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2. 配布資料
平成17年8月25日
中央区立教育センター主催
平成17年度第5回小学校理科研修会資料
沖ノ鳥島の自然
〜沖ノ鳥島をとおした教育ネタの検討〜
海洋政策研究財団
福島朋彦
 
参考資料
福島朋彦 2004. 沖ノ鳥島周辺海域の主権的権利を失うことの損失はなにか〜抽象論から具体論へ〜, 沖ノ鳥島の有効利用を目的とした視察団報告書, 日本財団
 
福島朋彦 2005. 沖ノ鳥島の再生について〜沖ノ鳥島研究会としての取り組み〜, 沖ノ鳥島における経済活動を促進させる調査団報告書, 日本財団
 
はじめに
 私ごとですが、沖ノ鳥島関連の業務に関わるようになって、早くも10ヶ月が過ぎようとしています。私には随分と思い入れのある場所になりつつありますが、大部分の人にとっては訪れたこともない南海の孤島ですので、身近に感じることもないことでしょう。しかし、子どもたちの興味の対象は身近な素材だけではありません。自らを幼少期を振り返ると、決して訪れることがないと思っていても“宇宙”に憧れたものですし、“アフリカの大地”でライオンが吼える姿を想像しながら興奮したことを覚えています。沖ノ鳥島は幼少期の私が“宇宙”や“アフリカの大地”に興奮したように、子どもたちを夢中にさせる素材になりうるでしょうか。
 
 本日の研修では、“沖ノ鳥島”のなかに一体どんな教育ネタが隠されているのかを考えて見たいと思います。もちろん学校教育に関してはまったくの素人ですので、私の考える教育ネタの効果については皆様に評価していただくしかありません。しかし、家に帰れば中1と小4を抱える2児の父です。夏休みの宿題に追われる子供らと接しながら、如何にして子供たちの尊敬を得られるかを考えている“野心的な父”でもありますので(無駄な努力かも知れませんが・・・)、きっと現場の先生方との接点があることと信じております。私の講演が、現場の先生方の参考になれば、講師としての望外の喜びです。
 
平成17年8月25日
海洋政策研究財団 福島朋彦
 
1. 沖ノ鳥島とは?
スライド1: 社会のトピックス(新聞を読もう)
 中国が島でなく岩というのは、国連海洋法条約の第121条の解釈が異なるからです。中国と日本は、排他的経済水域内で海洋調査を行う時は、互いに事前通告をする約束があります。しかし中国は沖ノ鳥島の周辺海域は排他的経済水域を宣言できないと解釈しているので、日本からみると“無断な調査”であっても彼らにしてみれば通告の必要もないことなのです。これも元を辿れば国連海洋法条約の第121条の解釈に行き着きます。石原都知事が沖ノ鳥島を訪問したり、マグロ漁船をチャーターしたりするのは、やはり国連海洋法条約121条にある独自の経済活動を実施するためです。
* 小学生に“国連海洋法条約”が堅苦しいとすれば、“海の憲法”や“国と国の約束事”と言い換えることも可能です。
 
スライド2: 地理のトピックス(沖ノ鳥島の位置を知ろう)
 沖ノ鳥島をただ単に最南端の島とするのではなく、東京都にもかかわらず東京都区内から1700km、最も近い沖大東島からでも670kmも離れていることなど、数字を添えることで印象深くなると思います。またハワイと同じ緯度、台湾より南に日本があるなんて、子どもたちにとって、意外な事実ではないでしょうか。
 
スライド3: 歴史のトピックス(昔から日本)
 沖ノ鳥島の発見された時期については諸説あるようですが、古い発見情報の真偽は疑わしいようなので、1543年の発見を最初に記しました。沖ノ鳥島は第一次世界大戦後に日本領となり、第二次世界大戦後に一時的に日本は管轄権を奪われてしまいます。二つの世界大戦という歴史の教科書になじみのある出来事と関連させることが出来そうです。
 
スライド4-6: 理科または社会のトピックス(台風・海流)
 沖ノ鳥島の位置するのは台風と北赤道海流の通り道です。南の海上で発生した台風がどのような経路で日本列島に到着するのか、台風シーズンに提供する話題に最適です。北赤道海流が北上し、黒潮となって日本列島全体を暖めたあと、再び東に向かって流れ、さらにアメリカ大陸の西岸を南下します。このように北太平洋のなかを回る流れを北太平洋還流といいます。この一連の動きを理解すれば、同じ緯度にもかかわらず、沖縄ではサンゴが発達するのに、カルフォルニアでは発達しないことなどが理解できます。他にも貿易風、偏西風、赤道海流、親潮なども関連付けて学ぶことができると思います。
 
スライド7: 理科のトピックス(ダーウィンの沈降説)
 沖ノ鳥島は、実は、富士山と同じような形をしています。但し、低潮時に海面上に出てくるのは長さ1.7×4.5km(約450ha)の平坦な部分です。なぜ平坦かと言えば、サンゴでできているからです。サンゴは海面よりも上に成長しないのですが、十分に光が到達するような浅い部分に分布します。すなわち、海面にあわせてサンゴ礁が発達するから、平らになってしまうのです。しかし、長い地質年代のなかであれば、海面の上昇や低下がありますので、サンゴの発達もそれに翻弄されてしまいます。海面が低下したときには、海面上に残されたサンゴは波浪によって削られてしまいます。現在の東小島と北小島は削り残しです。


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