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(6)仙台市・宮城県の子どもの状況と子育て支援の今後に関する提案
 仙台市は都市の規模に比して、まだ保育所が不足している。児童館の児童クラブも多数の申込者を足切りしなければならない状況にある。色々な社会不安がある中で、母親達から子どもの居場所づくりの更なる充実を望む声が強いものの、行政だけで対応することは困難であると思われる。従って、民間との連携や、企業独自の取組が今後ますます必要になってくるものと思われる。
 また、チャイルドラインや児童館の運営を通じて、児童虐待の問題や母子家庭の問題等によりサポートすべき家庭が増加していること、また、虐待を受けた子どもや母子家庭の子どもたちが若年で子どもを生んでしまうという現実もあることがわかった。少子化社会の中では子どもが増えることは良いことかもしれないが、家庭の子育て能力を高めるための対応が必要と思われる。
 更に、適正な性教育の実施や、雇用の安定、あっても使えない補助金(色々な補助金・助成金等はあっても、企業による利用につながらない)の見直しが必要と思われる。
 
<民間活動を通して見る、子育て期・子育て前の親の不安>
1. 子育ての孤立
2. 相談先がない
3. 友だちをつくりたいが出会いの場がない
4. お産が心配(産科・小児科の減少)
5. 子どもの安全の確保
6. 雇用が不安定で産み育てる自信がない
 
<少子化対応に有効と考えられる施策>
1. 女性の社会進出に伴う保育制度の充実
(1)社会資源の活用
A. 人材の活用
すくすくサポート事業支援会員、21世紀職業財団保育サポーター、緊急サポートネットワーク事業(注)
託児ボランティア、エル・パーク託児スタッフ、その他NPO団体
B. 公共施設、民間の活用
保育所、空き店舗、事業所内保育所、その他
(2)地域の相互扶助を助長する制度、助成など
改築のための助成、保険制度、子育て支援ボランティア団体助成(家賃補助・従事者交通費等補助)
(3)規制緩和とそれに伴う研修制度、許認可制度、相談事業
(4)コーディネーターの養成と実働への努力
 
2. 育児不安解消のための支援
(1)情報提供
(2)相談事業
(3)仲間作り支援
(4)子育て支援ネットワークの構築
保育所・児童館・保健センター・児童相談所・医師・助産師・栄養士・民生委員・児童委員・NPO・ボランティア団体など
(5)公共施設、民間を活用してのサロン活動
保育所、空き店舗、事業所内保育所、その他
(6)一時預かりの増設
改築のための助成、保険制度
子育て支援ボランティア団体助成(家賃補助・従事者交通費等補助)
団体への研修・コーディネート補助
 
3. 児童虐待防止・対応と、ケアシステムの開発・場所の確保
(1)育児不安解消のための支援
(2)子どもの権利についての理解促進
(3)男女共同参画・人権問題への理解促進
(4)児童虐待対応にかかわる職員の増員
(5)一時保護所の拡充
(6)親と子に対するケアシステムの関発と実行する場、人材の確保
(7)子育て支援・子ども救出のためのネットワークの構築
(8)子どもシェルターの設置
 
4. 児童クラブ・学童保育の充実
(1)1小学校区1児童クラブの見直し
(2)障害児学童保育の推進
(3)公共施設・民間施設の活用、家賃補助などによる、場の確保
(4)人材育成と指導員の待遇改善(*高校卒業者の採用〜研修〜資格取得サポートなど)
 
5. 子どもの体験の場、安全な居場所の確保と子どもの育ちを支える大人の人材育成
(1)一時預かりの場=託児スタッフ
(2)児童館=児童厚生員
(3)野外活動=プレーリーダーなど
 
6. 適正な性教育の実施(出来るだけ早く、正確な知識を)
(1)家庭への指導
(2)学校での指導
(3)相談窓口の開設(*ピアサポーターなど)
(4)エイズ、性感染症への理解促進
 
7. 雇用の安定
(1)ワークシェアリング
(2)入札時・指定管理者採用時のポジティブアクションプランの義務化
(3)企業への啓蒙
(4)「あっても使えない」補助金などの見直し
(5)ひとり親家庭への支援
 
(注)
 緊急サポートネットワーク事業とは、公募・選定の結果国から委託を受けたNPO等の団体が、緊急サポートスタッフとして登録された看護師、保育士、介護福祉士等の有資格者や深夜宿泊等の緊急対応可能な者と利用者とのマッチングを行い、病気、あるいは病気回復期にあり集団保育になじまない子どもの預かりや、急な出張等の際の宿泊を含む子どもの預かり等の緊急サポートを行うものである。
 特定非営利活動法人せんだいファミリー・サポート・ネットワークが応募し、2006(平成18)年度から委託を受けて事業を実施している。
 現在、事業所内保育施設を運営するよりは経費が少なく済むこと、自社でこのような緊急サポート体制を取ることが困難であることから、緊急サポートネットワーク事業に注目する企業が増えており、中には利用料の半額補助を打ち出して、従業員にネットワークヘの登録を勧めている企業もある。特定非営利活動法人せんだいファミリー・サポート・ネットワークでは、利用増加を推進する一方、子どもが病気の時には従業員を休ませることができるような体制づくりも企業に働きかけるなど、子育て支援の理解促進にも努めている。
 緊急サポートネットワーク事業については、毎年公募・選定が行われるため、利用実績の急速な拡大のプレッシャーにさらされる。毎日病気の子どもが多数いるわけではないこと、利用者である仕事をしながら子育てをしている親は既に二重三重の保険をかけて自分の子どもを預ける体制を取っていることが多く、爆発的には利用者が増加していくものではないことに対する行政の理解が必要と思われる。
 「のびすく仙台」と同様の施設を更に2箇所整備すると言っても、完成は2年先と時間がかかることから、行政がすぐ実現できること、実現に中期を要するもの等で分類して、それぞれの時間軸に応じた対応を検討することが必要と思われる。


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