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競艇沿革史

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


(2)初開催
 昭和二十七年九月五日は、新装なった大阪競艇場(狭山)に、約四、〇〇〇人の入場者を集め、大阪府都市競艇組合主催(管理者・堺市)の下に華々しく開幕したが、すべてが前例のない初めてのことで一抹の不安はあったろうが、全員全く期待と希望の誕生であった。(全国第四番目の誕生)
 先ず、初開催第一日目としての舟券売上は、予想の線約三〇〇万円の売上げを数え、まずまずの成績だと愁眉を開いたことであった。しかしながら、その後が伸びなかった。施行者としては、第一回目開催レース(五日間)に際して約二一三万円の欠損金を生じた。
 第二回開催レース(六日間)には、更に不振で、約二四〇万円の欠損金を見たため、組合議会において問題となり第三回レース以後中止の提案がなされ、その結果、欠損金処置のつく見込みがあれば続行してもよいという決議がなされ、かくて当社は、創立以来日僅かにして、開催欠損金の責任まで負うという会社存廃の岐路に立つに至ったのである。
 当時としては、他に施行者を求める術もなく、さりとて多額の借入金をもって建設した施設をかかえて、このまま無為に過ごすこともできないので、会社存続のためには、やむなく多大の負担困難をしのんでレースの続行を敢行する以外に、方途を見出し得なかった。
 そのため、宣伝業務を初め、無料バスなどの輸送業務もまたこれを当社の担当業務としたため、南海電鉄に多大の援助協力を仰がざるを得なかった。
 
狭山競艇場のある日―スタンド風景(昭和28年)
 
狭山競艇場本部から競走水面を望む(昭和28年)
 
 この苦境を乗切ろうとして、当杜の全員が、舟券売上の向上やファンサービスに心血を注いだのであったが、一向に好転せず、僅かに昭和二十八年の正月レース六日間に、舟券売上総額三、七四二万九、〇〇〇円(一日平均約六二〇万円)、開催利益九万七、二六六円を出したに止まり、それ以外は、開催即欠損の悲観的状況を積み重ねるばかりでついに、昭和二十八年五月に至り、施行者と経費節減の点について折衝せざるを得ない状態に立ち至った。
 折衝の結果、最も妥当な手段として、施行業務を当社において代行すること以外に方法なしとの結論に達し、同年七月五日からの第九回開催以後の施行業務を代行することとなった。
(3)施行業務の代行
 かくて、施行者事務局の事務一切を代行、事務の簡素化や経費の節減に努めたのであるが、なお、苦境打開に至らず、わずかに八月に六日間の舟券売上総額二、四七四万四〇〇円(一日平均四一二万三、四〇〇円)を計上したのが最高であったが、開催収支としては、なお、七四万四、五四一円の欠損に終わった。
 十一月には、最悪の状況を呈し、入場者一日平均約九五〇人、舟券売上同二七〇万円程度に過ぎず、一縷の望みを託した昭和二十九年正月六日間も、入場者一日平均五、六五三人、舟券売上同六一一万三、一五〇円を計上したに過ぎず、累積した欠損金に対しては、全く、焼石に水の感があった。
(4)全機全艇の保有と新競艇場開設企画
 前述の如き苦境を打開する方策の一つとして、全機全艇を保有して賞金の流出を防止することにつき、国際競艇興業株式会社と折衝の結果、一日十二レースの内、六レースを当社に譲られることとなり、同社よりヤマトS―一型エンジン三〇基、ボート一〇隻を購入し、昭和二十八年十月以降、艇三レース、エンジン・ボート六レースを組み、一開催六日間にて、七九万二、〇〇〇円の賞金の還元を得たのであるが、情勢は悪化の一途を辿り、同年十一月に入るや成績極度に低調を示したため、このままでは、到底開催欠損金をカバーし得ないうえ、大阪府都市競艇組合においても、当社との契約更改に当り、抜本的対策を樹立せぬ限り存続困難の気運なりとして、更に、全機全艇を保有することと、早急に新競艇場を開設する二案について、その旨当社に申し入れがなされた。
 以後、種々折衝、経緯をへたのち、昭和二十九年三月二十三日付にて、エンジン六五基、ボート六三隻を当社に引取った結果、これにより六日間の賞金は還元し得ることとなり、経理面に僅かながら自主性を確立し得たうえ、以後のレース運営面の見通しに一つの光明を点ずるに至った。
 また、新競艇場については、別項のとおり、候補地の物色に着手したのであった。
(5)高松宮殿下ご台臨
 かくて、業績向上に腐心していた昭和二十九年九月、高松宮殿下がご台臨された。本部席の椅子に掛けられ、レースの実況に見入られるとともに、瀧脇宏光会長を初め、親しく話し合われるご様子を見たとき、関係者一同は昨日までの苦悩も忘れ、新しい勇気の湧き出てくるのを覚えたことであった。
 これも狭山と共に忘れ得ぬ出来事の一つであった。
 
高松宮殿下ご台臨
昭和29年9月、高松宮殿下がご台臨され、レースの実況をご覧になられた。狭山とともに忘れ得ぬ出来ごとのひとつである。
 
(6)箕面豊川競艇組合の開催参加
 昭和二十九年十一月に至り、新たに、箕面豊川競艇組合(現在箕面市)が発足、レース参加の申し入れがあり、開催欠損については半額負担ということで、施行業務も同じく当社が代行することとして、同月十一日、同組合主催による第一回レースが開催された。
 これが二施行者の始まりであった。しかしながら、舟券売上は、依然低調で、毎開催欠損金の累積を見るのみであった。
(7)池旱魃によるピンチ
 昭和三十年八月二十二日は、大阪府都市競艇組合主催レースの第三日目に当っていたが、連日の日照り続きのため多くの溜池へ放水を続けた狭山池は、水位不足となり、ついにレース中止のやむなきに至った。
 そのうちに干上がってしまい池底に雑草がはえ出すなどして、引続き二ヵ月間にわたるレース開催不能の憂き目を見るに至り、会社経営は全くピンチに見舞われてしまった。
 かくて、昭和三十一年三月末に至って、会社の欠損金累積は約一億円に上がり、負債総額は約一億七、四〇〇万円となって、苦境のドン底に陥ったのであった。
 そして、ついに、昭和三十一年四月十日、苦悩に満ちた狭山競艇場は開設以来約四ヵ年にして閉鎖するに至った。
 
干上がった狭山池
昭和30年8月の日照りつづきで、干上がった狭山池、ひびわれた泥土の上のターンマーク。右前方に大時計が見える。


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