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4.2.1.2 中国における内陸河川舶用メインエンジンの主要製造メーカー
 今回航運会社、造船所及び設計院へのアンケート結果により、中国における内陸河川舶用メインエンジンの製造メーカーに対する選択率の高い製造メーカーを以下の表39にまとめた。
 
表39  中国における内陸河川舶用メインエンジンの主要製造メーカー
製造メーカー名称 主要製品まはたブランド 調査対象からの評価
鎮江船用ディーゼルエンジン廠 MAN B&Wなど ブランドの製造技術を持ち、アフター・サービスがよい。保守・修理が便利である。
上海市デイーゼルエンジン股有限公司 龍280型、135シリーズなど 品質と製造技術がよい。中国国内での知名度が高い。納入がタイムリーで、信頼性がよい。部品の調達が便利である。
寧波中策動力機電集団 8300、6300、N6160など 品質は平均的で、価格は適当である。
滬東重機股有限公司 MAN-B&W、SULZERなど 品質が信頼でき、価格が安く、知名度が高い。
陜西ディーゼルエンジン廠 日本のダイハツ、ドイツのMTUなど 安全で信頼性がある。保守が簡単で、操作が便利である。経済性がよい。使用寿命が長い。品質がよく価格が安い。
大連船用ディーゼルエンジン廠 MAN-B&W、Sulzerなど 品質がよい。価格が安い。
坊ディーゼルエンジン廠 WD618、WD615など 品質がよい。価格が安い。安定性がよい。修理がタイムリーである。
広州馬克ディーゼルエンジン有限公司 300、320、230などシリーズ 中速ディーゼルエンジンの品質がよい。価格は高い。
(洛陽)ディーゼルエンジン有限公司 東方紅 信頼性がよい。安定性がよい。アフター・サービスがよい。
博ディーゼルエンジン廠 Z170、210、L250、300、日本のN330など 価格が低い。品質と製造技術がよい。搭載が便利で、中国国内での知名度が高い。
宜昌船用ディーゼルエンジン廠 MAN B&W、SULZERなど 価格が合理で、品質がよい。性能と価格の比は高い。
重慶康明斯発電機有限公司(アメリカカミンズ(Cummins)社の合弁企業) K38、K19など 品質がよい。性能と価格の比は高い。
無錫ディーゼルエンジン廠 6300、8300など 品質と製造技術がよい。
南通デイーゼルエンジン股有限公司 Ca: 2135、6135など
Aca: 2135、6135など
安定性がよい。
出典:アンケート調査(2005年11月〜12月)をもとにMIRUまとめ
 
 上記表39の調査対象からの評価から見ると、品質において、中国内陸河川舶用メインエンジン製造メーカーで製造された国産ディーゼルエンジンは、品質がよく、製造技術もよい。価格の評価においては、広州馬克ディーゼルエンジン有限公司で製造されたディーゼルエンジンの価格が高いと評価されているが、その他の製造メーカーが製造したメインエンジンの価格は合理的であると評価されている。
 
4.2.1.3 内陸河川舶用メインエンジンの選択要素
 今回調査対象の航運会社、造船所、設計院に対しメインエンジンヘの選択要素をアンケートした。アンケート結果は次の表40のとおりである。
 航運会社:航運会社は利益追求を目標とし、船舶の「経済実用性」を重んじる。今回の調査結果を統計すると、メインエンジンを選択する際に、約80%の航運会社は品質を第1位で考える。つぎは、約50%の航運会社は価格を第二の選択要素とする。技術、アフター・サービス及び調達の便利さなど要素はその後となっている。
 造船所:メインエンジンの選定には船主からブランド、規格及び出力など技術パラメーターを指定される場合が多い。したがって、造船所は船主の意図に従がうので、メインエンジンのブランド、規格への選定権はほとんどの場合ない。造船所のメインエンジンの選択要素は航運会社とほとんど同じであるが、アフター・サービスと調達の便利さを考える時に、造船廠はアフター・サービスを重要視する。それは、メインエンジン製造メーカーと契約した後、ずっとその新造船を船主に引き渡すまでに、造船所はメインエンジン製造メーカーから技術のサポート、協力及びクレーム処理などをしてもらわなければならないからである。
 設計院:設計院は船舶の設計業務を主とするため、メインエンジンの選定権はないが、船主と造船所にメインエンジンの推薦役割を果たしている。今回の調査結果を見ると、価格が第一推薦の考慮要素となり、次ぎは品質、そして技術の順となっている。
 そのほかに、航運会社はメインエンジン関連部品の調達の便利さを考えるべきである。造船所は船主の要求、船型の需要、メインエンジンのブランド、納期なども選択要素となる。設計院は船主の要求、メインエンジンの出力、外形サイズ、排出基準、油消費量などの要素を考えなければならないのである。
 
表40  中国における航運会社、造船所、設計院の内陸河川舶用メインエンジン選定要素の順位
調査対象 選択要素の順位
航運会社 (1)品質(2)価格(3)技術(4)調達の便利さ(5)アフター・サービス
造船所 (1)品質(2)価格(3)技術(4)アフター・サービス(5)調達の便利さ
設計院(推薦) (1)価格(2)品質(3)技術(4)アフター・サービス、調達の便利さ
出典:中国における内陸河川舶用機器使用状況のアンケート調査(2005年11月〜12月)をもとにMIRUまとめ
 
4.2.2 プロペラ
4.2.2.1 中国における内陸河川舶用プロペラの使用現状
 今回のアンケート調査結果を見ると、中国内陸河川船舶の90%以上が国産プロペラを使用し、極めて少ない内陸河川船舶(10%未満)が輸入プロペラを使用している。国産プロペラの主要製造メーカーは、鎮江プロペラ廠、広州遠航プロペラ製造有限公司、大連推進器廠、重慶衡山機械廠、麻城振興プロペラ廠などである。海外からの輸入プロペラブランドは主にドイツのZF Marine、ドイツのSCHOTTEL、日本のKAMOMEなどがあるが、輸入量は非常に少ない。
 
表41 中国内陸河川舶用プロペラのブランド及びその使用状況
ブランドまたは製造メーカー 航運会社(%) 造船所(%) 設計院(推薦)(%)
鎮江プロペラ廠 55.0 32.9 34.4
広州遠航プロペラ製造有限公司 18.4 23.9 20.0
大連推進器廠 13.9 23.9 14.4
重慶衡山機械廠 NA 8.9 26.7
ZF Marine(ドイツ) NA 2.1 NA
SCHOTTEL(ドイツ) 0.9 NA 2.2
江蘇省運河航運公司 5.6 NA NA
麻城振興プロペラ廠 2.4 NA NA
武漢重工鋳鍛有限公司 2.2 2.0 NA
蘇州四欣船用機械有限公司 0.9 NA NA
KAMOME(日本) 0.9 NA NA
南通惠港船舶推進器有限公司 NA 1.8 NA
その他(例えばLIPS、Kamewa、蘇州SCHOTTEL推進器有限公司) NA 4.5 2.2
合計: 100.0 100.0 100.0
出典:中国における内陸河川舶用機器使用状況のアンケート調査(2005年11月〜12月)をもとにMIRUまとめ
注:「NA」はデータがない、またはデータが取得していないことをあらわしている。
 
4.2.2.2 中国内陸河川舶用プロペラの主要製造メーカー
 今回の航運会社、造船所及び設計院へのアンケート結果により、中国における内陸河川舶用プロペラの製造メーカーに対する選択率の高い製造メーカーを表42に示す。
 
表42 中国内陸河川舶用プロペラの主要製造メーカー
主要製造メーカー 調査対象からの評価
鎮江プロペラ廠 メインエンジンとの取り付け合わせが容易であり、品質が信頼でき、技術が成熟で、価格が安く、アフター・サービスがよく、知名度が高い。
大連推進器廠 品質がよく、性能と価格の比が高く、技術レベルが高く、修理がタイムリーで、知名度が高い。
広州遠航プロペラ製造有限公司 技術が高く、メインエンジンとの取り付け合わせがよく、価格が適当である。生産規模が大きく、納期がタイムリーで、業界での口コミの評判がよく、企業イメージがよい。
重慶衡山機械廠 専門的な鋳造メーカーであり、品質が信頼でき、価格が安い。アルミプロペラは業界において知名度が高い。
南通惠港船舶推進器有限公司 製品の品質がよく、信頼性が高い。
武漢重工鋳鍛有限公司 価格が安く、品質がよい。
麻城振興プロペラ廠 技術がよく、価格が安く、アフター・サービスがよい。
江蘇省運河航運公司 専門の船舶修理部を持ち、プロペラの組立てができる。組立てたプロペラは自社の船舶に搭載される。
蘇州SCHOTTEL推進器有限公司 製品の性能と価格の比が高い。
蘇州四欣船用機械有限公司 技術レベルが高い。
出典:アンケート調査(2005年11月〜12月)をもとにMIRUまとめ
 
 中国の国産プロペラの技術は成熟しており、コストパフォーマンスが高く、調査対象からの評価が高いのである。プロペラ製品の生産・販売から見ると、中国国内製造メーカーの生産能力は中国国内の市場需要を満たしている。
 
4.2.2.3 内陸河川舶用プロペラの選択要素
 今回のアンケート調査結果では、航運会社と造船所のプロペラ選択要素の順位がほぼ同じである。メインエンジンと同じように、造船所は製造メーカーのアフター・サービスを重視し、調達の便利さ、メインエンジンまたはギア・ボックスとの取り付け合わせなどは後位となっている。
 設計院は船主または造船所にプロペラを推薦する時、技術を第1位の考慮要素とし、品質と価格を同率で第2位の考慮要素とし、そしてメインエンジンまたはギア・ボックスとの取り付け合わせなどの要素を考える。
 航運会社と造船廠及び設計院の内陸河川舶用プロペラの選定要素を総括すると、品質、価格、技術を主要選定要素とするが、調達の便利さ、メインエンジンまたはギア・ボックスとの取り付け合わせ、アフター・サービスなどの要素は後位として検討する要素となっている。そのほかに、造船所は船主、運送の便利さ、主要関連部品などの要素も考慮している。
 
表43  中国における航運会社、造船所、設計院の内陸河川舶用プロペラ選定要素の順位
調査対象 選択要素の順位
航運会社 (1)品質(2)価格(3)技術(4)調達の便利さ、メインエンジンまたはギア・ボックスとの取り付け合わせができること、アフター・サービス
造船廠 (1)品質(2)価格(3)技術(4)アフター・サービス、メインエンジンまたはギア・ボックスとの取り付け合わせができること、調達の便利さ
設計院(推薦) (1)技術(2)品質、価格(3)メインエンジンまたはギア・ボックスとの取り付け合わせができること(4)アフター・サービス、調達の便利さ
出典:アンケート調査(2005年11月〜12月)をもとにMIRUまとめ


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