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3.2 州および地方自治体への財源移転
 憲法第119条において、国が、特定のコムーネ、県、大都市および州に、経済発展および社会の融合・統合のため、経済的・社会的不均衡を取り除く等のために交付金を交付することが認められている。
 また、地方自治統一法典第149条において、国移転交付金(trasferimenti erariali)は、人口、免責、社会経済状況を考慮した基準等に基づき配分されるとされている。さらに国は、例外的状況に対処するために特別交付金(contributi specifici)を付与することができる。
 
3.2.1 国から州への財源移転
 1999年法律第113号により、国からの財源移転の一部が廃止され、一方で個人所得税の州付加税税率が増加され、また付加価値税の一部を州の収入とすることが認められている。
 
3.2.2 国から県・コムーネへの財源移転
 県およびコムーネに国から普通交付金(contributo ordinario)および統合交付金(contributo consolidato)が与えられる。これらは県およびコムーネの固有の事務および委任事務の財源とするためのものとなっている。その他、経常部門移転収入として地方財政平衡化交付金(contributo perequativo fiscalita locale)、個人所得税配付金(compartecipazione IRPEF)等が、資本部門移転収入として開発投資交付金(contributo per sviluppo investimenti)等がある。
 
3.2.3 州から県・コムーネへの財源移転
 州は、州経済計画および投資計画の実現のために、州から地方団体に移譲もしくは委任された事務の実施に必要な財源を保障するため、地方団体の財政を支援する(地方自治統一法典第149条)。国の関連法によって規定された投資的支出のために県・コムーネに属するべき収入は、州計画に基づいて配分される。地方団体が州から付与された権能を行使するにあたって必要な事務経費については、州が州計画に基づいて財源を決定することが定められている(地方自治統一法典第149条)。
 
3.2.4 欧州連合から州への財源移転
 欧州連合地域内での地域間格差是正のための構造基金(Structural Funds)からの補助金が欧州連合から州に交付される。構造基金には、生産投資の奨励や地域開発を容易にする社会資本整備による地域間不均衡是正を目的とする欧州地域開発基金(European Regional Development Fund: ERDF)の他、欧州農業指導保障基金、欧州社会基金、漁業指導基金の4基金がある。
 構造基金は(1)「後進地域の開発と構造調整の促進」(構造基金総額の約7割)、(2)「構造的困難に直面する地域の経済的・社会的転換への支援」(欧州地域開発基金、欧州社会基金の対象)、(3)「教育、訓練および雇用の改善・近代化への支援」(欧州社会基金の対象)、の3つが優先目的分野とされており、これらに対して構造基金総額の約94%が費やされている。
 「後進地域の開発と構造調整」の場合、一人当たりGDPが域内平均の75%未満の地域等が受給対象とされており、イタリアにおいては、カンパーニア、プーリア、バジリカータ、カラブリア、シチリア、サルデーニャ、モリーゼの南イタリア・地中海地域の7州が補助の対象となっている。
 
3.3 地方債(buono ordinario: B.O.)
 一般に、国や地方自治体において歳出が歳入を上回る場合、借入もしくは地方債の発行によってその不足分を補うこととなる。県・コムーネならびに州における借入と地方債発行に関する法律は以下の通りとなっている。
 なお、借入もしくは地方債の元利償還金総額(年間)は、税収入の総額の25%を超えることはできないとされている(1977年法律第62号、1978年法律第43号8、1982年法律第181号)。
 県・コムーネは、個別法の定めによる場合もしくは資本支出に用いる場合に限り、借入を行うことができる(地方自治統一法典第202条)。手段については、銀行借入、地方債発行等が大統領令で挙げられている(1996年大統領令第194号)。県・コムーネは、預託貸付公庫(cassa depositi e prestiti)、銀行、欧州投資銀行等の金融機関の貸付を利用することができる(地方自治統一法典第204条第2項)。
 地方自治体は、法の許す範囲内で地方債を発行することができるとされており(地方自治統一法典第205条)、地方債の発行に関しては1994年法律第724号に従い、資本支出に充てる場合にのみ地方債を発行できることとなっている。
 地方債の発行は、財政難あるいは構造的な赤字にない州や地方自治体、もしくは財政難であっても一定の条件を備えている州や地方自治体のみが行うことができる。地方債を発行する場合、国の許可制ではないが、第三者(銀行等)の収支の認定が必要となっている。
 州は、一定の場合に金融機関等と貸借契約をし、債券(obbligazione)を発行することができる(1970年法律第10号第28条)。州の債券発行に関する原則も、県・コムーネと同様、1994年法律第724号に従い、原則として資本支出に充てる場合にのみ発行できることとなっている。
 また、1993年暫定緊急措置令第8号第20条に基づく貸付金を用いて、赤字解消のための再建計画を進めている州は、債券を発行することはできない。
 
8 Angela Fraschini(2002)


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