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地方分権時代にふさわしい地方税制のあり方に関する調査研究報告書?諸外国の地方税制との比較を中心に?

 事業名 地方自治情報啓発研究
 団体名 自治総合センター 注目度注目度5


はしがき
 平成19年(度)から「三位一体の改革」における国から地方への3兆円の税源移譲がいよいよ実施される。また、地方団体がより自主的・自立的な行財政運営が行えるよう、政府では引き続き、国と地方の役割分担の見直しや道州制導入の検討など地方分権改革が進められているが、なかでも地方税財源の充実確保は地方分権を支える重要な課題である。
 このように、わが国の地方税財政制度が大きな変革期を迎える中で、本研究会では、昨年度に引き続き諸外国の地方税財政制度について調査研究を行い、最新の各国の地方税財政制度を巡る状況の把握に努めてきた。
 主なテーマとして、徴収の効率化、納税者の利便性及び徴収率向上に向けた取り組み等について日本や諸外国の事例を積極的に研究した。また、諸外国における税制改革の動向や課税白主権の現状等について調査・研究をすすめた。
 本報告書は、その成果をまとめたものであり、わが国が目指すべき地方税財政制度について考える上での一助となれば幸いである。
 最後に、今回の調査研究にあたり、御多忙のところ御協力いただいた在外公館、地方団体関係者をはじめとする関係各位に対して、心から感謝申し上げる。
 なお、本調査研究は、競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて実施したものであり、同財団に対し深く謝意を表する次第である。
 
平成19年3月
 
地方分権時代にふさわしい地方税制
のあり方に関する研究会
委員長 林  健久
 
財団法人自治総合センター
理事長 二橋正弘
 
地方分権時代にふさわしい地方税制のあり方に関する研究会 委員
〜諸外国の地方税制との比較を中心に〜
 
委員長  林  健久  東京大学名誉教授
委 員  青木 宗明  神奈川大学経営学部教授
飯野 靖四  慶應義塾大学経済学部教授
池上 岳彦  立教大学経済学部教授
工藤 裕子  中央大学法学部教授
半谷 俊彦  和光大学経済経営学部助教授
前田 高志  名古屋市立大学大学院経済学研究科教授
※ 川村 栄一  前東京都主税局税制部長
松田 曉史  東京都主税局税制部長
辻  弘昭  前横浜市財政局主税部長
※ 山中 昭栄  前自治総合センター参与
※ 小室 裕一  前総務省自治税務局長
河野  栄  総務省自治税務局長
岡崎 浩巳  総務省税務担当審議官
※ 株丹 達也  前総務省自治税務局企画課長
滝本 純生  総務省自治税務局企画課長
※は、旧委員
 
I 地方税における現状と課題等
1 地方税の徴収対策の現状と課題
1 徴収対策の意義
 平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への3兆円の税源移譲が決まった。この税制改正はいよいよ本年から適用されることとなり、これまでは国庫補助負担金として国から地方へと交付されてきた財源を、地方団体が自ら住民と向き合って徴収することとなる。
 地方分権、特に地方団体が財政的に自立していくうえで、使途が自由な自主財源を確保することは極めて重要である。この権限の拡大は、同時に地方団体の義務や責任が拡大することを意味する。国庫補助負担金の場合、地方団体にとって徴収に係る事務負担はなく、国が徴収した税収等を財源に、国が交付決定した金額を地方団体は得る。今回の税源移譲は、こうした国庫補助負担金の財源であった国税を減らし、地方税を増やすという形で実現する。これはつまり、国税(所得税)が課され、国が徴収していた税収から、地方団体の課税権に基づき課税され、地方団体が徴収する税収に振り替わることであって、課税・徴収にかかる責任も移譲されることとなる。
 景気回復によって、地方税収も堅調な伸びを示しつつあるが、固定資産税のように景気感応性の低い財産課税の税目も多い地方税においては、今後とも国税並みの税収の伸びを期待することは難しい。一方、地方の抱える累積債務も200兆円も超え、対GDP比でみるとOECD諸国の約6倍もの水準にあるほか、今後、国と同様に、少子化対策をはじめ増大する社会保障関係経費への対応も迫られる。
 こうしたことから、地方団体の歳入確保だけでなく、厳正・公平な税務執行に対する納税者の信頼確保という観点からも、地方税の徴収対策を一層推進し、地方税の滞納や脱税を防止する必要がさらに高まっている。
 総務省自治税務局では、地方税の収納・徴収対策等に関する現状を把握するため、「地方税の収納・徴収対策等に係る調査」(平成18年8月28日付総税企第184号)を実施している。本報告書では、まず、この調査結果や過去の通知等を踏まえ、地方税の徴収対策の現状と課題について述べる。
 
2 歳入確保の観点からの徴収対策
 地方税の徴収対策を目的別に分ける場合、「歳入確保」の要素と「効率化」の要素に分類することができる。この2つの要素はいずれもバランスを持って、同時に達成されなければ意味がない。
 まず、歳入確保の観点、すなわち「より多くの税を調定し、実際により多くの税を収納する」ためには、企業立地の促進など税源を涵養するところから始まるが、これは税制そのものの役割ではない。
 次いで、より多くの税を調定するためには、賦課課税を中心とする地方税においては、課税対象の調査をしっかり行い、課税漏れがないように努めることが重要である。申告等が適正になされているかどうか、地方団体においては必要な調査を実施するなど課税漏れが発生しないよう、努力が強く求められている。
 調定された税を実際に収納するためには、できる限り多くの納税者が納期限までに自主的に納付を行うようにすること、つまりは納税環境を整備し、滞納の新規発生を極力抑制する取組がまず必要である。そのためには、納期限や税の役割、仕組みなどについて、住民にあらゆる手段を通じて周知・広報することは当然であるが、このほか、納税者が「税金を払いやすい」仕組みづくりを行うことも重要である。自動車税や固定資産税のように、毎年定期的に課税される税目を中心に、以前から活用されているものとして「口座振替」がある。また、窓口で支払う納税者のために、窓口を増やしたり、納期限の直前は夜間・休日の納付を受け付けるといった工夫も見られる。さらに、後述するが、地方税の収納の私人への委託を認める地方自治法施行令の改正が行われたことから、いわゆるコンビニエンスストアでも収納ができるような体制を整える地方団体も増えてきている。マルチペイメントネットワークを活用する仕組みが構築されている地方団体では、携帯電話などを使ったモバイルバンキングサービスを通じて、地方税を電子納付することも可能である。また、新たな試みとして、地方税の第三者納付の規定を活用したクレジットカード収納も藤沢市において実証実験が行われたところである。
 支払う意思・能力のある納税者に対しては、以上のような納税環境の整備を行なう一方、支払う能力があるにもかかわらず支払わない一部の滞納者に対する対策としては、文書等による督促や催告を行うだけにとどまらず、きちんとした財産調査を踏まえ、地方税法等の規定に基づき、毅然とした滞納処分を実施することが必要である。近年では滞納者の自動車について、タイヤロックをかけることで差押を行うとともに、その使用を制限することによって実効をあげているような取り組みも全国に広がりつつある。ごく少数とはいえ、悪質な滞納を許し、いわば「逃げ得」のようなケースがはびこれば、納期限を守って納付する多くの真面目な納税者が納税意欲を失いかねないのである。こうした「滞納に対する適切な管理と執行」は地方税の徴収対策にとって最大の懸案ともいえよう。
 
3 効率化の観点からの徴収対策
 徴収対策を推進していくうえで、徴収事務の効率化を図っていくことも重要な視点である。例えば、原付自転車に係る軽自動車税のように、年額1000円の税を滞納する納税者に対して、郵送による督促や催告を繰り返した上に、臨戸訪問による納税の慫慂や財産調査を行った上での滞納処分を行うことは、経済的な効率を考えると非常に無駄に見える。しかし、一方で、こうした事例を放置すれば、地方税制そのものの信頼性を損なう結果を招来しかねない。
 このため、地方税の徴収における効率化とは、単に費用対効果を指すのではなく、同様の徴収効果をあげるために、より低いコストで実現させるための方策を指すべきである。その代表例が、徴収事務の広域化や共同化、あるいは民間委託である。これらはコスト面だけでなく、同時により専門性の高い能力の活用という面でも、効率化につながるものといえる。
 最近特に注目されているのが、民間委託のさらなる活用である。行政改革の強い要請のもと、公務員の数を増やせないという制約が働き、人員面での徴収体制の強化を図ることはなかなか難しい。出先事務所の統廃合や市町村合併の推進などの行政改革努力の結果得られた余裕を、地方税の徴収現場に集中的に投入する、という団体もみられるが、常勤の公務員を徴収対策に活用するには限界がある。こうした中で、民間のノウハウを活用できる分野については、積極的に民間委託を推進することにより、公務員である徴税吏員は、悪質な滞納者に対する滞納処分の実施などより高度で専門的な分野の業務に特化・集中させることが可能となる。
 平成17年3月25日に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3カ年計画」においても「地方税の徴収業務については、超税率の向上や国民の不公平感を払拭する観点から、徴収業務にノウハウを有する民間事業者を活用することが重要であると考える。従って、地方税の徴収について、各地方公共団体の個人情報保護政策との整合性に留意しつつ、このような事業者のノウハウを活用できる業務の民間委託を一層推進する。」と指摘されている。
 この決定を受け、平成17年4月1日付の総務省自治税務局長通知「地方税の徴収に係る合理化・効率化の一層の推進について」(以下、「徴収合理化通知」という。)、同日付の総務省自治税務局企画課長通知「地方税の徴収に係る合理化・効率化の推進に関する留意事項について」(以下、「留意事項通知」という。)において、地方税の徴収について、民間事業者のノウハウを活用できる業務についての民間への業務委託等を一層推進するよう、地方団体に通知されている。


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更新日: 2022年5月14日

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