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4 徴収率等の指標について
(1)徴収率
 
 先に述べたように、歳入確保のためには、「より多くの税を調定し実際により多くの税を収納する」ことが必要である。従来、地方税がどれだけ収納されているかについての状況を把握するためには、調定した税額に対する収納された税額の割合を示す「徴収率」という概念が利用されてきたところである。平成17年度決算における地方税の徴収率は、現年分が98.5%、滞納繰越分が20.0%、合計が94.1%となっている。【資料1】
(注)本稿でいう徴収率及び滞納額等は、国に徴収委託をしており、国の消費税額が課税標準であることから徴収率が自動的に100%となる地方消費税を除いている。
 この徴収率は、非常に客観的な数値であり、徴収努力を尽くしている団体の数値は高く、そうでない団体の数値は低くなる、と通常考えられる。しかしながら、滞納の中には、地方税法上の定めに基づき、当該納税者が無資力である等の理由で滞納処分の執行が停止されているような案件も含まれている。
 また、いったん滞納となって翌年度に繰り越されると、その徴収率は当然のことであるが極めて低くなり、現年課税分とあわせた合計の徴収率は、非常に低く見えてしまう。現年分の徴収率が98.5%あるにもかかわらず、滞納繰越分も含めた徴収率が94.1%となるのは、このように滞納繰越分が何年度にもわたって繰り返し分母に算入されるために発生してしまう、いわば「重複計上問題」、である。「徴収率」という用語の定義も曖昧であるが、徴収率といった場合には、現年分の徴収率、すなわち「その年に新たに課税した税金がその年のうちにどの程度納められているか」を示すことがわかりやすいのではないか。滞納繰越分も含めた徴収率は、後述するように、フローの要素にこれまで累積したストックの要素が入り込んでおり、住民への公表の際は注意を要する。
 さらに、現年において徴収できなかった残りの1.5%分についても、滞納繰越分として翌年度以降の徴収対象となり、毎年2割弱が収納されていくこととなる。滞納繰越分の徴収努力が仮に5年継続されるとした場合、5年で約1.0%相当が収納されることとなり、ある年度に調定された税額のうち、最終的には99.5%(=100%-1.5%+1.0%)程度が収納されていると推計することが可能である。
 
(2)滞納税額
 
 徴収率が地方税の収納状況を示す毎年のフローの姿だとすると、ストック面を評価するための指数が、滞納税額である。納期限を過ぎたものについては滞納となるが、ここでは、翌年度に繰り越される現年分、滞納繰越分の滞納額の合計を指したものをいう。
 平成17年度における都道府県税の滞納額は、4,924億円、市町村税が1兆5,452億円であり、地方税合計で2兆376億円となっている。過去からの推移を見ると、ピークは平成13年度及び14年度における2兆3,468億円(いずれも同額)であり、それ以降、滞納額は若干とはいえ、低下傾向にある。【資料2】
 ただ、昭和61年度においては、24.6兆円の税収に対して、滞納額は1兆303億円であったのに対し、平成17年度は34.8兆円の税収に対して、滞納額が2兆376億円である。この20年間で税収は1.4倍に伸びたが、滞納は2.0倍となっており、地方税の滞納額は高い水準にあるといえよう。
 税目別にみると、平成17年度では、固定資産税が8,234億円と最も多く、市町村税の滞納税額の53%を占めている。次いで、個人住民税が7,092億円であり、都道府県税の中ではもっとも多くなっている。【資料3】【資料4】これの経年変化をみると、長らく個人住民税が滞納税額のトップを占めていたが、いわゆるバブル崩壊後、固定資産税の滞納が激増し、平成12年度に初めて固定資産税が逆転したところである。固定資産税の場合、所得とは直接の相関関係がなく納税義務が発生するとともに、一度滞納となると毎年滞納が累積するケースや、金融機関等の抵当権の設定よりもあとに固定資産税の納期限が到来することから、地方団体の徴収権が抵当権に劣後し、強制執行ができないケースが多いことなども、その増加要因として指摘されている。
 
(3)不納欠損額
 
 先に述べた徴収率を基礎とした最終収納率の推計は、あくまでも収納された税の割合だけに着目した推計である。地方税については、いったん調定された税額は、収納されるか、滞納処分の執行停止3年経過等の理由により納付義務が消滅することによって地方団体の会計上、不納欠損処理されるかのいずれかに帰着する。つまり、徴収率の裏側に存在し、徴収率だけを見てもその実態が把握できないのが、この不納欠損処理された税額である。
 地方税の収納に関してはむしろ、
 
「調定額−不納欠損処理された額=最終的な収納額」
 
の算式が成立する。これは無論、滞納整理を続けている限り、不納欠損も収納もされていない状況にとどまるが、この額については、いわゆる地方税の滞納額(収入未済額)として累積することとなるため、この算式は、調定された税額の全ての処理が確定した段階、つまり滞納状態にある税額が0となった段階で成立する。
 地方税の消滅時効は納期限から5年とされているため、概ね調定から5年経過すれば多くの税は収納されるか、不納欠損処理されるように思われるが、実際には分納が長期間にわたって継続する等によって、時効が分納される度に中断し、5年以上も滞納状態が継続することもある。このため、この算式に基づく「最終収納率」を算出するためには、5年よりもさらに長い期間が必要である。また、団体によっては、滞納繰越分の税や不納欠損処理される税がどの年度に課税された税であるかについて、電算システム上の管理が必ずしも万全でないとことから、ある年度に課税された税のうち、最終的に収納された率を算出することは実務的に極めて困難である。
 ただ、国税においては不納欠損され税額に関する統計が公表されているにもかかわらず、地方税については団体ごとに税務統計や決算資料として公表されているもののほか、全国的統計資料が存在しなかった。このため、総務省自治税務局では地方税の収納の実態を把握する目的で、平成11年度決算から直近の平成16年度決算において各地方団体で不納欠損処理された地方税の税額についての調査を行った。その集計結果は次のとおりである
 
<都道府県分>
(単位:億円)
11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度
税収(a) 164,330 174,561 174,063 155,562 154,260 163,069
不納欠損額(b) 703 694 757 780 681 704
b/a 0.43% 0.40% 0.43% 0.50% 0.44% 0.43%
(注)東京都が徴収する市町村税相当分は都道府県分に含む。
 
<市町村分>
(単位:億円)
11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度
税収(a) 185,932 180,903 181,425 178,223 172,397 172,319
不納欠損額(b) 1,094 1,245 1,319 1,495 1,485 1,557
b/a 0.59% 0.69% 0.73% 0.84% 0.86% 0.90%
 
<地方税計>
(単位:億円)
11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度
税収(a) 350,261 355,464 355,488 333,785 326,657 335,388
不納欠損額(b) 1,797 1,939 2,076 2,275 2,166 2,261
b/a 0.51% 0.55% 0.58% 0.68% 0.66% 0.67%
 
 表中「b/a」の数値は、当該年度における税収と当該年度における不納欠損額を単純に比較した割合であるが、不納欠損処分は課税年度よりも後の年度に行われる例が多いと考えられることから、この割合は必ずしも不納欠損比率と表現することは適当とは言えない。ただ、今回調査を行った6年分について単純平均すると、その割合は約0.6%となり、この数値から逆算した最終的に収納されている地方税の割合は、99.4%程度と推計することが可能であり、奇しくも先述の徴収率から推進した最終収納の比率とほぼ一致することがわかった。
 さらに今回、不納欠損の事由別内訳(注:分類不能なものは、全体の比率で按分して区分)も把握できた。地方税法上の定めにより、地方税の納税義務等が消滅するケースは、以下の3つである。
(1)地方税法第15条の7第4項の規定により滞納処分の執行停止をした場合において、その停止が3年間継続したにより納付義務が消滅するもの
(2)地方税法第15条7第5項の規定により滞納処分の執行停止をした場合において、直ちに納付義務を消滅するもの
(3)地方税法第18条第1項の規定により、徴収権を5年間行使しないことによって地方税の徴収権が消滅するもの
 平成11年度に課税された税額について、平成16年度決算までに収納されるか、不納欠損処理が完了したと仮定し、かつ、次のような前提を置いて試算を行った。
*平成11年度の1年間において新たに課税された額(現年分調停額)を基礎。
*平成11年度の1年間に収納されなかった滞納税額については、それぞれ、
*平成11年度分の現年分調定額を分母とし、同額から上記ア、イ、ウに相当する金額を控除した額を分子として計算したものを、「平成11年度分に係る推計収納率」とする。
 
 この結果、平成11年度の現年分調定額32.7兆円のうち、不納欠損されたと推計される額は約2,200億円であり、推計収納率は99.3%となった。
 
(注)なお、平成16年度決算において時効成立によって不納欠損処理された額は、時効の中断などを考慮すれば平成11年度の現年課税分に限られず、その他の事由についても複数年度分が含まれていること、収納も不納欠損処理もされずに引き続き滞納繰越分として徴収が継続されているものが存在すること等から、この推計は正確なものとはいえず、あくまでもイメージをつかむための数値に過ぎないことに留意が必要である。
 
 これらの推計に基づく地方税の最終収納率について、国税との比較はどうであろうか。課税や徴収の仕組み等が異なるため、単純な比較をすることはできないが、国税庁が公表している「国税統計年報書 平成16年度版」のデータを踏まえ、同様の計算を行った場合、毎年度の税収(収納済額の本年分と繰越分の合計額)と不納欠損額との比率は、0.35%〜0.63%程度であり、その単純平均は約0.5%となっている。普通徴収に係る少額の税が多く、課税件数も多い地方税の収納率が国税よりやや劣るものの、概ね同一水準にあると評価して差し支えないと思われる。
 
(参考)国税の不納欠損の状況
(単位:億円)
11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度
税収(a) 508,853 539,171 509,663 475,546 469,851 496,580
不納欠損額(b) 2,240 2,653 3,163 2,989 2,770 1,754
b/a 0.44% 0.49% 0.62% 0.63% 0.59% 0.35%
出典:国税庁「国税庁統計年報書 平成16年度版」より
 
(注)「税収(a)」とは、各年度毎の収納された国税額(「収納済額」の本年分及び繰越分の合計額)である。
 
○ 不納欠損額平均(平成11〜16年度)
国税 2,595億円/年  地方税 2,086億円/年
 
○ 不納欠損額/税収の比率平均(平成11〜16年度)
国税 0.52%  地方税 0.61%
 
 この不納欠損処理に関連し、長年にわたり地方税に関する適切な管理を怠り、時効が既に成立したものについても不納欠損処理を行わなかったため、市町村合併の機会を捉えて、大量の不納欠損処理を行ったと思われるケースが報道されている。そもそも地方税については、それぞれ所得や資産、消費における担税力に着目し、地方団体の行政サービスの原資を地域住民が共同で負担し合うために徴収されるものであって、賦課された税額は基本的に全て収納されるのが望ましい。滞納が発生した場合、法律の規定にのっとり、適切に滞納処分が行われることが求められている。
 一方、資力がないとか、所在や財産等が不明であるなどの理由によって、滞納処分を行うことができないようなケースもあり、こうした案件については、納税者の状況を適確に把握した上で、法律の規定に則り滞納処分の執行停止を行うべきである。また、その状態が3年継続した場合は、法律の規定に基づき、納付義務が消滅し、地方団体の会計上きちんと不納欠損処理されるべきものである。地方税への信頼を確保する観点からも、滞納税額の管理を適切に行い、不納欠損処理についても適切な実施が求められよう。
 
(4)徴収状況に関連するデータの公表
 
 以上に紹介したように、地方税の歳入確保の状況を示すデータとしては、徴収率、滞納額、不納欠損処理額の3つが代表的であろう。例えば、不納欠損処理額が増えれば、相対的に滞納額が減り、徴収率も上がる。この3つの指標を組み合わせてみることによって、その団体における徴収状況を相当程度正確に把握することが可能であろう。なお、不正軽油の密造事案のように、不納欠損覚悟で調定を行うようなケースなど、数字だけでは把握しきれない実態もあることにも留意が必要である。
 こうした指標はいずれも、各地方団体において把握し、公表しているデータである。地方分権を推進していく中、他団体や過去との比較が可能な指標については、できる限りわかりやすい解説を付した上で、議会や住民等に公表・報告することが望ましい。
 地方税の滞納の状況を住民に伝えることは、住民の納税意欲をかえって減殺するのではないか、という意見も聞かれるが、個人情報にわたる部分はさておき、地域社会の共同の会費である地方税の収納状況を住民が適確に把握することは、地方分権を進める上で必要不可欠である。また、多くの納税者が納期限までに真面目に納税している一方で、ごく少数の者が支払う能力があるにもかかわらずに滞納を行うようなケースにおいては、地方団体が断固とした滞納処分を実施するのが当然、といった環境を作っていく上でも重要である。
 先述の「留意事項通知」においても、次のように記されており、3兆円の税源移譲がいよいよ本年から個人住民税で実施されることを踏まえ、こうしたデータの公表のあり方を改めて地方団体で議論し、検討すべきであろう。
 
4 地方税の徴収率の向上と住民への公表等
 
 三位一体の改革における税源移譲の進展や税負担の公平確保の必要性の高まりに応じて、地方税の徴収率の向上や滞納・脱税の解消は、ますます重要性を増してきている。
 平成17年3月29日に総務省において策定した「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」においても、こうした観点から地方税の徴収率の一層の向上に取り組むべきことが示されるとともに、行政改革の成果について、他団体と比較可能な指標について公表するなど、住民等にわかりやすく公表することに努めることが要請されている。
 そこで、各地方団体におかれては、地方税の徴収率の向上対策に一層積極的に取り組むとともに、取組内容やその成果をわかりやすく公表するよう努めていただきたい。
 また、徴収状況に関連するデータの公表に関しては、徴収の実態をできる限り正確に住民等に理解してもらえるように工夫することが望ましいと考えられることから、例えば、時効によって消滅した税債権の金額や、いわゆる不納欠損処理を行った税債権の金額などを従来のデータと併せて公表すること、現年課税分と滞納繰越分の徴収状況を区分して明示すること、等に取り組んでいただきたい。さらに、課税年度ごとに収納状況を追跡して、課税年度ごとの最終的な徴収率を把握、そのデータを公表すること、についてもご検討いただきたい。


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