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欧州における高速船搭載機器に関する動向調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力
 団体名 日本舶用工業会  


4.3 特殊航海機器
4.3.1 高速船用暗視装置
 高速船HSCに搭載が要求される特殊航海機器としては暗視装置(ナイト・ビジョン)がある。IMOのHSCコードでは、第13章10節「ナイト・ビジョン」で、「必要である場合はナイト・ビジョンを備える」としている。同規制には現在のところ法的拘束力はないが、今後規制強化の動きも考えられる。
 IMO決議MSC.94(72)に従い、既にナイト・ビジョンの性能基準はIS 016273:2003に定められており、24時間水中にある幅1m、高さ0.5mの黒い物体を識別する性能が要求されている。IMO規制では、高速船に搭載されるナイト・ビジョンの技術方式(赤外線型、微光増幅型、FLIR型等)の指定はしていない。
 暗視装置は1960年代にアメリカ軍が開発に着手し、それが80年代になって赤外線で熱エネルギーを捕らえる小型で廉価な装置に発展をした。そして、90年の湾岸戦争で実際に使われ、成果を上げている。その後、赤外線暗視装置は軍事用だけでなく、民生用としても活躍の場を広げ、米国では警察の捜査、火災現場や海難事故での人命救助に使われている。また、一般乗用車でもナイト・ビジョンを搭載したモデルが既に発売されている。
 旅客フェリーの夜間航行の安全のために、ナイト・ビジョンが使われたのは1980年代の始めに香港で使用されたのが世界初である。香港海事局は、高速船のナイト・ビジョンの性能基準を世界に先がけて作り、世界中がそれを参考にしているのが現状である。2000年6月にIMOの海上安全委員会が作成した高速船用ナイト・ビジョン性能標準の一部にも、香港仕様が取り入れられている。しかし、現在世界で就航している高速船で、ナイト・ビジョンを取り付けているのは1割にしか満たないといわれている。
 ナイト・ビジョンで識別出来る距離は、物体の大きさ、海象その他の環境条件によって異なるが、通常500〜1,000mと言われている。IMOの性能標準では小型無照明ボート、浮いた木材、ドラム缶、ブイやクジラ等の海中生物を海上危険物としている。
 香港規則では、日没後30分から日の出前30分の間、25ノット以上で航走する高速船には必ずナイト・ビジョンを装備しなければならない、としている。
 香港地区では約100システムのナイト・ビジョンが稼動しているが、同地区で承認されているシステムは英国Vistar社のものとボーイングVASシステムのみである。前述したように世界中の高速船の1割にしかナイト・ビジョンが装備されていないということは、ナイト・ビジョンに対する認識の低さと価格的な問題を物語っている。
 世界中でナイト・ビジョンを強制化しようと言う動きはあるが、なかなか実現しない。2000年のHSCコード改正の時も、ドイツが「旗国政府が不必要と認める場合以外はナイト・ビジョンを備える」と提案したが、強制化はされなかった。
 ナイト・ビジョン強制化には、解決すべき問題が沢山ある。装備を強制する速力の限界、ナイト・ビジョンの視認能力、視認能力テスト時の対象物、ナイト・ビジョン使用時の乗組員の配置・訓練等である。例えば、英国海事当局は、悪天候時のナイト・ビジョンの性能、ナイト・ビジョン使用時の操船への障害、ナイト・ビジョン専門当直の配置等を問題として挙げている。
 
 IMOによる高速船への暗視装置搭載の義務化に先駆け、欧米では数社が舶用ナイト・ビジョンを市場化している。その例として、以下に2社を挙げる。
 
4.3.1.1 Current Coproration(カナダ)
 1986年設立のカナダのCurrent Corporationは、暗視装置、サーチライト等の安全装置専門メーカーである。同社の「Night NavigatorTM8540」は、2005年にノルウェー船級協会DNVの型式承認を取得した唯一の高速船用暗視装置である。
 同社のNight Navigatorは、既に香港、ギリシャ、中国、フランス、ノルウェー、ドイツ各国で型式承認されており、DNVによる同製品の性能検査は香港で行われた。
 
 同製品の特徴は以下の通り。
●ゲート・イメージ・インテンシファイド・カメラと赤外線高速レンズを組み合わせたナイト・ビジョン・システム。
●暗闇で船舶の2,000m前方まで可視。
●夜間航海中にクリアで増強された水面イメージを提供。
●世界の高速フェリー、艦艇、保安船、豪華メガ・ヨット、沿岸讐備システムに搭載。
 
Night Navigator 8540
出典:Current Corporation
 
Night Navigator設置図:
Fred. Olsen「Benchijigua Express」
出典:Current Corporation
 
4.3.1.2 Vistar Night Vision
 英国Vistar Night Vision社は、1979年にMclennan Marine Limitedとして設立された小規模な民間企業で、ナイト・ビジョンの開発・製造に特化している。1998年に、社名を現在の「Vistar Night Vision」に変更した。
 同社のナイト・ビジョン装置「Vistar 223」は、暗視装置搭載が義務化された香港の高速フェリー向けに開発され、1982年以来、同地域で特に広く採用されている。舶用暗視装置としては、現在世界で150例以上の採用実績を誇る。商船以外でも、米国海軍、港湾当局、車両等に採用されている。
 2002年には、IMOによる高速船への暗視装置義務化以前にナイト・ビジョン分野への進出を図る米国の大手航海機器メーカーSperry Marine社と技術・販売提携し、製品の共同開発を行うとともに、Sperryブランドでも同社製ナイト・ビジョンの販売を開始した。既に、オーストラリアのSperry Marineディーラーが、同社レーダーとのパッケージで、香港の高速フェリーへの販売に成功している。
 
「Vistar 223」の特徴は以下の通り。
●低ライフ・コスト:多くの部品は10年間以上交換の必要なし。
●わかりやすいディスプレイ。
●性能基準を満たす他社製品よりも低価格。
●安全航行を実現。
 
4.4 陸上支援・港湾設備
 海上輸送の高速化には、船舶そのものスピードの高速化だけではなく、付随する着岸・着桟作業、荷役作業等の港湾設備及び陸上支援体制の効率化が不可欠である。
 また、環境保全に積極的な諸国では、高速化による燃料消費量増大=環境汚染よりも、両頭型フェリー等の船型の改良や運航に付随する作業の効率化による全体的な運航所要時間の短縮を選ぶ動きも出始めており、それに伴い船舶を受け入れる側の港湾設備の合理化が求められている。以下にその例を概説する。
 
4.4.1 荷役作業の効率化
 EUでは、将来的な超高速貨物コンテナ輸送を視野に入れた研究開発プロジェクト「INTEGRATION」を実施している。以下にその概要を述べる。
 
(INTEGRAT10Nプロジェクト)
 欧州委員会助成のINTEGRATION(Integration of sea land technologies for an efficient door-to-door intermodal transport: 効率的ドア・ツー・ドア複合輸送手段のための陸・海上輸送技術の統合)プロジェクトの目的は、船舶の荷役作業全体を最適化することにより、輸送手段の経済化を図ることで、ショートシーシッピング(短距離海上輸送)を欧州域内の運輸業者にとって魅力のある手段にすることである。同プロジェクトの予算総額は1,000万ユーロで、実施機関は3年間、欧州13各国から25企業・組織が参加した。プロジェクト・コーディネーターは、イタリアFincantieri Group内の研究機関Cetenaが担当。
 プロジェクト期間の半ばに当る2004年の成果は、コンテナその他貨物のRORO船への搬入・搬出を大幅に合理化するAGV(Automatic Guided Vehicle)装置の開発、AGV装置に適したRORO及びROPAX船の設計等であった。同装置は1時間当たり500TEUという高速の貨物取扱い能力を持ち、貨物の均一化、搬入・搬出所要時間の短縮、バースの待ち時間の短縮という海上輸送効率化に寄与するものである。
 INTEGRATIONプロジェクトは、同プロジェクトにおける試算によれば、通常のLOLOターミナルで、1ヘクタール当たりの貨物処理能力が年間平均20,000〜25,000TEUであるのに比べ、INTEGRATIONシステムに基づく自動化されたターミナルでは、年間35,000TEUの処理能力を持つと予測されている。
 同プロジェクトの造船関連分野では、Fincantieri、Cetena、Navantia(旧IZAR)が、AGVシステムが使用可能なRORO船及びROPAX船の設計を担当した。設計された複数のRORO船の例は、自動化された荷役装置を使用するという共通前提のもと、将来的な超高速貨物船によるコンテナ輸送も想定し、速度10〜55ノット、積載能力80〜1,500TEUという多様なもので、全ターミナルと航路の要求を満たしている。
 設計された船種のうち最大級のコンテナ船は、15,000TEU、船速20〜21ノットのフィーダー・コンテナ航路向け(inter-regional and feedering services)のスタンダード・コンテナ船で、船尾ランプを持つ同INTEGRATIONコンテナ船の荷役所要時間は、完全に自動化されたAGVシステムを使用するROROターミナルの場合、約6時間となる。


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