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5. 欧州の高速船HSCと搭載機器の実例
5.1 Condor Ferries社「Condor Vitesse」
(企業概要)
 Condor Ferries社は、1963年の水中翼船導入以来、高速フェリー運航に長い実績を持つイングランド南西部プールのフェリー運航会社である。1980年には、英国で初めてノルウェーWestmarin造船所建造のガス・タービン駆動ウォータージェット推進のカタマラン型旅客フェリー「Condor 6」を就航した。
 その後、再び水中翼船運航を続けていたが、1990年に英国Fareham建造のINCAT型アルミ製カタマラン型旅客フェリー「Condor 9」の運航を開始、1993年には、オーストラリアINCAT社の74mカタマラン型貨客フェリー「Condor 10」(3,240GT)を就航した。同船はCondor Ferries社にとって初めての車両も運ぶ高速船で、今でも利用されている。
 高速船需要の高まりに応え、1997年には、同じくINCAT製の86mカタマラン型貨客フェリー姉妹船2隻「Condor Express」及び「Condor Vitesse」を就航し、現在に至っている。
 現在、上記高速カタマラン3隻に加え、貨物輸送中心の通常フェリー2隻が、イングランド南東部プール、ポーツマス、ウェイマス各港と、英領チャネル諸島及びフランス西岸のサンマロ、シェルブールを結ぶ航路に就航している。
 夏季シーズンには、フランスBrittany Ferries社との高速船共同運航を行っているため、船体にはCondor Ferriesに加え、Brittany Ferriesのロゴもある。
 観光客の少ない冬季には、高速船運航は週2日間のみとなっているが、冬場は完全に高速船運航を中止する多くの船社と違い、チャンネル諸島住民の足となっているため、便数は減らしてもサービスは継続するという経営方針を持っている。
 Condor Ferriesは、ウェイマスの街で2番目に大きい雇用主であり、地元の若者のトレーニングや雇用に積極的である。
 
Condor Ferries社運航航路
出典:Condor Ferries
 
「Condor Vitesse」の要目概要
出典:DNV、Condor Ferries
 
「Condor Vitesse」(コンドル・ヴィテス)
出典:Condor Ferries
 
 2005年11月現在、「Condor Vitesse」は内装工事(カフェテリアとショップの拡張)と定期サーベイのため、約1ヶ月間ウェイマス港に停泊中。その間は姉妹船「Condor Express」のみが週2日間運航。キャプテンの同船に関するコメント概要は以下の通り。
 
(全般)
●本船は当社がINCAT社に新造発注した姉妹船「Condor Express」と同一仕様のカタマラン貨客船である。INCAT社が注文主なく投機建造した船舶だが、当社のニーズに合っていたのでそのまま入手した。
●通常、造船所が船主に搭載機器の希望を聞くことが多いが、INCAT社の場合、シリーズ船数隻の搭載機器は特定メーカーと一括契約しているらしく、船主の好みや希望は反映されていない、いわば既製品である。


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