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欧州における高速船搭載機器に関する動向調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力
 団体名 日本舶用工業会  


1. 欧州高速船市場の現状
1.1 概要
 高速フェリーは、一般旅客輸送では乗用車、バス、鉄道等の陸上交通の有効な代替手段となることに加え、陸路による移動が困難または不可能な島や地域の場合、高速という利点を活用し、短距離航空路と競合している航路の例もある。
 欧州連合(EU)は、拡大する欧州域の道路の混雑緩和と環境改善を目的とし、交通・輸送手段を自動車、飛行機から鉄道、船に移行するモーダルシフトを提案している。特に海と河川は輸送経路としてまだ十分に活用されていないとされており、今後、海上交通を発展させるため、他の輸送モードに対する競争力強化が図られるものと期待される。
 貨物輪送に関しては、欧州では一般フェリーや貨物船によるトラックやトレーラー輸送については既に広く利用されている。高速フェリーを利用すれば、輸送時間の短縮が可能となり競争力が増すため、今後貨物輸送でも高速船の利用が増えることが予想される。また、近年の船体デザインと推進システムの技術進歩により、高速貨客フェリーの競争力は実質的に増していると考えられる。
 
1.2 欧州高速船運航実績
 スウェーデンShipPax社の調べによると、欧州域では、2004年8月現在、530隻以上の高速旅客・貨客船(25ノット以上)が運航している。世界全体で見ると、約1,500隻が運航しており、欧州船は世界の約3分の1を占める。(注:本調査では、基本的に欧州系船社の運航する商船を「欧州船」とする)日本で運航されている高速船は約140隻である。
 一方、旅客船に限らず、全船種で見た場合には、過去10年間に欧州系船社が発注した船速24ノット以上の新造船は、600隻近くに上り、欧州で船隊の近代化と高速化が進んでいることがわかる。
欧州:高速船(24ノット以上)の船種別隻数
(1995年以降の竣工実績)
船種 隻数
24kt以上
30kt未満
30kt以上
コンテナ船 370 0 370
旅客船:単胴船(モノハル) フェリー 69 36 105
クルーズ船 3 0 3
多胴船(マルチハル) フェリー 11 91 102
オフショア船 2 0 2
自動車運搬船 2 0 2
原油タンカー 1 0 1
パトロール船 0 3 3
調査船 1 0 1
合計 459 130 589
出典:Lloyd's Fairplay資料より作成。2005年7月現在。
注:1995年1月1日以降竣工の新造船。建造予定を含む。
 
 24ノツト以上30ノット未満の商船では、大型化、高速化しているコンテナ船が圧倒的に多い。また、大型クルーズ客船の多くと、通常船型、即ち単胴船の大型高速フェリーも同様にこのカテゴリーに入る。
 30ノット以上では、双胴船(カタマラン)の旅客船または貨客船が多く、新造HSCの船型としては、ジェットフォイルやハイドロフォイルよりも、双胴船型が採用されることが多い。
 本調査で対象とする船舶のうち、HSCコードが適応される場合が多いと考えられる30ノット以上の船舶は130隻である。全世界で運航されている過去10年間に竣工した30ノット以上の船舶数が約300隻であることを考えると、欧州地域には世界の半数近くの比較的新しい高速船が集中していることがわかる。
 
全世界:高速船(30ノット以上)地域別運航隻数
地域 隻数
欧州 130
アジア 78
北米 34
中南米 23
オーストラリア 6
中近東 5
その他・不明 24
合計 300
出典:Lloyd's Fairplay資料より作成。2005年7月現在。
注:1995年1月1日以降竣工の新造船。建造予定を含む。
 
高速船(30ノット以上)の年度別竣工隻数
竣工年 欧州 その他 全世界
1995 9 27 36
1996 22 17 39
1997 20 20 40
1998 16 14 30
1999 14 25 39
2000 17 11 28
2001 8 14 22
2002 4 12 16
2003 8 7 15
2004 5 10 15
2005 7 9 16
2006以降 0 4 4
合計 130 170 300
出典:Lloyd's Fairplay資料より作成。2005年7月現在。
注:1995年1月1日以降竣工の新造船。建造予定を含む。
 
1.3 高速船普及の背景、経緯
1.3.1 地理的要因
 トルコ、ロシアを含めた欧州地域諸国のほとんどは海に面しており、本土と島を結ぶ国内航路以外に、国境を越えた国際航路が多いことが特徴である。各国の船社は、国内及び国際定期航路で、通常フェリーに加え、高速フェリーの運航を行っている。
 
 下表の国別高速船運航実績を見た場合、欧州地域及び各国の地理的要因が高速船普及に大きく影響していることがわかる。特に、近年、欧州では地中海域を定期運航するフェリーの高速化が顕著である。
 しかし、ほとんどの高速フェリーは季節運航で、観光客等の利用客が少ない11〜3月は完全運休、または便数を大幅に減らす場合が多い。その間は通常フェリーのみの運航となる。
 
全世界:高速船(30ノット以上)運航船社の国別内訳
国名 隻数
米国 26
香港 25
ギリシャ 23
イタリア 15
ノルウェー 15
英国 15
トルコ 13
日本 11
スペイン 11
フランス 10
韓国 9
シンガポール 9
カナダ 8
グアドループ(仏領) 8
中国 7
インドネシア 7
オーストラリア 6
エストニア 6
デンマーク 5
フィリピン 5
ドイツ 4
その他・不明 62
合計 300
出典:Lloyd's Fairplay資料より作成。2005年7月現在。
注:1995年1月1日以降竣工の新造船。建造予定を含む。
 
【ギリシャ】
 国の大部分が大小様々な島から構成されるギリシャでは、本土と島、または離島同士を結ぶフェリー輸送は地域住民の生活に不可欠な交通手段である。また、特に夏のホリデーシーズンには、ギリシャ本土及び欧州各国からの観光客の足としてもフェリーが広く利用されている。
 就航している高速船は、短距離航路では双胴船等のHSC、中・長距離航路では輸送能力の高い大型高速フェリーが多いが、HSCも増えつつある。
 1990年代後半から2000年代初頭にかけて発生した船舶の老朽化に起因する一連の事故の影響もあり、ギリシャでは旅客船の新旧交代が進行中である。フェリー会社の民営化による競争激化も旅客船の近代化、大型化、高速化を促している。
 このような状況で、2000年以降、本土ピレウス港と、最南端に位置するギリシャ最大の島であるクレタ島を結ぶ航路に参入している大手船社3社が、競って新造大型高速フェリーを投入した。これらの大型高速フェリーは、船型は通常の単胴船であるが、中速ディーゼル・エンジン4機でプロペラ2基を駆動し、速力は約30ノットである。従来所要時間が11時間であった同航路を6時間で結び、運賃(料金)と移動時間を考慮すれば飛行機とも十分対抗できる速力を実現している。
 さらに2005年夏には、ピレウス=ハニア(クレタ島)航路にHellenic Seaways社の新造HSC「Highspeed 5」が就航し、所要時間を4.5時間に短縮し、高速化に拍車をかけている。
 
【イタリア、フランス】
 イタリアでは、本土とサルデニア島を結ぶ国内路線、及びアドリア海沿岸諸国との国際航路等に通常船と高速フェリーを併用している。
 フランスでも状況は似ており、本土とコルシカ島を結ぶ国内航路、及びイギリス海峡の短距離国際航路に、大量輸送用の通常船型の大型高速フェリーと、双胴型の高速船の両方を投入している。乗客は、車の有無、料金、所用時間等に合わせて、利用する船を選ぶことができることが特徴である。
 
【スペイン】
 スペインでは本土と地中海の島々を結ぶ航路以外に、大西洋に浮かぶカナリア諸島の島と島の間を結ぶ航路の高速化が顕著である。
 カナリア諸島で高速フェリーのみを運航するノルウェー系船社のFred. Olsen社は、従来の双胴船のフリートに加え、2005年5月には世界初の超大型トリマランを投入した。
 
【英国】
 英国では、英国と欧州大陸を結ぶ英仏海峡国際航路、及び英国とアイルランドを結ぶ国際航路に多数のフェリーが投入されている。
 英国と欧州大陸、特に最短距離の英国とフランス北部間のフェリー輸送には、複数の航路に英仏数船社数社が参入し、飛行機及びユーロトンネル(超高速国際列車ユーロスター及び自動車の鉄道輸送)と競合している。2005年11月にドーバーとカレーを結ぶ高速船2隻を運航していたHoverspeed社が冬季運休を早め、事業撤退騒動を引き起こしたことは、競合状況の激しさを物語っている。Hoverspeedのサービス再開のめどは立っていない。
 大型長距離トラック、大型長距離バスは所要時間約90分の通常フェリーを利用することが多いが、小型トラック、乗用車、または乗用車を持たない乗客は所要時間50分の双胴船高速フェリーを選ぶこともできる。
 英国・アイルランド間も状況は同様で、両国の船社数社が、いくつかの航路で通常船及び高速船によるフェリー輸送で競合している。
 また、内陸部では、Thames Clippers社がロンドン地区のテムズ河で、通勤客、観光客向けの小型・中型高速船7隻(速力25〜32ノット)を運航している。
 下表は現在英国海域で運航されているHSC一覧である。(注:Hoverspeed社を含む)
 
表:英国海域のHSC運航実績(2004年11月1日現在)
船名 船型 長さ(m) 乗客/車両数 最高速度
(ノット)
イギリス海峡・ドーバー海峡
Condor 10 WPC 75 574 35
Condor Express WPC 86 775/200 40
Condor Vitesse WPC 86 800/200 40
Diamant WPC 81 654/150 37
Seacat Scotland WPC 74 450/85 35
Stena Discovery SWATH 120 1500/360 40
Speed One WPC 86 570 40
Emeraude GB WPC 74 430 35
Portsmouth Express WPC 82 800/175 38
イングランド西海岸、ウェールズ、スコットランド、アイルランド
GH 2133 Hover 12.7 12 35
Adamant SWATH 30.7 40 28
SuperSeaCat I Mono 100 783/170 38
Jonathan Swift SWATH 87 768/200 40
SeCat Isle of Man WPC 74 516/85 35
Stena Lynx III/Elite WPC 81 627/84 37
Stena Explorer SWATH 120 1500/360 40
Stena Voyager SWATH 120 1500/360 40
SuperSeaCat II Mono 100 782/170 38
SuperSeaCat III Mono 100 782/170 38
ワイト島
Our Lady Patricia/Our Lady Pamela Cat 30 440 31
Fastcat Shanklin Cat 30 361 30
Fastcat Ryde Cat 31.5 361 34
Red Jet I/Red Jet II Cat 31.5 138 34
Red Jet III Cat 32.9 190 33
Red Jet IV Cat 39 190 35
Double O Seven/Freedom 90/Idun Viking Hover 24.4 98 45
Island Express Hover 30 98
ドック・修繕中
SeaCat France WPC 74 450/85 35
Shearwater 5 HF 22 67 35
出典:英国Marine and Coast Guard Agency
凡例:
Cat = カタマラン(双胴船)
HF = ハイドロフォイル(水中翼船)
Hover = ホーバークラフト
Mono = モノハル(単胴船)
SWATH = Small Water plane Area Twin Hull
WPC = 波浪貫通型カタマラン(ウェーブピアサー)
 
【ノルウェー】
 ノルウェー西海岸は山が多く、複雑に入り組んだフィヨルド地形のため、高速船を使用した場合、陸路よりも海上輸送が短時間で効率的であるという地理的要因がある。
 また、ノルウェーは、自国で建造した小型・中型高速船を多く使用していることも特徴である。
 2005年11月には、北欧海域でクルーズ・フェリーを運航する大手船社Color Lineが、「Superspeed」と称する大型高速貨客フェリー2隻(全長211m、乗客1,800人)をAker Yardsに発注した。船速等の詳細は明らかにされていないが、革新的なデザインで、2007年7月と2008年4月にそれぞれ竣工予定である。両船は、ノルウェーとデンマークを結ぶ国際航路に投入され、ノルウェーから欧州大陸への航海所要時間を短縮する。
 一方、ノルウェーでは、燃料節約と環境保護、及び荷役作業の効率化を目指し、高速船に代えて、天然ガス駆動の両頭船型中速フェリーを導入する等、効率化のため速力を減じる新たな興味深い動きもある。
 
【トルコ】
 トルコでは、イスタンブール公営船社IDOが、イスタンブールとマルマラ海沿岸の諸都市を結ぶ航路で高速貨客フェリー6隻含む75隻を運航している。IDOは、1990年代後半に双胴船を次々に導入し、トルコの高速船輸送市場を独占している。陸路では数百キロに及ぶ距離を、高速船により直線で結ぶという、地理的要因に迫られたモーダルシフトの好例であるといえよう。
 
【フィンランド、エストニア】
 バルト海沿岸では、近年ヘルシンキ(フィンランド)と2004年にEU(欧州連合)に加盟した対岸エストニアの首都タリンを結ぶ中距離国際航路の競争が激化しており、両国の船社とも輸送の高速化を図っている。
 統計によると、2004年にヘルシンキ港を利用した旅客数は870万人で、そのうち69%がヘルシンキ―タリン間フェリーの旅客である。また、同航路の旅客の40%は高速船を利用している。


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