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欧州における高速船搭載機器に関する動向調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力
 団体名 日本舶用工業会  


6.1.5 FASTPOD(FP5)12
 FASTPOD(Fast ship applications for pod drives)プロジェクトは、EU第5次フレームワーク・プログラム(FP5)の主題のひとつである「競争力のある持続可能な成長」を目指して2002年10月に開始された、高速船へのポッド型推進器適用に関する共同研究開発プロジェクト。プロジェクト予算総額は約400万ユーロで、うち240万ユーロをEUが出資。研究期間は36ヶ月間。
 同プロジェクトでは、ポッド型推進装置に関するEUの研究開発プロジェクトOPTIPOD(FP4)で検討された時速24ノットのROPAX船から一歩進め、29ノット以上の高速船へのポッド適用を検討する。
 
 
(プロジェクトの目的)
●「大型高速商船」と「アジマス・ポッド」という欧州企業が開発した二大技術を組み合わせることにより、欧州企業の競争力をさらに高め、欧州全体の技術革新と海事セクターにおける雇用促進に寄与する。
●高速船とポッド技術を組合せた新船型を開発し、より高速で低コスト、かつ環境にやさしい海上輸送を提案する。
●海上輸送の効率化、安全性向上、環境保全を図ることで、EU国民の生活の質を向上させる。
 
(参加組織・企業)
 EU7カ国から17組織・企業がプロジェクトに参加しており、商船及び軍用造船所、船級協会、大学、研究組織、船社、コンサルタントを含めた幅広いメンバー構成となっているが、OPTIPODプロジェクトに比べてメーカーの参加が少なく(1社のみ)、造船所の参加が多い(5社)ことが興味深い。既存のポッド・メーカーは直接参加していない。
 
表:FASTPOD参加組織・企業一覧
組畿・企業名 国名 業種
Newcastle University - School of Marine Science and Technology(プロジェクト・コーディネーター) 英国 大学
ALSTOM Chantiers de l'Atlantique フランス 造船所
CETENA S.p.A Centro per gil Studi di Tecnica Navale イタリア コンサルタント
Ship Design and Research Centre ポーランド テスト・センター
Deltamarin フィンランド コンサルタント
Fincantieri-Cantieri Navali Italiani S.p.A イタリア 造船所
Stocznia Gdynia S.A. ポーランド 造船所
Hamburgische Schiffbau-Versuchsanstalt GmbH(HSVA) ドイツ テスト・センター
Lloyd's Register of Shipping 英国 船級協会
Principia Marine フランス コンサルタント
SSPA Sweden AB スウェーデン テスト・センター
University of Stranthclyde and Glasgow-Ship Stability Research Centre(SSRC) 英国 大学
Stocznia Szczecinska Nowa Spolka z o.o(SSN) ポーランド 造船所
Stena Rederi スウェーデン 船社
Technicatome SA フランス 電動機・推進器メーカー
BAE Systems Marine 英国 造船所
Technical Research Centre of Finland フィンランド テスト・センター
 
(プロジェクトで提案・検討される船型)
●ROPAXフェリー:最高速度40ノットの高速貨客船(HSC)。複数のガス・タービンを主機とし、ポッド型推進器4基(船尾にアジマス2基、船首に固定式プルタイプ2基)を搭載。
●通常船型コンテナ船:大西洋地域を運航する3614TEU、60FEUのコンテナ船。最高速度35ノット以上。複数のポッドの組合せを検討。
●トリマラン型コンテナ船:1692TEU。最高速度35ノット以上。ポッド型推進器4機(アジマス2基、固定式2基)を搭載。
 
 同プロジェクトに関連し、2004年4月には英国ニューカッスル大学で、ポッド型推進器に関する国際会議「T-PODコンファレンス」13が開催された。
 さらに、米国主導の「リム・ドライブ・ポッド」プロジェクト(後述)、ウォータージェットとポッドの組合せを検討する「VRSHIPS-ROPAX 2000」、International Towing Tank Conference(ITTC)のアジマス・ポッド推進委員会との連携も行われている。
 
 
6.2 リム・ドライブ・ポッド
 EUプロジェクト以外の高速船関連国際研究開発プロジェクトとしては、現在米国General Dynamics Electric Boat(EB)社が開発中の「リム・ドライブ」ポッド(Commercial Rim-Drive Propulsor Pod: CRDP)が注目される。リム・ドライブ・ポッドは、高速船に適用可能な次世代のポッド推進システムである。
 リム・ドライブ・ポッドでは、従来の「ハブ(流線型ポッド本体)・ドライブ」ポッドと異なり、プロペラが組み込まれたダクト(外枠)を船底外部に支柱で取り付け、プロペラ翼のリム部(縁)に搭載されたラジアル型永久磁石(PM)モーター・ローターにより複数基のプロペラを駆動する新しい形状のポッド・システムである。モーター・ステーターはダクト内に内蔵される。
 
図:リム・ドライブ・ポッド(CRDP)
出典:OPTIPOD
 
 モデル実験では、リム・ドライブ・ポッドは、サイズ、重量、効率・性能全ての面において従来型ポッドよりも優れているとの結果が出ている。
 また、リム・ドライブ・ポッド搭載船では最高速力40ノット以上が可能であるとされ、現時点でポッド搭載船の高速化への最良のソリューションであると考えられている。
 
(リム・ドライブ・ポッドの主な利点)
●新形状による水流力学的な効率向上。
●キャビテーションの改善。
●小型・軽量。(下表参照)
●リム部に接続されたモーター(motor rotor)は、高トルクを発揮できるため、低回転速度でのオペレーションが可能。
●ポッド支柱がプロペラ流の外側に位置するため、プロペラ効率が向上。
●従来型ポッドで故障が発生しやすいシャフト・シール装置、内部冷却装置が不要。ベアリングの性能も改善。
 
 リム・ドライブ・ポッド開発には、フィンランドDeltamarin、ドイツHSVA等の欧州勢も参加しており、HSVAにおける商船用リム・ドライブ・ポッドを使ったモデル実験からは、以下のような結果が導かれた。
●従来型ポッドに比較して効率が約6%向上。
●実船搭載では効率はさらに高いと予想される。
●高効率を活かした同出力での高速化が可能。
●通常運行条件でのキャビテーションが改善。
●キャビテーションによる効率低下は、時速26ノットで発生するが、低下率は低い。
●振動の軽減。
 
 EB社はリム・ドライブ・ポッドのモデル実験結果から、25ノットのパナマックス・クルーズ船を例に、以下のような従来型ポッドとリム・ドライブ・ポッドの比較を行っている。
 
表: 従来型ポッドとリム・ドライブ・ポッドの比較
(船速25ノットのパナマックス・クルーズ船)
従来型ポッド リム・ドライプ・ポッド
必要出力 20MW 18.5MW
連続トルク・レーティング 〜1,400kN-m 1,918kN-m
ポッド本体の長さ 11.2m 3.9m
ハブの直径 2.9m(ポッド本体) 1.46m(プロペラ中心部)
プロペラ直径 5.8m 4.9m(プロペラ)
5.85m(ダクト)
重量(アジマス装置を除く) 200トン以上 160トン以下
出典:EB社資料より作成
 
 2004年春には、EB社は既に1.6MWのリム・ドライブ試作機の陸上実験に成功しており、2006年初頭には海上実験が予定されている。続いて5〜10MW程度のリム・ドライブを搭載した実船実験が計画されている。
 
6.3 ロールスロイス:リム・ドライブ・スラスター
 一方、欧州では、主推進器ではないが、2005年11月、ロールスロイス社がリム・ドライブ技術を用いたトンネル・スラスター「RT1600」の実用化を発表した。
 最初の「RT1600」は、現在Aker Yards Soviknesで建造中のノルウェー船主Olympic Ship Ping向けUT712CD型アンカー・ハンドリング船に搭載される。同船の主推進器は、CPプロペラ2基である。また、他のスラスターが、IMOのDP2ダイナミック・ポジショニング基準を満たす。「RT1600」は、後部スケグに設置され、スターン・サイド・スラスターとして機能する。
 リム・スラスターの推進効率は高く、燃料の大幅削減が可能である。特に、ダイナミック・ポジショニング用スラスターは非常に長時間使用されるため、燃料削減だけではなく、環境保護にも寄与する。
 リム・スラスターは取り外し可能であるため、乾ドックの必要がない。
 ロールスロイスは、将来的にはリム・トンネル・スラスターの出力を増大させ、技術を他の推進器にも活用してゆく意向である。
 また、リム技術の一部は、ウィンチや操船システム等他の分野にも転用可能であるとしている。


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