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4. 中国内陸河川における舶用機器の搭載現状及び需要動向
4.1 アンケート調査の実施
 調査の目的:中国内陸河川における舶用機器の搭載現状及び需要動向を把握するためである。
 調査の対象:内陸河川航運企業、造船所、船舶設計院
 調査の内容:まず、中国の内陸河川船舶に搭載された舶用メインエンジン、プロペラ、ギア・ボックス、発電機、電動機、舶用ポンプ六大機器の使用状況を調査し、次に中国内陸河川船舶の標準化に伴い、調査対象企業らが上記六大機器への選考と選考要素をまとめて、中国内陸河川の舶用機器の需要動向を分析する。
 調査の方法:アンケート調査、調査対象へのインタビュー、電話による聞き取りなどを通じて、内陸河川航運企業の船舶数、造船所の年間造船能力、設計院の年間設計能力によって定量処理、統計を行なう。
 調査対象の説明:今回アンケート対象にした航運企業は主に揚子江水系(長航集団傘下の内陸河川船舶数の最も多い企業を主とする)、京杭大運河(例えば、江蘇省内河航運有限公司)、珠江水系をカバーする企業である。造船所は内陸河川用船舶の建造を主とする沿江、沿河の内陸地にある造船所である。設計院は武漢長江船舶設計院、広州船舶及び海洋工程設計院など内陸河川用船舶設計を主とする設計院である。
 アンケートの有効回答状況
 今回のアンケート調査において、中国内陸河川航運企業、造船所、船舶設計院に対し、それぞれ質問内容の違うアンケートを配布した。アンケート発行数は60部であったが、アンケートの有効回答数は24部であり、回収率は40%であった。回収した有効アンケートのうち、内陸河川航運企業と造船所がそれぞれ10社、船舶設計院が4社であった。
 
表36 有効アンケート企業一覧表
対象分類 調査対象
航運企業 重慶揚子江輪船公司、揚子江交通科技股公司、武漢揚子江輪船公司、南京揚子江油運公司、上海市揚子江輪船公司、武漢峡江長航運送有限公司、蕪湖揚子江輪船公司、武漢揚子江石油化工運貿総公司、南京水運実業股有限公司、江蘇省運河航運有限公司
造船所 武漢青山船廠、湖北宜昌船廠、広西西江造船廠、広西桂江造船廠、広西西江造船有限公司(元梧州船廠)、天津市新港船廠、重慶川東船廠、舟山揚帆集団工業集団公司、滬東中華造船集団、蚌埠市神州機械有限公司
船舶設計院 武漢揚子江船舶設計院、広州船舶及び海洋工程研究設計院、江蘇省金泰船舶設計研究有限公司、中国船舶工業集団公司708研究所
注:珠江水系における航運企業は私営企業が多く、規模が小さく、船舶数もほとんどが5隻から10隻しかない。今回、回収した有効アンケートの航運企業はほとんどが長航集団傘下の企業であった。京杭大運河の有効アンケートの回答企業は船舶数が最も多く、規模最大は江蘇省運河航運有限公司である。
 
4.2 アンケート調査の結果分析
 アンケートの結果をまとめ、内陸河川舶用機器によって分類し、航運企業、造船所、設計院の調査アンケートを元データとし、中国内陸河川舶用機器の搭載現状と需要動向を分析する。
 調査対象の相違によって、加重平均法で統計を行なった。
 航運会社−−航運会社の内陸河川船舶保有隻数をもって当該航運会社に使われている舶用製品ブランドのパーセンテージ数により、加重平均法でデータ処理を行なう。
 造船所−−造船所の最近3ヵ年平均内陸河川新造船の建造実績をもって当該造船所に調達された舶用製品ブランドのパーセンテージ数により、加重平均法でデータ処理を行なう。
 設計院−−設計院の最近3ヵ年平均内陸河川船舶の設計実績能力をもって当該設計院に推薦された舶用製品ブランドのパーセンテージ数により、加重平均法でデータ処理を行なう。
 
 航運会社、造船所と設計院から回答してきたパーセンテージ数は相違がある。違う調査対象から得たデータの意義は以下のようとなる。
 航運会社から回答してきたパーセンテージ数は、現在運営中のすべての保有船に対して得たデータであり、船舶全体の舶用機器の使用状況を反映することができる。
 造船所廠から回答してきたパーセンテージ数は、最近3ヵ年に建造した内陸河川船舶に対して得たデータであり、近年の内陸河川舶用機器の使用状況を反映することができる。
 設計院から回答してきたパーセンテージ数は、最近3ヵ年に設計した内陸河川船舶に対して得たデータであり、設計院は内陸河川船舶産業チェーンの中に舶用機器を推薦する役割を果たすだけであり、舶用機器の調達決定または実行は航運会社または造船所が行なったため、データは参考として位置づけられる。
 
4.2.1 舶用主機(ディーゼル・エンジン)
4.2.1.1 中国内陸河川船舶ディーゼル・エンジンブランド別使用現状
 今回調査した航運会社の中に、内陸河川船舶が1,055隻あり、搭載されたメインエンジン上位5位のブランドは、MAN-B&Wが第1位で、全体の30.6%を占め、全部中国国内で生産されている。龍280が第2位で、全体の20.6%を占めている。寧波中策動力機電集団の6300と8300の二つの規格のメインエンジンは全体のそれぞれ7.7%を占め、同率で第3位となっている。第5位は日本のヤンマーである。山東省坊ディーゼルエンジン廠で製造されたメインエンジンは全体の5.3%を占め、第6位となっている。
 今回調査した造船所における最近3ヵ年の年間平均造船実績は70隻であり、それらの造船所で使われているメインエンジンのブランドは、山東省坊ディーゼルエンジン廠で製造されたメインエンジンが全体の26.6%を占め、トップとなっている。龍280が第2位で、全体の7.9%を占めている。MAN-B&Wは全体の7.4%を占め(うち輸入品は41.7%である)、第3位となっている。ドイツのMTUとアメリカのカミンズ(Cummins)及びドイツのドゥーツ(Deutz)のメインエンジンはそれぞれ全体の5.9%を占め(うちドイツMTUメインエンジンは全部輸入品であり、カミンズ(Cummins)メインエンジンの30.5%は輸入品で、ドイツドゥーツ(Deutz)メインエンジンの90.8%は輸入品である)、同率で第4位となっている。洛陽ディーゼルエンジン廠で製造されたメインエンジンは全体の5.4%を占め、第5位となっている。
 今回調査した設計院の中に、最近3ヵ年の年間平均設計実績は68隻であり、それら設計院の推薦したメインエンジンの第5位は、アメリカのカミンズ(Cummins)が第1位で、全体の21.1%を占めている(うち輸入品が44.7%を占めている)。博ディーゼルエンジン廠は第2位で、全体の16.7%を占めている。MAN-B&Wのメインエンジンは全体の11.1%を占め、第3位となっている。洛陽ディーゼルエンジン廠のメインエンジンは全体の8.9%を占め、第4位となっている。アメリカのCaterpillarと日本のヤンマーはそれぞれ全体の6.7%を占め(うち、Caterpillarメインエンジンの16.7%が輸入され、ヤンマーメインエンジンは主に輸入されている)、同率で第5位となっている。
 舶用メインエンジンのブランドの選択は船主によって決定される。すなわち船主がメインエンジンのブランド、規格、出力など主要パラメーターを確定し、造船所に購入してもらうことにする。設計院はメインエンジンの購入においては主に推薦とアドバイスを行っている。
 今回、航運会社、造船所及び設計院への調査結果から分析すると、中国内陸河川船舶に最もよく使われているメインエンジンはMAN-B&W、山東省坊ディーゼルエンジン廠の製造エンジン、上海ディーゼルエンジン股有限公司で製造された龍280などである。近年、山東省坊ディーゼルエンジン廠で製造されたメインエンジンの搭載率がだんだん上昇している。
 
表37  中国における内陸河川舶用メインエンジンの各ブランド及び使用現状
ブランドまたは製造メーカー 航運会社(%) 造船所(%) 設計院の推薦率(%)
MAN-B&W 30.6 7.4 11.1
龍280 20.6 7.9 NA
寧波中策動力機電集団6300 7.7 3.8 5.6
寧波中策動力機電集団8300 7.7 2.8 NA
ヤンマー(日本) 6.2 3.6 6.7
山東省坊ディーゼルエンジン廠 5.3 26.6 NA
ダイハツ(日本) 5.2 1.7 5.6
マーク(ドイツKrupp MAK) 4.3 3.0 4.4
洛陽ディーゼルエンジン廠 4.3 5.4 8.9
博ディーゼルエンジン廠 3.2 3.1 16.7
Wartsila-Sulser型 1.6 3.0 4.4
カミンズ(アメリカCummins) 1.4 5.9 21.1
南昌船用デイーゼルエンジン廠 0.5 NA NA
8NVD48A(ドイツ) 0.5 NA NA
M16(アメリカ) 0.5 NA NA
上海市東風ディーゼルエンジン廠 0.5 NA NA
MTU(ドイツ) NA 5.9 2.2
ドゥーツ(ドイツDeutz) NA 5.9 NA
Semt-Pielstick(フランス) NA 3.6 NA
Caterpillar(アメリカ) NA 3.9 6.7
南通ディーゼルエンジン股有限公司 NA 3.6 NA
陜西ディーゼルエンジン廠 NA 3.2 2.2
鎮江船用ディーゼルエンジン廠 NA NA 4.4
合計: 100.0 100.0 100.0
出典:アンケート調査(2005年11月〜12月)をもとにMIRUまとめ
注:「NA」はデータがない、またはデータを取得していないことをあらわしている。
 
 中国で使われている内陸河川舶用メインエンジンの海外ブランドは輸入品と国産品がある。国産品は主に海外ブランドからメインエンジンの生産許可書を取得して製造され、または海外ブランドメーカーとの合弁企業で製造されている。例えば、MAN-B&Wブランドの国産品は上海市滬東重機、宜昌船舶ディーゼルエンジン廠、陜西ディーゼルエンジン廠がMAN-B&W社からの生産許可書を取得した上で製造している。「MAK」ディーゼルエンジンはドイツKrupp MAK社と広州ディーゼルエンジン廠との合弁企業「広州馬克ディーゼルエンジン有限公司」にて製造されている。今回の調査結果から中国における内陸河川舶用メインエンジンの海外ブランドの使用状況を分析すると、最近3ヵ年の中国造船所で作られた内陸河川船舶の中で、ドイツのMTU、ドイツのドゥーツ(Deutz)、アメリカのCaterpillar、日本のヤンマーのディーゼルエンジンは主に輸入である。ドイツのマーク(Krupp MAK)と日本のダイハツのディーゼルエンジンは、中国で現地生産されている。中国における内陸河川船舶で使われているMAN-B&W、カミンズ(Cummins)、Wartsila-Sulser型の3つブランドのディーゼルエンジンについても、輸入品より中国現地産の国産品の割合が高い。
 
表38  最近3ヵ年の中国造船所で使われている海外ブランド舶用メインエンジンの輸入品と国産品の使用状況
ブランド名称 輸入品の使用率(%) 国産品の使用率(%)
MAN-B&W 41.7 58.3
MTU(ドイツ) 100.0 0.0
ドゥーツ(ドイツDeutz) 90.8 9.2
マーク(ドイツKrupp MAK) 0.0 100.0
Caterpillar(フランス) 100.0 0.0
カミンズ(アメリカCummins) 30.5 69.5
ダイハツ(日本) 0.0 100.0
ヤンマー(日本) 100.0 0.0
Wartsila-Sulser型 28.6 71.4
出典:アンケート調査(2005年11月〜12月)をもとにMIRUまとめ


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