日本財団 図書館


(4)自立訓練の宿泊型について
自立訓練の宿泊型
 日中、一般就労や外部の障害福祉サービスを利用している知的障害者、精神障害者に対し、一定期間、夜間の居住の場を提供する「宿泊型」が自立訓練事業(生活訓練)の類型として創設される。利用期間は原則1年で利用開始から3ヶ月ごとに更新。報酬は270単位だが、1年を超えると40%減算される。
 居室は原則個室で、人員配置は利用者60人に対しサービス管理責任者が1人以上、同じく10人に対し生活支援員が1人以上、同じく15人に対し地域移行支援員が1人以上。
 通所型の自立訓練事業所の一部として行われる場合(定員10人以上)以外に、宿泊型のみを行う形態(定員20人以上)として(1)障害者就業・生活支援センターに併設する場合(2)現行の精神障害者生活訓練施設、同入所授産施設、同福祉ホーム(B型)、知的障害者入所更生施設、同入所授産施設、同通勤寮が転換する場合が想定されている。
 
自立訓練(生活訓練)事業における「宿泊型」の新設について
 
自立訓練(生活訓練)事業における「宿泊型」について
[1. 事業の位置付け]
 現行制度における精神障害者生活訓練施設等の機能を踏まえ、日中、一般就労や外部の障害福祉サービスを利用している者を対象として、一定期間、夜間の居住の場を提供し、帰宅後に生活能力等の維持・向上のための訓練を行うとともに、地域移行に向けた関係機関との連絡調整等を行い、積極的な地域移行の促進を図る。
[2. 事業実施の要件]
 自立訓練(生活訓練)事業における「宿泊型」は、以下の要件を満たした場合に実施可能とする。
 
【実施可能事業所等】
イ 宿泊型のみ行う自立訓練(生活訓練)事業所として行う場合
(1)障害者就業・生活支援センターに併設して行う場合
(2)現行の精神障害者生活訓練施設、精神障害者入所授産施設、精神障害者福祉ホーム(B型)、知的障害者入所更生施設、知的障害者入所授産施設、知的障害者通勤寮が転換して行う場合
 
ロ 通所型の自立訓練(生活訓練)の事業所の一部として行う場合
自立訓練(生活訓練)事業所
 
【人員配置】
○サービス管理責任者60:1
※通所型事業所の一部として行う場合には、通所型の利用者との合算により算出する。
○生活支援員10:1以上(うち1人以上常勤)
○地域移行支援員15:1以上
※障害の福祉又は就労に関し専門的知識及び実務経験を有する者
 
【設備基準】
○定員規模
(1)宿泊型のみ行う自立訓練(生活訓練)事業所:20人以上
(2)通所型の自立訓練(生活訓練)の事業所の一部として行う場合:10人以上
 ただし、宿泊型の定員とは別に通所型事業所の定員規模は20人以上であり、また、多機能型事業所である通所型事業所の一部として行う場合は、多機能型事業所の定員の合計が20人以上であること。
※詳細別紙
○居室の定員 原則個室
※ 現行の施設(2人以下、4人以下)からの移行については、経過措置を講ずる
○居室面積 7.43m2
※ 居室面積が、6.6m2以上である通勤寮及び居室面積が4.4m2である精神障害者生活訓練施設が移行する場合については経過措置を講ずる。
○相談室・多目的室(兼用可)
○食堂
○浴室、洗面所、便所
 
[3. 利用期間]
 原則1年間とし、利用開始から3ヶ月ごとに更新
※市町村は、利用継続の必要性について確認し、更新支給決定を行う。
 
 1年を超える場合には、市町村審査会の意見を聴くものとする。
 
3. 障害者自立支援法に基づく日中活動と住まいの場について
(1)日中活動と住まいの場の分離
 障害者自立支援法によって、従来障害の種類に応じて33種類に分かれていた施設福祉サービスが、障害の種類を越えて6つの日中活動に統合、再編されました。住まいの場に関するサービスも分離され、新しい仕組みに変わりました。
 
(2)日中活動に関するサービス
(1)介護給付サービス
 障害者自立支援法による福祉サービスは、介護給付と訓練等給付などから構成される自立支援給付と地域生活支援事業に分かれます。
 療養介護は、医療と常時介護を必要とする人に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護および日常生活の世話をおこなうもので、医療機関への入院と併せて実施されます。生活介護は、常時介護を必要とする人に、日中、入浴、排せつ、食事の介護等をおこなうとともに、創作的活動または生産的活動の機会を提供するものです。
 例えば、身体障害者療護施設における日中支援がこれに相当します。同施設に入所していた人は、今後は日中は「生活介護」を住まいの場としては同施設が提供する「施設入所支援」をそれぞれ利用することになります。地域生活へ移行後も日中は生活介護の事業を利用し続けることができます。
 
(2)訓練等給付のサービス
 訓練等給付である自立訓練には、身体障害者を対象にした「機能訓練」と、知的障害者や精神障害者を対象にした「生活訓練」があります。
 機能訓練は、地域生活を営む上で、身体機能・生活能力の維持・向上等のためのリハビリテーションや相談支援をおこなうものです。利用者毎に標準期間(18ヶ月)内で、利用期間が設定されます。従来の身体障害者更生訓練施設などによるサービスに相当します。就労移行支援は、一般企業への就労を希望する人に24ヶ月以内を標準期間として、就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練をおこないます。
 就労継続支援は、一般企業等での就労が困難な人に働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のために必要な訓練をおこないます。
 訓練等給付は、介護給付と違ってその利用にあたっては障害程度区分の認定を必要としません。ただし、個別の支援計画が作成され、その結果を踏まえて市町村による支給決定がおこなわれます。
 
(3)地域活動支援センター
 地域活動支援センターは、市町村が地域の特性に応じて、創意工夫しながらおこなう地域生活支援事業の一つです。個別給付でないので、国と地方公共団体からセンター全体に対する補助金によって運営されます。利用料なども市町村独自に設定することとされています。
 
(3)日中活動の場の課題
 日中活動に関する機能が明確化され、障害のある人にとって一般就労への移行や地域生活の実現を図る上で、サービスがわかりやすくなりました。しかしながら、選べるだけの事業が提供されるかどうか。実際には従来の施設が「多機能型」として複数の日中活動を提供して、そこから選択することになります。
 それぞれの事業の事業者へ支払われる報酬額の違いや支援結果による加算減算の仕組み等から、事業者側から実施する事業種類などが選択されがちです。利用者側のニーズに応える質の高いサービスを提供できる移行を求めます。
 
(4)住まいの場に関するサービス
 施設入所支援は、従来の入所施設によるサービスのうち、日中活動を除くすべての支援と捉えることができます。もちろん、自宅など、地域生活に移行した後も、日中は「生活介護事業」を引き続き利用することができます。
 
(5)自立支援給付と地域生活支援事業による居住サービス
(1)ケアホームとグループホーム
 住まいの場に関する自立支援給付は、施設入所支援の他、介護給付であるケアホーム(共同生活介護)と訓練等給付であるグループホーム(共同生活援助)があります。
 従来は、知的障害者、精神障害者については、地域生活援助事業としてグループホームが設置され、施設や病院から地域生活への移行に向けた重要な居住の場として、その整備が求められてきましたが、障害者自立支援法によってこの体系が大きく変わりました。
 ケアホームは、家事支援や相談支援に加え、食事や入浴、排せつ等の介護を合わせて提供するもので、「知的障害者、精神障害者であって、地域において自立した日常生活を営む上で、食事や入浴等の介護や日常生活上の支援が必要な者」が利用できます。人的支援体制は、従来のグループホームに配置されていた世話人に加え、生活支援員が配置されます。介護についてはホームヘルプを外部委託することができます。
 グループホームは、食事や掃除等の家事支援や日常生活上の相談支援を提供するもので、「知的障害者、精神障害者であって、地域において自立した日常生活を営む上で、相談等の日常生活上の援助が必要な者」が利用できます。事業の目的上、相談支援が中心となるため、世話人だけの配置となります。従来の知的障害者のグループホームに認められていたホームヘルプの利用ができないことになりました。
 
(2)居住サポート事業
 住まいの場に関するもう一つのサービスが、居住サポート事業です。
 これは、賃借契約による一般住宅(公営住宅、民間の賃貸住宅)への入居を希望しているが、保証人がいない等の理由により、入居が困難な知的障害者、精神障害者に対し、入居に必要な調整に係る支援を行うとともに、家主等への相談・助言を通じて障害者の地域生活を支援する事業です。地域生活支援事業の中の必須事業「相談支援事業」の一つです。この事業は、直接的な生活支援を提供するものではなく、相談支援の一環として、調整や助言を中心に、利用可能な関連サービスを活用して、一般住宅での居住を通じた地域生活支援を行うものです。
 
(6)住まいの場の課題
 これまで入所型の施設を利用していた人も、そこを運営する事業者が日中活動の事業と住まいの場に関する事業を提供するのであれば、従来の施設利用者としての位置づけはさほど変わりない。しかし、日中活動の場と住まいの場の明確な区分によって、事業の目的に合致した適切なサービスを提供することができるのか、確認することが必要です。
 例えば、ケアホーム、グループホームでは、入所施設方は病院の敷地内に存在する場合には、「地域移行型ホーム」として敷地外のケアホーム、グループホームとは別の指定を受けます。地域移行型ホームを認めることは、「施設や病院から地域へ」の基本的方向に照らすと問題ではないかと議論されました。結果的には、利用期間は原則2年間に限定、既存の建物を転用する場合に限り、併せて入所定員数、病床数の定員を減少させる、地域活動への参加を求めるなどの条件が設定されましたが、『ごく当たり前の「住まいの場」とは本来どうあるべきかが改めて問われています。』


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION