられる。
 
表6-2-2 RORO船車両積載可能台数
船社 車両積載可能台数
A社 「2トン車4台程度」または「パッカー車2台+普通自動車5〜6台程度」
B社 「普通自動車15台程度」または「10トン車5台程度」
 
 RORO船の空きスペースの活用にあたっては、事前に排出量を船社に連絡し、船社の寄港予定や空き状況に併せて、関係者間のスケジュール調整や手続きを行う必要がある。
 その際、円滑な調整を行うには、島側の窓口を一本化して情報を集約することで、効率的な輸送計画の作成やトラブルの未然防止が可能となる。
 
(3)島間での連携
 各島の実情に応じた廃棄物等の輸送にかかる諸問題の解決や普及啓発に向けた取組を継続的に行っていくことが取組の第一歩だが、玄海諸島では島同士で同じような問題を抱えている現状がある。同一の活動を実施せずとも、自らの課題解決に結びつけるべく、まずは、隣の島がどのような活動を行っているか、情報交換を行っていくことが必要である。
 また、これまで共同輸送は、行政回収分のみ旧市町村単位の島間で行われてきたが、旧市町村単位を越えた島間での共同輸送や、島民が個別に排出するリサイクル財の共同輸送などの実施が考えられる。


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