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3.4 地方財政再建支援制度
 イタリアには、地方自治体が財政難に陥った場合に備えて、国による財政再建支援制度が整備されている(地方自治統一法典第242条等)。これは、地方自治体が財政難に陥った場合、財政破綻宣言を行うことを定めるもので、破綻宣言を受けて、直接、連邦政府の監督下に服され、新政権が以後の運営にあたる。
 新政権は、破綻宣言した地方自治体の下記の3つの義務を実行する。
(1)あらゆる地方税を法定内で最大税率に引き上げる
(2)人員を必要最低限度まで削減する
(3)地方自治体が提供するサービスは法定内の最低限のサービスのみとする。
 この他にも、新たな借入金について制限を受けることとなっている。
 1980年代から1990年代にかけて、財政力の乏しい南部地域を中心に複数のコムーネが財政難に陥り、当時の財政再建支援制度に基づいて財政再建がなされている。1989年以降、現在までに破綻宣言したコムーネは415(全コムーネの5.1%)あり、うち約半数は南イタリアのカラブリア州とカンパーニャ州に集中している。
 従来の制度では、財政難に陥った地方自治体に対し、国が借入金で支援していたが、2003年以降、法改正が行われ、地方自治体が独自で借入を行わなければならなくなった。
 地方自治体が財政難に陥った場合、内務省の監督により運営される特別委員会が設置される。特別委員会は、破綻宣言した地方自治体のバランスシートをもとに資産査定業務にあたる。資産査定に際し、特別委員会は未収税の徴収、処分可能な資産の売却等の決定権を有し、それを行うこととなっている。
 
3.5 地方税制
 EUの経済・市場統合、ユーロ第一陣参加のため、財政赤字を対GDP比3%以内に抑えるという国家財政再建の要請を受け、租税制度改革が始まった。
 分権化を柱とする90年の地方行政改革を契機に、税制も分権化が進められた。89年にコムーネ事業・工芸・専門職税(ICIAP, Imposta Comunale per l'esercizio di Imprese e di Arti e Professioni)が導入されて以来、コムーネのレヴェルではさまざまの改革が行われたが、93年に導入された市不動産税(ICI)が、財政構造を革命的に変えた。税収は増加、最も重要な財源として定着しつつある。98年に導入された州生産活動税(IRAP, Imposta Regionale sulle Attivita Produttive)は、外形標準課税の地方法人課税であり、第一に、州を課税団体とする税目の創設による財政の連邦化(分権化)の促進という意味を持つ。第二に、これまでの複雑多岐にわたる税を統廃合し合理化する必要に迫られたものであった。ICIAPをはじめ、事業者、従業員、その他生産活動税の納税義務者によって支払われる全国健康保健基金の分担金、事業者が納税義務を負っている年金生活者への健康保健補助、地方所得税(ILOR, Imposta Locale sui Redditi)、純資産税、付加価値税記帳番号(partita IVA)登録料、コムーネにおける許認可料などが廃止され、IRAPに統合された。創設の第三の意義は、全国健康保健基金、および州ごとに徴収されるにもかかわらず中央主権的に運営されていた健康保健分担金によって営まれていた医療保健行政の改革、分権化である。このため、医療保健行政の実際の単位である州の自主財源の強化が要請される。第四の背景は、家族経営の中小、零細企業の多いイタリアにおいて、借入金に依存する従来の経営形態を変え、自己資本率を高める必要性であった。これは、二重水準の事業所得税(Dual Inccme Tax, DIT)の導入によって補完される。ただし、DITは、2004年に法人所得税IRPEG(Imposta sul Reddito delle Persone Giuridiche)がIRES(Imposta sul Reddito delle Società)に再編された際に廃止されている。州税の整備による州への財政の分権化には、国家の財政赤字を地方に肩代わりさせた、という批判もあるが、租税制度、財政構造の分権化には大きく貢献したと言えよう。
 ヨーロッパ統合の影響を強く受けて変化している欧州諸国において、財政の健全化や税制の統合などの共通のアジェンダのもと、その行政システムが地方分権化の方向にあるのはもちろん、財政もまた同じ道を歩んでいることである。EU統合がもたらした政治的、経済的、社会的な統合のベクトルは、国家の重要性を相対的に低くしたが、同時に自治体間競争を喚起した。このような変化の中で、財政構造そのものの地方分権化、評価および課税、徴税の工夫は、きわめて重要な課題である。
 地方分権化が今後、ますます重要となる中で、権限の委譲や政治的な地方分権化を実質化し、その変化を担保するのは、財政の保障である。
 
3.5.1 州税
 州税は、州生産活動税(IRAP, Imposta Regionale sulle Attività Produttive)、州個人所得税付加税(Addizionale regionale all'IRPEF)、州自動車税(Tasse au tomobilistiche regionali)、州許認可税(Tasse sulle concessioni regionali)、メタンガス国家消費税に対する州付加税(Addizionale regionale all’imposta di consumo sul gas metano)、固形廃棄物処理料(Tributo speciale per il deposito in discarica dei rifiuti sollidi)、自動車登録税に対する州付加税(Addizionale regionale imposta sulla trascrizione al Pubblico Registro Automobilistico)、国家許認可に対する州税(Imposta regionale sulle concessioni statali)、州有地その他の州資産の占有料(Tassa per l'occupazione di spazi ed aree pubbliche)などであるが、州の行政事務手続料、委任事務手続料なども自主財源となる。
 1998年の州生産活動税(IRAP, Imposta Regionale sulle Attività Produttive)の導入は、ICIAPの廃止とともに実現したものであるが、この廃止分は州からの補填によって賄われる。これに先立って既に97年、県とコムーネに対する補助金は、国家からの交付金が減少(前年比マイナス9.6%)する一方、州からのそれは増加(前年比プラス10.8%)している。
 IRAPは、外形標準課税の地方法人課税であり、第一に、州を課税団体とする税目の創設による財政の連邦化(分権化)の促進という意味を持つと同時に、これまでの複雑多岐にわたる税を統廃合し合理化する必要に迫られたものであった。ICIAPをはじめ、事業者、従業員、その他生産活動税の納税義務者によって支払われる全国保健基金の分担金、事業者が納税義務を負っている年金生活者への保健補助、地方所得税(ILOR, Imposta Locale sui Redditi)、純資産税、付加価値税記帳番号(partita IVA)登録料、コムーネにおける許認可料などが廃止され、IRAPに統合された。IRAPの創設の第三の意義は、全国保健基金、および州ごとに徴収されるにもかかわらず中央主権的に運営されていた保健分担金によって営まれていた医療保健行政の改革、分権化である。このため、保健医療行政の実際の単位である州の自主財源の強化が要請される。第四の背景は、家族経営の中小、零細企業の多いイタリアにおいて、借入金に依存する従来の経営形態を変え、自己資本率を高める必要性であった。これは、重水準の事業所得税(DIT, Dual Income Tax)の導入によって補完された。ただし、DITは、2004年に法人所得税IRPEG(Imposta sl Reddito delle Persone Giuridiche)がIRES(Imposta sul Reddito delle Società)に再編された際に廃止されている。
 99年第113号法により、国からの財源移転が一部廃止され、替わって2000年より個人所得税の州付加税の税率が増加された。また、付加価値税(IVA)の一部を州が得ることが認められた。また、EUからの移転収入としては、構造基金があり、カンパーニア、プーリア、カラブリア、シチリア、サルデーニャ、モリーゼの7州が、「後進地域の開発と構造調整の促進」のための補助対象となっている。
 特別州の財政は、一種の地方交付税に依存している。当該州の領域において国税として徴収された税の一部の一定比率が州の財源となる。この制度によって最大の恩恵を受けているシチリアでは、州における主要な国税の税収の全額が州の収入となっている。
 歳出において重い比重を持つのは、社会福祉、経済(農業・畜産)である。
 
3.5.2 県税
 県の財政規模は、州、市と比べて著しく小さく、活動が限定されることは明らかであろう。1990年6月8日の142号法に続き、1995年2月25日の77号暫定措置令、1996年662号法など、近年の改革によって自主財源の拡大が保障されるなど、財政運営における自治の幅は若干、拡がってきている。主な税収は、県自動車登録税(IPT, Imposta Provinciale di Trascrizione)、県自動車保険税(imposta sulle assicurazioni contro la responsabilità civile)、環境保護および環境衛生行政のための県税(tributo per l'esercizio delle funzioni di tutela, protezione ed igiene dell'ambiente)、県有地の占有料および地下通路建設に関わる料金(tassa per l'occupazione di spazi ed aree pubbliche ed eventuali contributi per la construzione di gallerie nel sottosuole)、個人所得税付加税(addizionale provinciale all'IRPEF)などである。県の財政においては移転収入も大きな役割を果たしている。
 歳出において大きなウェイトを占めているのは、教育・文化・科学研究、運輸・通信、などの行政分野である。


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