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欧州における高速船搭載機器に関する動向調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力
 団体名 日本舶用工業会  


4.2 航海関連機器
 HSCコードでは、高速船の航海関連機器として、下表に示す型式承認済みの航海機器の搭載を義務付け、または搭載を推奨している。下表は英国海事・沿岸警備庁(MCGA)の例で、IMO諸条約及び欧州海事指令(MED)との整合性を持っている。
 
表:高速船搭載機器と関連IMO決議及び欧州基準
Standard for Navigational equipment:
Equipment IMO
RESOLUTION
EUROPEAN
STANDARD
Magnetic Compass (Steering) A.382(X) BS MS 2 Part2: 1969
Gyro Compass A.821(19) BS EN ISO 8728: 1995
Marine Transmitting Magnetic Heading
Devices (TMHDs) & including
electromagnetic (Fluxgate) Compasses
MSC.86(70)
annex 2
Radar A.820(19) BS EN 60936: 1993
Echo Sounder A.224(VII)as amended.
MSC.74(69)
annex 2
BS EN ISO 9875: 1995
Speed and Distance Measuring Equipment A.824(19)as amended MSC.96(72) BS EN 61023: 1993
Automatic Radar Plotting Aid (ARPA) A.823(19) BS EN 60872: 1993
Rate of Turn Indicator A.526(13)
Automatic Steering Aids (Automatic Pilots) A.342(IX) and A.822(19)
Loran-C and Chayka Receivers A.818(19) BS EN 61075: 1993
Global Positioning System (GPS) Receiver Equipment A.819(19)
GLONASS Receiver Equipment MSC.53(66)
DGPS and DGLONASS Maritime Radio Beacon Receiver Equipment MSC.64(67)
annex 2
Combined GPS/GLONASS Receiver Equipment MSC.74(69)
annex 1
Night Vision Equipment for HSC MSC.94(72)
Daylight Signalling Lamps MSC.94(72)
Automatic Identification System Res.A.917(22)
Voyage Data Recorder A861(20)
出典:MCGA5
5 http://www.mcga.gov.uk/c4mca/ssb_hsc2000_ch13.pdf
 
 いくつかの例外を除き、航海機器の種類としては、SOLAS条約を遵守する通常の旅客船の搭載機器と大差はないことがわかる。
 従来船とは仕様の異なる主な高速船用航海機器の例としては、HSCコード適用航海用レーダーとジャイロコンパスが挙げられる。
 HSCコードの規定では、高速船HSCへの搭載が可能なレーダーは、アンテナ回転数が40rpm(=相対風速100ノットで1分間に40回転)以上であることが要求されている。航海機器システムの各メーカーは、HSC対応のレーダーとジャイロコンパスを製品ラインアップに加えているが、高速船用の航海機器システムとして特別仕様で販売している例は少ない。
 
4.2.1 IBS/INS
 IBS(Integrated Bridge System: 統合ブリッジ・システム)は、航海、機関、通信、荷役、保安、船内管理など船橋におけるあらゆる機能を統合したシステムである。
 INS(Integrated Navigation System: 統合航法システム)は、その航海部分の機能のみを統合したシステムであり、ブリッジのスペースに制約がある高速船には特に適している。欧州で就航している高速船HSCにも搭載されている場合が多い。
 INS/IBSは、従来ブリッジで使用されているモジュール機器の機能を統合し、船橋内の作業を効率化すると同時に、モジュールとしての機能以上に付加価値のある総合的なシステムを構築するものである。
 高速船の狭いブリッジにはコンソール型の統合航海システムが使用される。主要航海機器メーカーはそれぞれINS/IBSを製品化しており、前述したように特別な高速船向けシステムという仕様はないが、高速船へのシステム採用例は多い。
 
INS/IBS基本構成機器(航法関連)
●ECDIS
●レーダー
●VDR
●AIS
●ジャイロコンパス
●オートパイロット
●ドップラー・スピードログ
●エコーサウンダー
●GPS/DGPS
●GMDSS通信ステーション
●衛星通信ターミナル
 
4.2.1.1 SAM Electronics GmbH
 ドイツの大手航海機器メーカーSAM Electronicsは、1985年以来、INS NACOS(Navigation and Command System)シリーズでINS業界をリードしており、現在のシリーズは、第5世代NACOSである。同社発表では、NACOSシリーズは、既に900システム以上の販売実績がある。
 同社の担当者によると、高速船搭載の場合は、回転数が46/56rpm(通常は23/28rpm)のHSC用レーダーを使用すれば、システムは高速船対応となるため、特別なHSC仕様のIBS/INSはないとのことである。
 
NACOSシステムの構成機器及び特徴
●RADARPILOT: レーダーとオートパイロット機能を統合。
●CHARTPILOT: 型式承認済みECDIS。1基、またはバックアップを含めた2基搭載が可能。コンソール型とデスクトップ型。
●MULTIPILOT: ARPAレーダー、ECDIS、コニング情報、操舵機能の全表示、コマンドを完全統合。
●TRACKPILOT: 船位、進行方向、速度情報を受信し、最適ラダーアングルを計算。
●CONNINGPILOT: 航海情報の中央表示装置。MULTIPILOT及びCHARTPILOT上でも同様の表示が可能。
●SPEEDPILOT: 自動速度制御装置。到着予定時刻に合わせて航路の一部または全部の航行速度を設定。オプション。
●レーダー、チャート、操舵状況を常に表示。
●レーダー画面上でのインタラクティブ操作。
●多様な航路計画機能。
●BAS/WAS 40M: アラーム集中管理機能。テキスト・メッセージ表示。
●AIS、VDR機能。
●通信ネットワーク:CAN(Controller Area Network)、及びEthernet-LANを使用。
 
SAM Electornics NACOSシリーズのシステム仕様
シリーズ名 ナビゲーション・コンソール、ワークステーション デスクトッブ
機能 サーベイランス
レーダー、TM-X
コニング ナビゲーション
レーダーARPA-S
ナビゲーション
チャートモニター
プランニング
ECDIS
15-5 RADARPILOT RADARPILOT
25-5 RADARPILOT CONNINGPILOT RADARPILOT CHARTPILOT
34-5 RADARPILOT RADARPILOT CHARTPILOT CHARTPILOT
35-5 RADARPILOT CONNINGPILOT RADARPILOT CHARTPILOT CHARTPILOT
45-5 RADARPILOT CONNINGPILOT RADARPILOT MULTIPILOT CHARTPILOT
54-5 RADARPILOT MULTIPILOT CHARTPILOT
55-5 RADARPILOT CONNINGPlLOT MULTIPILOT CHARTPILOT
64-5 RADARPILOT MULTIPILOT CHARTPILOT
65-4 MULTIPILOT CONNINGPILOT MULTIPILOT CHARTPILOT
出典:SAM Electronics資料より作成。
 
4.2.2 ECDIS
 今後、高速船に搭載が義務化される可能性の高い航海機器としては、ECDISがある。ECDIS(Electronic Chart Display and Information System: 電子海図情報表示装置)は、ENC(電子海図)に含まれる海図情報を、他の水路・航海情報及びGPS等の船位情報・レーダー情報とともにリアルタイムで重畳してグラフィック表示し、航路選択を安全にかつ容易に行うことができるシステムである。
 前述のように、ノルウェーを始めとする北欧諸国の主張により、IMOがECDISの搭載を検討している。
 ノルウェー政府は、1999年11月、ECDISを搭載していない高速船「Sleipner」が暗礁に衝突し、沈没した事故の原因調査の結果、ノルウェー海域の電子海図化を加速した。政府の事故調査委員会は、海図の電子化が完了した時点での高速船へのECDIS搭載義務化を提案している。
 また、バルト海沿岸諸国は独自にECDIS搭載を促進している。この動きは、国際協調によりバルト海の環境汚染を阻止する目的で設立されたヘルシンキ委員会(Helcom)が主導し、参加国及び組織は、バルト海沿岸諸国、即ちデンマーク、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ロシア、及び国際組織としての欧州連合(EU)である。
 ヘルシンキ委員会は、2001年9月のバルト海の航行安全に関するコペンハーゲン宣言で、特に環境に害を及ぼす恐れのある船舶に対してECDIS搭載を勧告し、各国政府に対しては、2002年末までに主要航路、主要港の、2004年末までにそれ以外の航路と港の電子海図を整備するよう促した。
 また、米国海軍も2005年、ECDISを全艦艇に搭載する計画を発表している。
 
 ECDISには、電子海図情報表示装置としての基本機能以外にも、他のソフトウェア・アプリケーション、及びAIS、レーダー等の航海機器からの情報をひとつの画面上に表示が可能である。これがECDISの最も大きな特徴あり、利点でもある。他のシステム機器と組み合わせることにより、総合的な航路計画、管理、制御システムとしての威力を発揮する。
 しかし、ECDISの普及は遅れている。その原因は、船社の多くが未だECDISを単なる電子海図表示装置としか考えていないことだ。しかし、SOLAS条約により、多くの船舶にAIS搭載が義務付けられたため、AISとECDISを組み合わせたシステムの利用は、今後も着実に増えると予想される。
 
ECDISの基本構成要素
●コンピューター・プロセッサー
●デジタル・データベース(電子海図データ)
●センサーからの航行情報インプット(GPS、Loran-C、ジャイロコンパス、AIS、レーダー、ARPA等)
●カラー・デイスプレイ
 
ECDISの主な利点
●船舶の位置がディスプレイ上でリアルタイムに確認できるため、衝突回避ルートの選択が容易になり、航行安全に寄与する。統計によれば、ナビゲーション関連事故の80%はECDISの使用により回避できる。また、座礁の確率は30分の1に減少する。ECDISがあれば回避できた座礁事故による直接損害は、1年で57,142マルク(1999年当時)と見積もられている。6
●AISと組み合わせることにより、強力な総合的な航行ツールとして機能する。AISの情報は、性能標準で定められている小型の「Minimum Keyboard Display」ではなくECDIS上に表示されてこそ威力を発揮する。
●ECDISを中心にしたINSを構築することも可能である。
●最適航行ルートの決定に要する時間が50〜60%短縮できる。
●最適ルートの選択により、1〜1.5%の燃料費が節約できる。AP Möllerのレポート(2000年)によれば、同社のECDIS搭載船は非搭載船よりも、燃料コストが年間平均126,630ドル低かった。
●海図のアップデートに要する時間が紙海図の場合の10分の1に短縮され、人件費が節約できる。
●同一機種または互換性のあるECDIS機種を使う船舶同士で航海データを交換することができる。
●レーダー、目視による追加情報のファイルを加えることが可能。
●気象情報、潮流、氷山、流氷情報等の他のソフトウェアからの情報の追加表示が可能。
●将来的には、ECDIS搭載船の保険料を軽減することも提案されている。
 
6 ブレーメン大学(ドイツ)の調査による。
 
(AISとECDISのシステム統合)
 AISと異なり、ECDISはIMO規制で搭載が義務付けられていない。AISと比較してもECDISは高価であるため、搭載義務のないECDISへの追加投資をためらう船社が多いが、AIS情報はECDIS上でのディスプレイが可能であり、両機器の機能を統合することは、船舶の安全航行上に大きな利点がある。
 まず、最低基準として規制で定められているAISのディスプレイは「ミニマム・キーボード・ディスプレイ(MKD)」で、目標物の方位、距離、名前のみの表示で、グラフィック・インターフェイスは完全にオプションである。グラフイック・デイスプレイ機能を持つAISの場合でも、モノクロ表示が多く、ECDISやARPA(Automatic Radar Plotting Aid)に比べると見易さや機能性が劣る。一方、ECDISのディスプレイはMKDよりもサイズの大きい明確なカラー・グラフィックで、接近した複数のターゲットの認識を電子海図上でクリアに行うことができる。
 また、ECDISは常にAISターゲットをCOG(対地針路)とジャイロコンパスの2つのベクトルで表示するため、正確性の高い位置確認が可能である。
 さらに、ECDISではユーザーがNorth-Up、Head-Up、Course-Upの中から好みのディスプレイ方法を選択でき、利便性が高い。ECDISではAISに加え、ARPA及びレーダーからの情報の同時表示も可能で、総合的航海ツールとなり得る。
 このように、統合されたAISとECDISシステムは、航海士にとってより効率的で操作のしやすいツールであり、今後の高速船の航海システムの主流となってゆくことが予想される。
 
4.2.2.1 SIMRAD(Kongsberg)
 例えば、ノルウェーの大手航海機器メーカーKongsbergの子会社SIMRADは、HSC向け航海機器システムとして、ECDISを中心とした以下の仕様を提案している。
●CS68 ナビゲーション・システム
●ECDIS マリン・コンピューター
●RA90 レーダー・システム
●GC85 ジャイロコンパス
●A180 AISシステム
●GN33 GPSシステム
●AP9MK3 オートパイロット・システム
 
 SIMRADは、1985年に最初のECDISのプロトタイプをノルウェーのNorwegian Hydrographic Instituteと共同開発して以来、電子海図表示システムの開発と改良を続けてきた。
 上記システムの中心となるのは、新ECDISである。2005年に発表したCS68 ECDISは、「PLECDISTM = Paper Less ECDIS」という新たな発想で型式承認を得ている。冗長性が完全確保されている同ECDISを搭載すれば、SOLAS条約で要求されている紙海図の携帯、またはもう一台のECDISの搭載義務がなくなるというのが最大の特徴である。
 これにより、コストが削減できるだけではなく、紙海図の更新という面倒な作業もなくなり、効率が向上する。特に、スペースの限られている高速船のブリッジでは、紙海図の設置が必要なくなり、スペースの有効利用が可能となる。
 SIMRAD社のECDISは専用ハードウェアMC50をべースとし、専用ソフトを完備していることも特徴である。ECDIS用の電子海図の更新は自動的に行われ、常に最新の海図を用いるこにより、航海安全性が向上するとしている。


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