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(ブリッジ等レイアウト、搭載機器)
●ブリッジは、中央がキャプテン席、両側はチーフ・オフィサーとチーフ・エンジニアの席。
 
メイン・ブリッジ・コンソール
 
●ブリッジ・ウィングがなく、離着桟時の操船はブリッジ後方のコンソールでカメラ・モニター3台を見ながら行う。肉眼でも船尾は見えるが、船首と船体側面は全く見えない。
 
離着岸用ブリッジ・コンソール
 
●ブリッジの四方がガラス窓のため、太陽光のぎらつきを防止するフィルム状のローラー・スクリーン(ブラインド)は必需品。英国Solar Solve社製のスクリーンを使用。
●独立したエンジン・コントロール・ルームはなく、チーフ・エンジニアはブリッジからエンジンの駆動、モニタリングを行う。
●エンジン・コントロールはISISシステム。エンジンの写真と各計器の図が表示される。頭上にはエンジン・ルームのカメラ・モニターが設置されている。
●煙突がないため、エンジン・ルームの排気は車両デッキから船外に排出される。
●航海機器システムはINCAT社の選択した米国Sperry系(Litton、Decca)のオリジナルのシステムを使っている。
●ECDISはTransas社のNavi-Sailor。既に旧式化しており、あまり使用していない。来年は同じくNavi-Sailorの新バージョンにアップグレードする予定。
●AISは、Raytheon製でミニマム・ディスプレイを使用。あまり使うことはない。
●当社の高速船は全て暗視装置を装備しているが、本船の暗視装置は故障中。近々、トリマラン「Benchijigua Express」と同じCurrent社のナイト・ナビゲーターに変更する予定。
 
(推進システム関連)
●Rustonエンジンは4機で冗長性が確保されており、2機が故障したときでも、船速は22ノット程度に落ちるが、運航は可能。ラ・ゴメラ島のバースを、次に入港する「Benchijigua Express」用に空けるため、乗客・車両の下船後に沖合で停泊をすることがあるが、その場合は、エンジン2機のみを駆動し、燃料を節約している。
●Lipsウォータージェットは2基(マスターとスレイブ)ずつをタンデム操作している。操船性は良いが、マスターとスレイブを接続する電気系統に時々問題が発生することがある。
 
ウォータージェット:マスター(右)とスレイブ
 
●減揺装置は、Maritime Dynamics/INCAT製のライド・コントロール・システム。トランサムに取り付けられたトリムタブと船首下部のTフォイルを自動制御する。
●しかし、カナリア諸島の海域はゴンドウクジラやイルカが多く、本船のTフォイルはクジラに衝突して破損。現在使用できない状態にある。この海域ではよく発生する事故である。
 
(その他運航、メンテナンス等)
●定期ドックはラ・パルマ島のドックを利用している。
●高速船用の特別な港湾設備は使用していない。高さの調節できるリンクスパンを使用、乗客車両入れ換え作業は効率的に行われ、着桟後15分以内に出航可能。
●湾内で180度旋回し、船尾から着桟。狭い港とバースの位置の関係で、係船に手間取ることがあり、オートムーアリング・システムがあれば、便利で効率的だと思う。
●現在、当航路(テネリフェ島=ラ・ゴメラ島)には、本船と新造トリマラン「Benchijigua Express」2隻が運航している。所要時間は片道約35分。両船とも船速36〜38ノットで運航。
●本船は午後はテネリフェ島とエル・ヒエロ島を往復する。
●テネリフェ=ラ・ゴメラ航路にはFred. Olsen社を含め、3社が参入している。ARMAS社は通常フェリー1隻をシャトル運航、Garajonay Expres社はノルウェーFjellstrand建造の40mカタマラン型高速旅客フェリー(33ノット)を運航しているが、朝は狭いロス・クリスチャノス港で出航が同時になることがあり、また停泊禁止水域に停泊している小型船も多いため、非常に神経を使う。
●ARMAS社の通常フェリーとFred. Olsenの高速船の運賃の差は、乗客で片道1.5ユーロ、乗用車で片道8ユーロ程度。通常フェリーの所要時間は高速船の倍以上の約90分。特にラ・ゴメラ島への日帰り観光客、及び高速貨物輸送トラックには当社高速船の人気が高い。
●本船の1日のディーゼル・オイル消費量は1時間当たり約4,000リットル、1日の消費量は平均約29,000リットル。タンクは180,000リットル貯蔵可能。
●HSCはディーゼル・オイルを使用するため、どうしても運航コストが高くなる。
●船速を少々落としても、重油を使用する大型通常フェリーを運航し、停泊時間を短くして、回転率を高める方が運航コストは抑えられるだろう。


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