日本財団 図書館


8 特定された海域の評価
 
8.1 リスク評価は、特定の事象の可能性及び影響を客観的に特定するための理論的過程である。リスク評価は、定性的又は定量的であり、系統的かつ厳格に完了した場合、意志決定の有用な補助となる。
 
8.1.1 以下の原則は、リスク評価の種類及び遂行を定義する:
 
.1 有効性−リスク評価は適切な保護のレベルを遂行するために必要な程度にリスクを正確に測る。
 
.2 透明性−リスク評価により勧告された行動を支持する考え方及び証拠、並びに不確かな海域(及び勧告の可能性のある結果)、を明確に文書で立証し、意志決定者に入手可能とする。
 
.3 一貫性−リスク評価は、共通の過程及び方法を用いて、一定のハイレベルの実行を達成する。
 
.4 包括性−リスクの評価及び勧告の作成の際、経済的、環境的、社会的及び文化的価値を含む、あらゆる価値を考慮する。
 
.5 リスク管理−リスクを低くすることは可能であるが、ゼロリスクとすることは不可能である。どのような場合でもそうしたリスクを受容可能なレベル決定により管理すること。
 
.6 予防−想定を行い、勧告を作成する際、リスク評価は不確実さ、信頼のなさ、及び不十分な情報を含むためある程度の予防策を組み入れる。情報の欠如又は不確かさは潜在的なリスクを示すものであると考慮すること。
 
.7 科学的−リスク評価は科学的方法を使用して収集され及び解析された最良の入手可能な情報に基づく。
 
.8 継続的改善−いかなるリスクモデルも進歩した理解を取り込むため定期的に見直し及び最新化を行う。
 
8.2 特定されたバラスト水交換海域を、以下の規準を考慮し、但しそれらに限定されない、その指定が環境、人間の健康、財産又は資源への損害の恐れを最小化するため評価すること。
 
8.2.1 海洋学(例えば、海流、水深)
 
・評価過程の中で、海流、上昇流又は渦を特定し、考慮すること。可能であれば、海流が排出されたバラスト水を陸地より分散させる海域を選択すること。
 
・可能であれば、海流のフラッシングが貧弱である又は潮流が澱んでいることが知られている海域を避けること。
 
・可能であれば、利用可能な最大水深を選択すること。
 
8.2.2 物理化学(例えば、塩分、養分、溶存酸素、クロロフィル'a')
 
・可能であれば、高富養分の海域を避けること。
 
8.2.3 生物学(例えば、cystを含む有害水生生物及び病原体の存在、生物濃度)
 
・可能であれば、バラスト水として取り入れられる可能性のある有害水生生物及び病原体(例えば、有害algal bloom)の発生、侵入又は繁殖を含むことが知られている海域を特定し避けること。
 
8.2.4 環境上(例えば、人間の活動による汚染)
 
・栄養分の増加した又は人間の健康の問題の可能性のある、人間の活動による汚染による影響の可能性のある海域(例えば、汚水排水口に近い海域)は、可能であれば避けること。
 
・敏感な水生海域は実行可能な範囲で避けること。
 
8.2.5 重要資源(例えば、漁場、養殖場)
 
・重要な漁場及び養殖場の様な重要な資源の場所を避けること。
 
8.2.6 バラスト水操作(例えば、量、水源、頻度)
 
・指定海域を使用する船舶からのバラスト水排出の量、水源及び頻度の予想される推定を当該海域の評価で検討すること。
 
8.3 指定されたバラスト水交換海域の最も適切な規模の評価は上記検討を考慮することが必要である。
 
9 バラスト水交換海域の指定
 
9.1 水生環境、人間の健康、財産又は資源に最小限のリスクのみを及ぼす場所及び規模を指定のために選択すること。バラスト水交換海域の境界は明確に規定すること及び国際法に従うこと。バラスト水交換海域を特定の期間適用することも可能であり、それを明確に規定すること
 
9.2 ベールラインの評価を将来のモニター及び見直しを補助するために実行すること。特定及び評価の過程はベースラインのための十分な情報を提供する可能性がある。
 
10 通知
 
10.1 規則B-4.2の下でバラスト水交換海域の指定を意図している当事国(複数を含む)は、その意志をバラスト水交換水域の指定に先立ち機関に通知すること。当該通知には以下を含めること:
 
.1 バラスト水交換海域を規定する正確な地理上の座標、水深制限及び/又は最も近い陸地からの距離。
 
.2 例えば航海支援のような、指定バラスト水交換海域を船舶が特定することを容易にするための関連した他の情報。
 
.3 他の交通機関による当該海域の使用、海流及び潮流、風及びうねりの状態、季節的要因(サイクロン、台風、氷結、等)を含み、船舶の航海計画の支援に関連した指定バラスト水交換海域の特徴の詳細。
 
10.2 機関は加盟国に指定バラスト水交換海域に関する情報について回章すること。
 
10.3 寄港国は指定バラスト水交換海域の場所及び使用条件に関して船舶に適切な助言を行うこと。当該助言は指定バラスト水交換海域を利用する前に、規則B-4.3を考慮して実行可能な限り、規則B-4.1の下で可能な限り多数のタンクの交換を含むことができる。
 
11 モニター及び見直し
 
11.1 指定バラスト水交換海域の使用並びに寄港国及び他の国の水生環境、人間の健康、財産又は資源に与える影響をモニターし定期的に見直すこと。
 
11.2 モニターを行う一つの理由はバラスト水交換により侵入する可能性のある当該海域での有害水生生物の発生を記録することである。有害水生生物の侵入が発見された場合、当該新規発生種が他の海域に拡散することを回避するために指定バラスト水交換海域を閉鎖する可能性がある。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION