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2. MIYAGI子どもネットワークにおける取組
(1)設立の経緯
 特定非営利活動法人MIYAGI子どもネットワーク(以下「MIYAGI子どもネットワーク」という)が所在する仙台市は、早くから生涯学習を重要視し、乳幼児の母親向けに託児サービスを備えた講座を運営していたことから、託児ボランティアの養成が進み、子どもを預かるという事業に関する人材の蓄積が進んでいた。
 1994(平成6)年に文部省・厚生省・労働省・建設省(いずれも当時)が取りまとめた「今後の子育て支援のための施策の基本方向について」(いわゆる「エンゼルプラン」)の問題点を探るため、1995(平成7)年に「エンゼルプランを考える会」が結成された際に、子ども劇場会員や児童厚生員などに加え、これらの託児ボランティアもメンバーとして加わり、5年間活動を行った。
 活動を通じ、「仙台市の人口は13政令指定都市(当時)の第3位であり、支店経済のまちとして、転勤族を初めとする人口移動がとても多く、特にその中で未就学児の移動率が高いということは、子育て中の親が移動してきて仙台市に住み着く例が多い」ということがわかった。その母親達のニーズを調査したところ、他市から転入し全然知り合いのないところで、自分が体調の悪い時や用事を足したい際に子どもを一時預かりしてほしいという要望が多いことがわかり、託児の技術を何かに生かせないか、という考えが出てきた。
 このような「エンゼルプランを考える会」の活動を元に、自分達でできることから子育て支援を実践すべく、1998(平成10)年12月にMIYAGI子どもネットワークが設立された。
 
(2)託児サービス
 1998(平成10)年に開館した市民活動支援施設「仙台市市民活動サポートセンター」の中に託児室ができたことから、当初はその1室を使って週2日の託児サービスを開始した。内容は、利用手続の煩雑な保育所での一時預かりに代わって、理由を問わずに当日申込でも対応する一時預かりであった。
 それと同時に、子育て中の母親が色々な催しに参加できるよう、講演会や音楽会などの催しへ派遣託児サービスを開始した。これは「託児を行う場所だけ用意してくれれば、必要な用具等はMIYAGI子どもネットワークで持参し、託児サービスを行う」というものである。この取組を通じて、企業や行政に託児についての理解が広がってきている。
 その後、仙台市市民活動サポートセンター託児室の利用率が上がってくると、市側から、託児は市民活動なのか、という問題が指摘された。話し合いの結果、子育て支援は市民活動であると認めてもらい、託児サービスを継続できたが、公的施設を定期的・継続的に使用することは難しく、場所を求める必要に迫られてきた。
 そこで、当時宅老所に助成金を交付していた市に要請したところ、託児ボランティア団体事業助成という助成制度が創設され、託児室確保に要する家賃補助も行われるようになった。現在では7団体が助成を受けて託児サービスを行っている。
 MIYAGI子どもネットワークでは現在、
・「子育てサポート仙台0123太白」(託児ボランティア団体助成事業)
 火曜日〜土曜日の10時から15時
 2005(平成17)年度実績:年間210日・利用人数121人
・「子育てサポート仙台0123泉」(商業施設内)
 木曜日・金曜日の10時から16時
 2005(平成17)年度実績:年間94日・利用人数681人
にて託児サービスを実施している。「子育てサポート仙台0123泉」では、当初利用料として1時間600円としていたところ、なかなか利用が進まなかったが、入居する商業施設と合意して、その商業施設が発行するカードのポイントで利用料を支払えるようにしたところ、利用人数が増加した。
 助成は概ね3年程度で終了するが、現在も助成なしで商業施設との連携によりサービスを継続している。今後このような企業との連携がサービス継続に際し、大きなポイントになっていくものと思われる。
 
(3)チャイルドライン in MIYAGI
 MIYAGI子どもネットワーク設立直後に、児童虐待の問題が仙台市でも大きく取上げられるようになり、小児科医や弁護士で「子ども虐待防止ネットワーク・みやぎ」が設立された。その後、MIYAGI子どもネットワークを母体として、子どもからの電話による相談を受け付ける「チャイルドラインin MIYAGI」が設立され、2002(平成14)年3月から電話受付を関始した。2006(平成18)年には特定非営利活動法人「チャイルドラインみやぎ」として法人格を取得し、現在は週5日・1日3時間フリーダイヤルにより子どもからの電話相談を受け付けている。
 
(4)指定管理者としての児童館運営
 2005(平成17)年の指定管理者制度の導入により、新設の児童館から指定管理者による運営が可能となったことから、MIYAGI子どもネットワークでは同年4月から指定管理者として、仙台市名坂児童館・小松島児童館・鹿野児童館の運営を行っている。2007(平成19)年より更に幸町南児童館が加わる。
 「エンゼルプランを考える会」での活動の時期から1小学校区1児童館を目指す仙台市の方針を受けて、小学生対象の施設と思われている児童館を子育て支援の拠点ともすることを提案してきたが、自ら児童館運営をすることで実践できている。
 
(5)仙台市内の子育て団体の連携から生まれた特定非営利活動法人せんだいファミリー・サポート・ネットワーク、仙台市子育てふれあいプラザ「のびすく仙台」
<施設概要>
 のびすく仙台は仙台市で子育て支援を行ってきた市民が提案し、ひろばがあって、そこで子どもを預かってくれて、お昼に食事もできて、そこに人がいて、相談にものってくれて、情報がたくさんあるという、子育て中の母親の欲しいというものを形にしたものである。仙台市が民間に委託提案をさせ、競争の結果、現在の指定管理者が受託、その後指定管理者制度の導入で仙台市第1号の指定管理施設となった。
 現在年間5万人以上、1日平均で182人もの利用者があるため、仙台市では更に2箇所、同様の施設を設けることを計画している。
 
・設置目的:親子が気軽に立ち寄り交流できる場や子育て支援に関する様々な情報を提供し、保護者の子育てに対する不安や負担の軽減を図るとともに、子育ての楽しさを実感する機会を提供する。また、仙台市の子ども家庭支援ネットワークの中核施設として、地域の子育て支援施設、機関及び関係者との連携と事業支援を図る。
・延床面積:451.384m2
事務スペース、ふれあいひろば、あかちゃんひろば、こどもひろば、授乳室、情報コーナー、託児室
・設置主体及び運営:設置主体は仙台市。運営は指定管理者である特定非営利活動法人せんだいファミリー・サポート・ネットワーク。特定非営利活動法人せんだいファミリー・サポート・ネットワークは、2003(平成15)年にMIYAGI子どもネットワークやお父さん委員会、AMC等の諸団体連携により設立。
・開館時間等:月曜日、祝日の翌日、年末年始を除く日の9時30分〜17時
・職員数:館長1・常勤5・非常勤3の計9名
 
<事業内容>
・ひろば事業(相談事業も含む):親子同士で遊び、交流する場。おもちゃや絵本などがあり、飲食もできる。(無料)スタッフが常駐し、話をしたり相談に応じたりする。
・情報収集・提供事業:公的な情報だけでなく、市民グループの活動も含めた広範囲な子育て支援情報を提供するため、情報チラシや情報誌を置くほか検索用のパソコンも配置する。また、プラザのホームページを運営し、最新情報の提供に努める。併せて、情報誌を月1回発行する。
・一時預かり事業:外出など理由にかかわりなく、一時的に生後6ヶ月から小学校就学前の子どもを預かる。
・地域支援ネットワーク事業:子育て支援の中核施設として、地域の子ども関連施設及び市民グループのネットワークを構築する。また、ボランティアの育成支援も行う。


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