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III. NPO・民間企業における取組
1. 保育サービス ひまわりママにおける取組
 特定非営利活動法人 保育サービス ひまわりママ(以下、「ひまわりママ」という)が所在する東京都武蔵野市は、杉並区に隣接するベッドタウンであり、商業的に大きな駅が3つ(吉祥寺駅、三鷹駅、武蔵境駅)あるとともに、自然や文化に恵まれたまちである。市域は東西6.4キロ、南北3.1キロ、面積10.73平方キロメートルの平坦地であり、自転車で30分もあれば、市内全域に行くことが可能である。
 2007(平成19)年2月1日現在の人口は約13万4千人、世帯数は約7万世帯となっているが、1世帯あたり出生数は0.77人と低い。その理由としては、戦後、農地が宅地に転用された際から当市に居住する市民の高齢化や、地価の高さ及び宅地を細分化して売却することを制限する条例の影響等により、若い世代が移り住みづらいことが考えられる。一方、大企業の社宅に住む転勤族の子育て世代が多いことも特徴である。
 ひまわりママは、就労女性の子育て支援を目的とする保育サービス講習会(女性労働協会が仕事と育児の両立支援の一環として1993(平成5)年度より実施)の修了生23人を中心に、1996(平成8)年7月に任意団体として発足し、以下の6項目を活動方針として、子育て支援活動を開始した。当初はボランティアによる運営であったが、1999(平成11)年10月に特定非営利活動法人として法人格を取得し、市から事務所や補助金の提供を受けるようになってからは、事務局は有償の職員、研修部門・企画部門はボランティアという運営に徐々に移行し、現在に至っている。
<活動方針>
1. 子育て中のあらゆる親をサポートする。
2. 子どもにとって最善の保育方法をとる。
3. お互いの顔が見える子育てを目指す。
4. ボランティアの気持ちで相互援助活動を心がける。
5. 地域の子育て環境や自然を十分活用し、育児を楽しむことのできる町づくりに貢献する。
6. 未来を担っていく子ども達を育てる大切さと、子育ての楽しさを伝えていく。
 
 ひまわりママの事業は、(1)保育事業、(2)ひろば事業、(3)「こどもテンミリオンハウスあおば」の運営、等となっている。
 
(1)保育事業
 ひまわりママは、相互会員制という独自の形をとっている。利用会員(子育てを支援してほしい人)及び協力会員(子育てを支援する人)双方が5,000円の入会金と3,600円の年会費を支払い、協力会員が提供する保育サービスに対し、利用会員が利用料を支払う。利用料の1割は事務局のスタッフ経費や通信費等の運営費に充てられている。利用会員は10年間で1,680世帯が登録し、近年は毎年500世帯が登録している。
 利用会員向け保育事業の内容としては、0歳児から小学6年生までを対象に、利用会員宅での保育、保育園・幼稚園・学童・お稽古教室などへの送迎、お出かけの同行、外遊び(市の施設等の利用も可)、協力会員宅での保育、病児の快復時の見守り、ひまわりルーム(子育てひろば)での保育、講座や集会時の集団保育及び保育者の依頼、産褥期の際の赤ちゃんのお世話・沐浴・簡単な家事、がある。毎日100人の協力会員が1時間から12時間程の保育を行っている。
 利用会員宅での保育は、「子どもにとって最善の保育方法をとる」という活動方針に基づき、子どものホームグラウンドである利用会員宅まで協力会員が出向いて、1時間(900円)から保育を行っている。協力会員が利用会員宅に入るため、盗難等が懸念されるが、地域の者が地域の者をケアするということから、そのような事故は一度も起こっていない。
 保育事業の利用時間帯は、10時から12時前後の産後支援、集団保育等が約30%、17時から19時前後の送迎が約30%と多くなっている。
 なお、ひまわりママでは、非会員(ビジター)向けの個人保育、集団保育、一時保育も行っているが、利用料は会員向けより高く設定されている。
 
(2)ひろば事業
 ひまわりママでは、子育て中の親子が気軽に立ち寄れる場として、毎週水曜日の10時から15時を「オープンルーム」として無料開放している。
 また、0歳児・1歳児・2歳児の親子がネットワークをつくるのが難しいと思われることから、1回500円等で「よちよちクラブ(O歳児対象)」、「ぴよぴよクラブ(1歳児対象)」、「ぞうさんクラブ(2歳児対象)」という親子クラブを立ち上げ、リトミック、製作等をしながら親子のネットワークの形成や育児相談等のサポートを行っている。
 子育て中の親子が昼食場所に困っていたので無料開放したところ、参加者が大幅に伸びている。
 
(3)「こどもテンミリオンハウスあおば」の運営
 テンミリオンハウス事業は、市民の身近にあって(近)、小さな規模で(小)、軽快なフットワーク(軽)で、地域事情に即した共助の取組を行う市民団体等に対し、年間1,000万円(テンミリオン)を上限に補助を行う、武蔵野市の事業である。
 「こどもテンミリオンハウスあおば」は、緊急時の対応を主な目的とし、1軒の家を使い、おばあちゃんの家のように、ゆっくりと過ごしたり話したりくつろげる場として、2001(平成13)年11月にオープンした。
 子育て中の親子にのんびりくつろいだり、友だちをつくったりできる場を提供する広場事業である「あひる事業」、一時保育を行う「ひまわり事業」、子育て中、妊娠中の母親向けの育児相談を行う「はあと事業」を実施している。
 各事業の利用者は利用料を支払うが、施設費や光熱費、基本的な人件費等は市からの補助金で賄われている。
 
(4)その他の事業
・産後支援ヘルパー事業(武蔵野市委託事業)
 産後の体調不良のため家事や育児が困難な母親を対象にして、母親や乳児の身の回りの世話や家事援助などを行う。2003(平成15)年6月から独立行政法人福祉医療機構の助成を受けて開始した「新米ママスリーマンスサポート事業」での実績が認められて、武蔵野市より委託を受けた。
・ひとり親家庭ホームヘルプサービス(武蔵野市委託事業)
 武蔵野市に利用登録をしているひとり親家庭の家事支援を行う。
・保育サービス講習会(武蔵野市委託事業)
 地域で子育て支援活動を行うきっかけづくりとして、子育て支援に関心がある高校生以上の方を対象に講習会を開催。
・〜子育て支援〜「パパ友をつくろう!!」事業
(独立行政法人福祉医療機構助成事業)
 生後7ヶ月から3歳6ヶ月までの乳幼児とその父親を対象に、親子遊びと父親同士のフリートークの場を提供。
 
(5)今後の課題
・テンミリオンハウスや委託事業は、毎年市に申請書を提出して審査を受け、その結果委託を受けるというプロセスとなっているため、委託が受けられなくなった場合の事業の継続。
・早朝・夜間等の保育園の送迎依頼が多いが、依頼に対応する協力会員は、パート等の日中まとまった仕事を持っている人たちであり、103万円の扶養控除の壁により担い手が少ない。また、日中良く活動できる人たちも、まとまった時間が持てるようになると、社会保障が完備していたり、高給な仕事、まとまった仕事へと移ってしまう。更に、保育園の送迎の際に、協力会員が保育園からスカウトされてしまい、より高給である保育園に引き抜かれてしまう。
 以上のような理由から、保育事業の担い手である協力会員が不足していること。
・病児保育への対応のため、小児科医とのネットワーク構築を行いたいが、小児科医は繁忙であるため、対応は困難である様子である。協力会員が保育サービスを提供している子どもを小児科医に連れて行き受診させることは法律及び会則で禁止されているので、急変に備えた電話等による対応など、小児科医とのネットワーク構築がないと、協力会員の負担が大きく、担い手を得づらいこと。
・飽くまでも家族を主とし伴走する支援であることを利用会員・協力会員共に自覚して、保育の質を高く持ち続けること。


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