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インタビュー
◎修復に携わって
住むのでなく集まるのでいいんじゃない。
山下 龍さん
やました・りゅう
家具職人
1976年愛媛県生まれ
高校卒業後、岐阜県高山市の専門学校にて木工芸を専攻。卒業後、茨城県の家具製作会社に就職、家具職人となる。
2004年11月に山梨県北杜市須玉町津金地区に移住。古家を改修しながら、工房設立準備をはじめ、2006年3月より、工房「Ryuz」開始。
 
 家具工房を作ろうと空家と倉庫を探し、世田谷の建築士から津金を紹介していただきました。きてもう2年になります。工房が最近完成し忙しくしています。家具は古材にこだわらずいいものをと考えています。ただ古材がいいのは、タイミングによってはうまく手に入るし、色も深く渋く、乾いて軽いのでいいですね。
 
−木工がお仕事ですが、「古民家」を直すことに関わっていくことには抵抗はなかったですか。
 
 高橋さんは、自分の家はお持ちなのでもういらないじゃないですか。それをあえて買って直そうというのですから、私もやらなくてはと思ったので。
 
−「なかや」の修復のワークショップについてご感想を聞かせてください。
 
 「ワークショップ」という言葉は津金に来て初めて知りました。何か出店で売るのかと思っていたのですが、みんなで働くということが新鮮でした。持ちつ持たれつということですか。ただ津金に来て参加するのはいいですが、時間や目的をはっきりしないとお互いに何をやりにきたんだろうとなりますね。
 
−「なかや」のような空家が津金にたくさんありますが、増えることについてどう思いますか。
 
 しようがないと思います。住民として、自分もやらなければいけないことはやりますが、昔からの過疎になるには過疎になるなりの理由がしきたりなどにあるのかもしれません。小さい町ですから、もっとこだわらずにいければいいのにと感じます。空き家は、建物が建っている以上は使ったほうがいいと思います。住んでないとやっぱりだめですね。空き家を貸したがらない理由に、荷物の処分が面倒なのがありますね。片付けるのがひとりでは苦難だったら、ワークショップでみんなで片付けてあげてはどうでしょうか。家の中は片付くし、いらないいいものがあるならもらえるかなあ。(笑)
 
−「なかや」を修復してみて思うことはどんなことですか。
 
 古民家は使いづらいものです。いまお手伝いしている他の古民家を見ても、ほんとに住みにくかっただろうと思います。寒いし、外便所、増築で継ぎ目の木が雨漏りで腐っているし、天井も無理やり貼っているから圧迫感があります。住みにくいから増築を繰り返していって、結局だめだとなって、新築するのです。すでにお金も使ってるし、津金の空き家は大きいから、独りで暮らすのは怖いですよね。「なかや」は、古いものを残したいのならそのままの形を維持できればいいと思います。住むのとは別ということですね。「なかや」は人が集まる場などに活用していきたいのなら、それでいいと思います。
2006年5月23日(インタビュー・文起:吉本)
 


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