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(3)兵庫県芦屋市における取組
〜子育て支援「あい・あいるーむ」・子ども見守り巡回パトロール〜
 芦屋市は阪神・淡路大震災後、阪神地区のベッドタウンとしてマンション等の住宅開発及び南芦屋浜のまちづくりが進展したことを主因に、1996(平成8)年度以降一貫して転入数が転出数を上回る社会増が続いている。また、同震災のあった1994(平成6)年度を除き、1989(平成元)年度以降2004(平成16)年度まで一貫して出生数が死亡数を上回る自然増も続いており、2004(平成16)年度末の住民基本台帳人口は、90,024人となっている。
 そのため、同市では、両親教育や育児相談等により、子育てに対する心理的負担や孤立感の軽減を図り、「子育ては楽しい」という意識を醸成することと、子どもの登下校時の安心・安全の確保、に注力した取組がなされている。また、これらの取組が教育委員会および市長部局との連携により行われていることも特徴的である。
 
(1)子育て支援「あい・あいるーむ」
 2003(平成15)年6月から、子育ての不安や負担感の軽減を図り、保護を要する親子の早期発見に努め、行政につないで問題解決を図ることを目的として、市の主催により行われている。
 具体的には、毎月第1〜第4水曜日の午前10時〜11時半に、市内の公共施設(教育文化センター、図書館、児童センター等)の一部屋を利用して、乳幼児を持つ親子が気楽に集える場所を提供するとともに、運営に従事する主任児童委員1名及び民生児童委員2名(当番制・無報酬)が子育てに関する相談に応じている。
 
あい・あいるーむ風景
 
(2)子ども見守り巡回パトロール
 市内3つの中学校区のうち2中学校区につき、小学校登校日の午後1時〜午後4時に職員が2人1組で公用車を使用して担当中学校区を巡回する。1中学校区はシルバー人材センターに委託しているが、1中学校区を教育委員会が担当し、もう1中学校区を市長部局が交代で担当する。巡回車両に青色回転灯とステッカーを取り付けることで、犯罪の抑止効果も期待できる他、職員にとっては巡回を通じて市内の実情を再発見できるという副次的効果も現れている。なお、子ども見守り巡回パトロールは下校時のみであるが、登校時には地域団体による見守り巡回が行われている。
 
(4)兵庫県西宮市における取組
〜西宮市立子育て総合センター(のびのびあおぞら館)〜
 西宮市は、芦屋市と同じく、阪神地区のベッドタウンとしてマンション等の住宅開発が進展したことを主因に、1996(平成8)年以降一貫して転入数が転出数を上回る社会増が続いている。また、阪神・淡路大震災のあった1995(平成7)年を除き、1989(平成元)年以降2005(平成17)年まで一貫して出生数が死亡数を上回る自然増も続いており、2005(平成17)年末の住民基本台帳人口は463,251人となっている。
 同市では、2001(平成13)年4月に、幼児教育の調査研究・研修機能、子育て支援機能、地域連携機能を併せ持つ「西宮市立子育て総合センター(のびのびあおぞら館)」(以下「センター」という)を設立し、教育委員会と市長部局が一体となって幼児教育事業と子育て支援事業を統合しながら進めている。
 
親子サロン
 
絵本の部屋
 
(1)センターの人員及び施設設備
 センターは、教育と福祉の一体施設として構想されたため、正規職員5名は教育委員会からの3名、市長部局からの2名の構成となっている。また、嘱託職員が10名、臨時職員が2名配置されており、研究・研修、子育て相談、親子サロン、学習サークル、みやっこキッズパーク(屋外活動施設)等の部門に分かれて、それぞれ専門的な立場から幼児教育・子育て支援センターとしての役割を果たしている。なお、ここではにしのみやしファミリー・サポート・センター事務局(嘱託職員3名)も設置されている。
 付属幼稚園の職員は7名である。独立した幼児教育・子育て支援施設としての性格上固有の施設設備を持ち、相談室2室、プレールーム1室、待合室1室、研修室2室、研究室1室、事務室1室、親子サロン1室、多目的室1室、授乳室1室等を備えている。
 
(2)センターの事業概要
i)調査研究・研修
 センターでは、幼児教育・子育て支援に関する研究・研修や今日的な教育課題解決のための調査研究を行い、研究成果の普及啓発に努めている。また、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・大学等の教育研究機関や保育園所・子育て支援関係機関との共同研究も実施しており、特に、付属幼稚園と連携して様々な取組を行い、その成果を全市の幼稚園・保育所等に還元できる点が特徴的である。
 また、センターでは、公私立幼稚園教員、公私立保育園所保育士、公立小学校教員を対象にカリキュラムの共通理解の深化、指導力の養成等を目的とした専門研修や、公立幼稚園の中堅〜管理職教員を対象に資質向上等を目的とした職務研修を実施している。特に、幼稚園・小学校教員、保育園所保育士を対象として、幼稚園・保育所、小学校が連携しての教育の推進に必要な実践的指導力を育むことを目的とした幼稚園・保育所・小学校教職員相互体験研修では、認可外保育所の保育士も参加可能であり、相互に授業見学を行うなど、「子どもの幸せを第一に」という共通目的に向けた、組織の垣根を越えた取組となっている。
 
ii)子育て支援
 センターでは、毎週火曜日から日曜日の9時30分から16時30分にかけて、親子でいつでも自由に遊べる「親子サロン」を開催している。「親子サロン」では絵本の読み聞かせや色々な遊び等の催しを行い、親子の居場所づくりや母親同士の交流の場を提供するとともに、乳幼児の健康相談も行っている。このような取組の結果、「親子サロン」利用者数は年々増加し、2005(平成17)年度の利用者数は、45,960人となっている。
 また、センターでは、電話・面接で乳幼児の子育てや幼児教育についての子育て相談も実施している。
 
iii)地域連携
 2004(平成16)年度以降、公民館や児童館、幼稚園等を活用し、社会福祉協議会との共催にて「地域サロン」(市内約30カ所)を開催している。子育て中の親が子どもと一緒に気軽に集い、仲間づくりを通して子育ての悩みを解決したり、互いに情報交換ができる身近な場となっている。
 主任児童委員、民生児童委員を中心にして地域住民がボランティアとして運営にあたっている他、センターでも臨時職員1人を採用して各「地域サロン」を巡回させて運営に協力している。
 また、幼稚園・保育所・小学校が連携して育ちや学びをつなぎ、就学前における「生きる力」の基礎を育てる教育を推進すべく、2002(平成14)年度から、西宮市幼稚園・保育所・小学校連携推進委員会を設置している。
 
(5)片山キッズクリニック(兵庫県神戸市)における取組
〜小児科医院、託児保育施設、病児保育施設の有機的連携〜
 片山キッズクリニックは、2004(平成16)年11月に開業した、小児科医院(片山キッズクリニック)、託児保育施設(ピピオ)、病児保育施設(プエリ)が同一建物内で有機的に連携する施設である。
 小児科医院では、健康診断・予防接種のため来院した子ども、風邪等通常の疾患で来院した子ども、おたふくかぜや水ぼうそうなどの感染性疾患の子どもそれぞれに待合室や動線を完全に分離し、相互感染を防いでいる。
 特に、感染性疾患の子どもの待合室や診察室、病児保育施設の感染性疾患の子ども用の保育室は、その部屋の気圧が周囲の区域に比べて低くなるように設定した換気(陰圧換気)を行うことで、常に新鮮な空気で部屋が満たされ、かつ、はしかや水ぼうそうなど空気感染をする病気の病原体が外に漏れ出さないようにしたシステムを導入している。
 託児保育施設(定員30人)では、月決め保育(月曜日〜金曜日の7時30分から19時)と一時保育(月曜日〜金曜日の8時から21時、土曜日の8時15分から12時45分)が行われている。託児保育施設を利用している子どもの体調に変化があった場合は、連絡を受けた保護者が迎えにいくことも、小児科医院での診察後、病児保育施設で医師・看護師が保育を行うことも可能である。
 病児保育施設(定員12人)では、月曜日〜金曜日の8時から19時、土曜日の8時から13時に、生後6ヶ月から小学3年生までの子どもを対象に病中児・病後児の保育が行われている。陰圧換気の隔離保育室を備えることで、おたふくかぜや水ぼうそうなどの感染性疾患の子どもも、病気の急性期から預かることができる。
 以上の3施設の有機的連携により、仕事を休んだり早退したりすることができない保護者や、都合により一時的に子どもの世話をすることができない保護者が安心して保育を依頼することができる環境が整備されている。
 
片山キッズクリニック内部


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