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第11回 無線通信・捜索救助小委員会(COMSAR11)の審議概要
1 日程
平成19年2月19日〜23日(金)
 
2 開催場所
Horticultural Hall国際会議揚
 
3 日本側参加者:10名
◎:本委員会所属者の出席者 ○:英国からの出席者
○在英国日本国大使館一等書記官 小磯 康
総務省電波部衛星移動通信課 岡田智子
国土交通省海事局安全基準課専門官 大西泰史
◎海上保安庁総務部情報通信企画課長補佐 粟井次雄
東京海洋大学教授 林 尚吾
(独)海上技術安全研究所国際連携センター上席研究員 田淵一浩
(独)海上技術安全研究所主任研究員 丹羽康之
日本無線海上機器事業部長(総務省参与) 古山賢二
(株)JSAT(総務省参与) 小池貞利
○(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所長 相馬 淳
 
4 議題
(1)議題の採択
(2)他のIMO機関の決定
(3)GMDSS関連事項
(4)ITU海上無線通信関連事項
(5)衛星業務(インマルサット及びCS)
(6)1979年SAR会議及びGMDSS実施等のSAR関連事項
(7)海上無線通信のシステム及び技術開発
(8)IAMARマニュアルの見直し
(9)SART性能要件の見直し
(10)遭難信号に関するCOLREG第4付属書の改正
(11)非常時における船舶の管理
(12)MF/HF帯におけるSARのためのNBDPの代替
(13)高速船の統一運用限界のガイドライン
(14)e-Navigationの開発
(15)COMSAR-12の方針と議題
(16)2008年の議長及び副議長の選出
(17)その他の議題
 
5 審議内容
(1)SARTの性能基準の改正
 今次会合では、AIS技術を利用したAIS-SART(Search and Rescue Transmitter)をSARTの代替品として導入するノルウェー提案について、前回会合に引き続き、AIS-SARTの性能基準、導入の是非及び導入に伴うSOLAS条約附属書の改正案の検討が行われた。
 我が国からは、レーダー搭載船に比べてAIS搭載船が少ないことから、従来のSARTとAIS-SARTで発見確率に違いがある可能性があるため、両者の同等性についての疑義を表明したが、性能基準をそれぞれ別のものに分け機能の違いの明確化をすることで、AIS-SARTが条約上の同等品として扱われることとなった。今後、本年10月の第83回海上安全委員会(MSC 83)で承認され、平成20年5月のMSC 84で採択される予定。
 なお、我が国がMSC 78で提案したレーダー・トランスポンダーの偏波方式に円偏波方式を加える修正提案は前回会合で合意されており、同時に改正がなされる予定。
 
*SARTの性能基準の改正:平成16年5月のMSC 78での、SARTの性能基準に関する我が国からの改正提案(円偏波方式の導入)及びAIS-SARTの新規導入に関するノルウェー提案を受け、両提案についてCOMSAR10及びCOMSAR11で検討することとされていた。
 
(2)長距離船舶識別追跡システム(LRIT)
 昨年5月のMSC 81において採択された長距離船舶識別追跡システムを導入するSOLAS条約の改正を受け、現在、このシステムにより送信される情報を取り扱う陸上部分をどのように構築するか、についての検討が進められてきている。
 今次会合では、昨年12月のMSC 82での決定に基づき、LRITシステムの運用コスト負担の方法について検討が行われた。
 その結果、LRITシステム全体で共通で発生するコストのうち、
(1)国際データセンタ(自国/地域でデータセンタを持たない国が利用するデータセンタ。)及び国際データ交換システム(国内/地域データセンタ・国際データセンタ間の情報交換機能。)のコストについては、それぞれの締約国が要求したデータ量に応じた負担を行うこと
(2)LRITコーディネータ(国内/地域データセンタ、国際データセンタ及び国際データ交換システムの監督機関。IMSO(国際移動通信衛星機構)が実施予定。)のコストについては全てのデータセンタで按分で負担すること
 が適切である旨、MSCに報告することとなった。
 これと併せ、LRITによる一日4回の定期的通報については以下の方向性が確認された。
・国内データセンタ等を設立して自国籍船に通報させる締約国は、自国籍船に関する定期的通報データをすべて買い取る。
・自国籍船に対して国際データセンタに通報させる締約国は、それらすべてのデータを買い取る必要はなく、データの要求数に基づく経費のみを負担する。
 なお現状では、上記(1)のコスト負担について、各国がどの程度の量のデータを要求するかが分からないため、国際データセンタを用いたデータ交換の1件当たりのコストの見通しが立たないことから、各締約国に対しLRITシステムヘのデータ要求の見通しを示すよう要請することとされた。
 
*長距離船舶識別追跡システム(LRIT):船舶に搭載した機器から衛星通信システム(インマルサット等)を通じて、自船の船名・位置を定期的(1日4回)に陸上のデータセンタに通報することで船舶の動静を把握するシステム。同データを旗国・沿岸国・寄港国が入手することにより、船舶の保安の確保や捜索救助等に活用することを目的としている。現在、同システムに関する陸上のデータセンタ等の構築方法やそれらの設置・維持・通信に関するコストの取扱い等についての検討が行われている。
 
(3)e-Navigation戦略
 e-Navigation戦略検討のためのコレスポンデンスグループ(下記参照)の検討状況の報告を受け、関係国による意見交換が行われた。
 我が国からは、沿岸域と外洋では通信に利用できる施設に差異があることから、まずは通信施設が多様で陸上との連続性も検討でき、かつ、漁船やプレジャーボートも含めた潜在的利用者の多い沿岸域を対象として戦略の検討を行なうことが適当であること、また、e-Navigation戦略の検討においては航行安全の向上など戦略の実施において得られる便益を明らかにする必要があり、人への負担を軽減する人間工学的な視点も必要である旨指摘した。
 今次会合の結論としては、e-Navigation戦略の検討においては、常に技術革新に配慮すべきとしたものの、具体的な通信技術に係る検討については、航行安全小委員会(NAV)での議論による戦略の具体化を待って行なうこととなった。
 
*e-Navigation戦略:昨年5月のMSC 81における英国や我が国等7カ国の共同提案により審議が開始されたもので、最新の電子技術の活用と既存の設備等との統合による総合的な航海支援システムの構築に向けた戦略策定を目的としている。平成20年末のMSC 85までに戦略を取りまとめる予定。昨年7月のNAV 52において、同戦略検討のためのコレスポンデンスグループ(CG)が設置されている。
 
(4)その他
 北極海域への新たなNAVAREA海域の設定、インマルサット社以外の衛星通信事業者のGMDSS参入を認めるための総会決議案、IAMSARマニュアルの見直し、MF/HF帯でのNBDP搭載廃止、等について検討が行われた。
以上


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