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第1章 調査の概要
1. 調査の背景と目的
 循環型社会の形成をめざした「循環型社会形成推進基本法」が2001年1月に施行され、廃棄物・リサイクル対策を総合的かつ計画的に推進するための方針が示された。また、容器包装や建設廃材などに関する個別リサイクル法も施行され、全国各地でリサイクルが進められているところである。
 しかし、離島においては島内に十分な廃棄物処理施設やリサイクル施設が無いため、廃棄物・リサイクル財等を本土の処理施設へ海上輸送することが不可欠となる。特に、中間処理施設等が立地する大規模な離島であれば、本土へ海上輸送する廃棄物の減量が可能だが、小規模な離島ではこれらの施設が存在せず、廃棄物の全量を本土に輸送せざるを得ない。そのため、廃棄物・リサイクル財の収集・運搬に伴うコスト負担もより大きくなる。
 一方、離島における海上輸送についてみると、一般に、本土から離島への貨物量に対して、離島から本土に輸送する貨物量が少ないため、定期航路の輸送貨物量の往路と復路によるばらつきが非常に大きくなっている。また、小規模な離島の離島航路では、自治体や小規模経営の事業者が多く、特に本土に近い小規模な離島では、自動車や大型貨物を積載できない旅客船しか就航していないケースが多いなど、事業規模やノウハウ等の面で取り組むべき課題は多い。
 このように、離島の中でも、特に小規模な離島においては、生活環境の改善や航路事業の安定に向けて、離島内において可能なリサイクルを進めるとともに、リサイクルが困難な循環資源について、本土への効率的かつ円滑な海上輸送体制を確立する必要性が高い。北部九州は小規模な離島が点在する地域であるが、平成14年度に実施された「離島における廃棄物等の処理・輸送に関する調査」では、大規模な離島が中心となる長崎県の対馬地区、壱岐地区、五島地区を対象とした検討が行われた。
 そこで、本調査は北部九州のうち、特に小規模離島の多い佐賀県の玄海諸島を対象として、離島と本土間における効率的かつ円滑な静脈物流ネットワークのあり方を検討・提案することにより、関係自治体や関係事業者等の具体的な取組み方策を明確化し、各離島の特性に応じた循環型社会の形成を推進することを目的とする。
 
2. 調査の対象地域
 本調査では、佐賀県の玄海諸島を対象として、静脈物流ネットワークの概略を検討する。具体的には、以下に示す7島が対象となる。これらはいずれも唐津市に属している。
 玄海諸島:高島、神集島、小川島、加唐島、松島、馬渡島、向島
 
3. 調査の対象品目
 本調査では、玄海諸島で排出される廃棄物・リサイクル財(以下、「廃棄物等」)の処理および輸送を検討対象とする。具体的には、下表の各品目を対象とする。
 
調査の対象品目
一般廃棄物 燃えるゴミ、不燃物、粗大ゴミ、古紙 等
産業廃棄物 汚泥、動物のふん尿、がれき類、鉱さい、ばいじん、金属くず、廃プラスチック類、木くず など
個別法に基づくリサイクル品目 使用済み自動車、食品廃棄物、建設廃材、廃家電、容器包装(ペットボトル等)
その他 金属スクラップ、廃FRP船 等
備考)漂着ゴミは品目等に応じて一般廃棄物または産業廃棄物として処理されている。
 
4. 調査フロー
 
5. 調査内容
(1)玄海諸島の概況および関連事例の整理
(1)玄海諸島の概況の整理
 玄海諸島について、廃棄物排出・処理の背景となる地域の現状を把握、整理する。
<調査項目>
*概況:位置、人口、産業 等
*海上輸送網:港湾、定期航路 等
*市町村合併の状況  等
 
<調査方法>
*文献調査
 
(2)廃棄物処理・リサイクルのしくみ
 一般廃棄物、産業廃棄物、個別法に基づくリサイクル品目の廃棄物処理およびリサイクルのしくみ等について整理する。
 
<調査項目>
*対象品目
*廃棄物に関する法制度/リサイクルに関する法制度
*収集・運搬・処理のフロー
*事業制度  等
 
<調査方法>
*文献調査(参考文献:(財)九州運輸振興センター「鹿児島県の離島における静脈物流ネットワークのあり方に関する調査」)
 
(3)他離島における静脈物流の現状(事例整理)
 廃棄物の排出量削減や、島内での効率的な廃棄物・リサイクル財の収集・処理、本土への輸送の効率化など、他の離島における廃棄物処理やリサイクルを推進する取組みについて整理する。
 
<調査項目>
*活動内容、取組体制
*実施に至る背景
*実施する上での問題点  等
 
<調査方法>
*文献調査(新聞記事、論文、離島関連雑誌 など)


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