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8月11日(木)
本日のスケジュール・内容
1)San-Clemente Rural Health Unit訪問
2)薬局Botica(Balloc Barangay, Doclong 1st Barangay)訪問
 
1)San-Clemente Rural Health Unit訪問
 
 Dr. Elvira C. Lopezから、このRHUという市の保健所の活動内容について説明があった。
 一つのRHUがいくつかのBHSを管轄しており、それぞれのBHSに助産師を週一回のペースで往診させている。Barangayとは集落の最小単位で、一つのBarangayに数千人が生活している。この施設は以前JICAによって建てられたものであり、婦人科室、歯科診療など、設備もそれなりに充実していた。このRHUには一日に25〜30人の患者がくるという。結核の患者さん6名、ハンセン病の患者さん1名、デング熱の患者さん8名など、疾患はさまざまである。JICA実施の保健プロジェクトは3年前に終了し、現在の活動は現地に移行されている。
 
Dr. Lopezの講義
 
2004年度の統計データ
人口:12,089
Barangayの数:12
Barangay Health Stationの数:4
働いている人の数:7(医師、看護師、歯科医、助産師)
受診原因:急性上気道感染、皮膚疾患、外傷が多い。
死因:肺炎、高血圧に伴う心血管系障害の出血、心疾患が多い。なお、自宅で死を迎えるケースが多い。
 
HEALTH PROGRAMS
1. 拡大予防接種計画
 フィリピンでの予防接種実施率は低下しているが、San-Clementeでは重要視しており、実行されている。0歳から1歳児では、BCG、DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)、Oral Polio Vaccine(OPV)、麻疹、B型肝炎ワクチン(有料)が行われ、妊婦に関しては、破傷風毒素のワクチン接種が行われている。
2. 下痢に関する疾患の管理
 とくに0〜59ヶ月の下痢の患者にOral Rehydrating Solution(ORS)を投与する。
 感染症のケースには抗菌薬を投与する。
3. 急性呼吸器疾患の管理
 Target; 0〜59ヶ月の小児。
 肺炎に対しては早期発見と早期治療につとめる。
4. 栄養管理
 Target: 0〜59ヶ月の小児、妊婦、授産期の母。
 鉄分、Vitamin A Capsuleの補充。
5. Maternal Care
分娩前−Home-based Maternal Record(HBMR)をつける。破傷風予防接種。ヘモグロビン測定。
分娩時−危険が伴う場合は病院へ搬送する。
分娩後−助産師が家へ訪問し、授乳を促進する。
6. Under Five Clinic
 Target: 0〜59ヶ月の小児。
 成長記録をつける。ヘモグロビン測定。
7. Family Planning
 ピル、Depo-Provera injection(プロゲステロン作用のある物質の注射)、子宮内避妊用具などの支給を行う。
8. National Tuberculosis Program
 疾患が疑われる場合、痰の検査を行う。陽性患者には6ヶ月間薬を投与する。
9. Leprosy Program
 陽性患者には24ヶ月間MDTを投与する。
10. デング熱予防プログラム
11. 歯科診療
12. 環境衛生
 消毒した水の供給。便器の配布。
 
2)薬局(Balloc Barangay, Doclong 1st Barangay)訪問
 2つのBarangayにて薬局を訪れた。内容については10日の報告を参照されたい。
 
 その後ターラックからマニラに戻り、Barua先生、Galea先生、佐藤先生、佐々木先生とフィリピンレストランで食事を共にし、貴重な話を聞かせていただいた。 (文責:平野)
 
8月11日 今日の一言
岡田:村レベル、地域レベルでの保健システムは一見合理的な気もするが、それぞれの意識レベルによるところが大きい。この末端まで質を高めるにはどうすればいいんだろ?それにしてもこの田舎の子供たちの盛り上がりは楽しかった。
金子:西村先生曰く、「みんなはターラックに来て、フィールドに出て、生き生きしてきた。」一人だけ興味の方向の違う自分の個性について改めて気付かされた。私は私の見方でいろいろなことを吸収できただろうか?
貞方:フィリピン最後の夜は、WHOのGalea先生を囲んでお話を伺った。キプロスのこと、トンガのこと、モンゴルのこと、、、WHOには様々な経歴の方がいらっしゃる。各々の経験に対しての深い思い入れを伺えてとても興味ぶかかった。
:フィリピン最後の夜、みんなで打ち上げた。楽しさに油断して記憶をなくすほど飲んだのは久しぶり。Where is my memory?ちと羽目をはずし過ぎたかと反省。何はともあれ、素晴らしい仲間と出会ったことを噛み締めた一日だった。感謝。
飛永:田舎の暮らしは決して裕福ではないが、皆幸せそうだ。ゆっくりとした時間が流れているのがわかる。人の幸せについて考えさせられる1日であった。
福永:フィールドワークも終わり、夜は色々な先生のお話も聞けた。今回の膨大な情報量もまとまりかけてきたところで明日が最終日なんて早いなぁ。
今井:先生方と食事をとりながら色々な話を聞き自分の疑問点も解決できた。このフェローならではのすばらしい機会だった。最後の夜、みんなで真剣に話したり、思い出話したり、大笑いしたり。明日日本に帰国してこのフェローが終わるのがとても寂しかった。
関谷:WHOのBarua先生、佐藤先生、Galea先生、そして日本大使館の佐々木先生を迎えての晩餐。興味深い話と美味しいフィリピン料理で、心もお腹もいっぱいになりました。ホテルに帰ってからの2次会では、将来の夢や恋愛、結婚、そしてここには載せられないようなことにまで話が弾み、フィリピン最後の晩は大いに盛り上がりました。睡魔に負けて、一足先に寝てしまったのが残念です。姫も兄貴も朝まで付き合ってくださり、ありがとうございました!
筒井:この日の夜は、よく飲んだね!よく笑ったね!よく語ったね!こんなに楽しい飲み会は初めてです。なんと気がついたら朝6時。あれ??集合って、朝8時じゃなかったっけ・・・。
船橋:いよいよ最後の夜。このフェローの仲間達と、いつか一緒に仕事をしてみたい。夜明けを待たずにダウンしてしまったのが残念!
赤木:今日で、現地の施設を訪ねるフィールドワークは終わりだ。肌で感じてきた人々との交流の経験は、フィールドワークを通してでしか得られない大事なもの。疲れが最高潮に達してきた・・・
城下:マサラップ:研修中ほとんどフィリピン料理を食べ続けていた。全てすばらしかった。特にSMB。(訳 おいしい)
平野:RHUでは、母子保健など、しっかりとプログラムが作られているように感じた。住民参加のボランティアのプログラムなどもあり、住民も協力的であるのだろう。
鈴木:夜通し喋って笑い転げた日!笑顔って素敵、仲間って素晴らしい!
 
8月12日(金)
本日のスケジュール・内容
1)総括ミーティングI
2)総括ミーティングII
 
1)総括ミーティングI
グループ発表 テーマ「もし自分がフィリピンの大統領だったら」
1班(関、関谷、赤木、貞方、筒井)
2班(飛永、福本、船橋、今井、岡田)
3班(城下、平野、金子、鈴木)
 
【1班】
1. 現在の問題点
・貧富の格差充分な教育を受ける事ができない。
医療にかけるお金が少ない。
農村部での雇用が少ないために都市にでてくる。
(都市で良い生活へのあこがれ)
→ その結果、ストリートファミリーを生む原因となっている。
・中絶(宗教的な問題)
・海外への医療職の流出
・性風俗
 
2. 対応策
・経済、産業の立て直しを図り、国際の場での発言力を強めるべきである。
・フィリピンの特徴、農作物を充実させ、自給自立の生活を確立させるための農業の安定化を図る。
・税制の改革
高所得者からの徴収税の増額
社会保障の充実を図り、底辺の底上げをし、最低生活の保障をする。
・職場の地位が高いほど、現場の実状を理解していないので現場に踏み込んだ実態調査と討議が必要である。末端を見る必要がある。
・先進国の真似はよくない。
地域に即した対応策の設定が必要である。
 
【2班】
1. 現在のフィリピンにおける問題点
・経済の停滞、医療資源(財源、人材)不足、大きな貧富の差
 
2. 対応策
・経済の立て直しを図る。(財政能力が高まれば医療財源も増やす事ができる)
−(戦後復興期の日本の様な)統制経済的な政策を導入する。
−教育を充実し国の産業を支える技術や知識を持った人材を開発し、また、若い人材が自分自身や国家に対する良い意味での自尊心を持てるようにする。
−政情の安定化を図り、商取引のルールを明確化にして外貨の参入を促進する環境を整える。
 
・統計システムの充実を図る。(国の現状を正確に把握し、的確な施策を行える様にする)
−日本など先進国の協力を得て、そのノウハウを移転、活用する。
 
・中央政府の管理下で国全体の保健レベルを底上げする。
(少なくとも医療分野においては地方分権化が時期尚早な面もある)
−感染症対策など国全体での取り組みが重要な問題では、国全体で一定レベルの対策が保障できる様にする必要がある。
−医療従事者の国外流出問題に対しては、大学卒業後の国内勤務義務年限を国家として定めることも検討すべき。
 
・貧困層の中でも特に劣悪な生活環境に強いられている都市の貧困層(路上生活者、スラム生活者など)を支援する施策を強化する必要がある。
 
【3班】
1. 現状
・バランガイの田舎のゆとりのある暮らし
国民性、気候、風土にあった生活現状→都市型の生活
・高層ビルを目の前にして、ごみ収集所でごみの選別をして生計を立て、バラック小屋に住む人々
・女性の人権問題
・裕福なアジア人の観光客が増えたため増加している売春行為
・貧富の差のそれを裏付ける教育現状の貧しさ
・行政指導力の貧困さ
・富裕層の人々の問題意識のなさ(政治家も含め)
・地位と権力者がごく一部の富裕層から出ているために、現場の貧しさを知らないのではないだろうか
 
2. 対応策
・富の平等な再分配→高取得者からの税金の高徴収
・教育制度の充実により目指す社会常識の向上
特に売春行為などは、国内のみならず国外での意識改革、啓蒙活動
・上層部の人々の、危機管理、意識改革
・ストリートチルドレン、ファミリーへの支援と教育
農村部での良い環境とそこでの教育を希望者への支援
農業などの充実性を図り、自給自足と自立のへの支援をし、また、農業そのものの独自性と向上を促す。
・現在の先進国の目にとらわれない自主性のある国作りのため、フィリピン独自の産業の発展を目指す。そのためにも途上国への先進国の人々の協力と理解が必要である。


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