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8月10日(水)
本日のスケジュール・内容
1)Tarlac Provincial Hospital
2)Moncada Rural Health Unit(RHU)
3)Banaoang east Barangay
4)Banaoang west Barangay
 
 
ターラック州
 
1)Tarlac Provincial Hospital
 早朝にマニラを出発しバスで約3時間で、Tarlac Provincial Hospitalに到着した。白い平屋の建物は現在改修工事中であった。病院内の講義室にてターラック州の保健局長であるDr. Ricardo Ramosに話をしていただいた。JICAのプロジェクトに触れて、「2002年まで10年間続けられたODAがどのように使われているかを見てきてほしい。2004年現在、出生率(crude birth rate)21.28、妊産婦死亡率(Maternal Mortality Rate = MMR)0.08、乳児死亡率(Infant Mortality Rate = IMR)4.5と非常に良好な状態であり、JICAは重要な仕事を残してきた。」と述べられ、ターラック州の死亡原因についても言及されていた。研修参加者のうちの3人の既婚者に対して結婚した理由を質問されたり、医学を志した理由を聞いたりと質問を私達に投げかけられた。また、WHOの健康の定義を引き合いに出して人が社会的なものであることを強調されていた。人同士、国同士が共有することが重要であることを問われ、「貧困と疾患をなくすためには国同士が助け合う必要性があり、一つの大きな幸せなコミュニティを作ることで皆が幸せになることができる。」と述べられていた。また、1993年の地方分権化により、Full Immunized Children(FIC)が92%〜95%であったものが、80%以下になったことに触れて地方分権化の弊害について憂慮されていた。そして、フィリピンの医師、看護師が海外に流出することに関して、大統領の収入や自分の収入に触れて、流出をくい止めることの難しさと国内の人材を確保する必要性について述べられた。
 Dr. Ramosは、熱い語り口で我々に多くのメッセージを残してくれた。
 
講義をしてくださったDr. Ramos
 
2)Moncada Rural Health Unit(RHU)
 
 建物はJICAの援助で作られたこともあり、横断幕での熱い歓迎を受けた。このRHUにて市長と会う予定になっていたが、市長の都合が合わず会うことができなかった。椰子ジュースをいただいたり、フィリピン家庭料理をごちそうになったりした。RHUの詳しい業務内容などは、11日のSan Clemente RHUに譲ることとする。
 
3)Banaoang east Barangay
 このBarangayでは、薬局(Botica ng Barangay, Pharmacy of Barangay)を訪れた。この薬局には医師、助産師はおらず、Botica operatorとBotica aidが働いている。彼女らは、DOHで2〜3日の研修を受けており薬の販売とマネージメントを行っている。
 薬局内には必要最小限の薬が置かれているようであった。Amoxicillin、Co-trinmoxazoleなど抗生物質やNSAID、ビタミン剤などが売られていた。販売価格はDOHに決められているが、市価よりも安く、街まで薬を買いに行く必要がなく非常に便利になったとのことである。
 薬局の運営についてであるが、初めに11,000ペソ(約22,000円)分の薬がDOHから支給される。DOHが設定した原価、販売価格で、住民に薬を売り、その売り上げを元手に新しい薬を買う。運営状況が良いとDOHから最大25,000ペソ(約50,000円)分まで支給されるとのことである。収益の半分は給料に、もう半分はBarangayの保健関係の予算に回るとのことである。JICAからの情報では、住民が保険料を払い、予算の一部を担っているという話であったが、現場の情報では住民は全く保険料を払っておらず、DOHからの支給のみを元手に運営しているとのことであった。
 
薬局を訪問
 
4)Banaoang west Barangay
 
 このBarangayにおいては、共同薬局とBarangay Health Station(BHS)を訪れた。共同薬局の隣にBHSがあり、妊婦でにぎわっていた。揃いのTシャツを着ているBarangay Health Worker(BHW)が彼女らの相談に乗っているようであった。BHWは各BHSに2〜3人働いており、彼女らはProvincial Health Officeで2週間のトレーニングを受けており、乳児の体重測定など5歳以下検診Under Five Clinic(UFC)や、拡大予防接種Expanded Program on Immunization(EPI)などの記録や健康教育を行っている。時折、保健師的役割を持つ助産師が巡回してくるようである。
 妊婦は赤色の妊婦検診カードを持っていて、月に1回ぐらいは検診を受けてBHWに記録してもらう。以前は、自宅で出産を行っていたらしいが、現在はRHUに隣に併設されているBirthing Homeにて出産することになっている。また、出産後の乳児には黄色い乳幼児成長記録カードが与えられ、検診の結果や予防接種の接種状況が記録されている。非常に和やかな雰囲気でBHWが働いている印象を受けた。
 
Barangay Health StationとBarangay Health Worker
 
5)Birthing Home
 Moncada RHUの隣にBirthing Homeがあり、ここで主に出産が行われているとのことである。しかし、Birthing Homeを持っているRHUは多くはないとのことだった。中に入ると、2部屋あり分娩台が1つと5床のベッドが備え付けられていた。訪れた時には入院患者はいなかったが、24時間助産師と看護師が勤務しておりいつでも入院できる体制が整っているようである。月に30人ぐらいの出産があり、入院は平均3〜4日とのことだった。基本的な出産はここで行われているが、帝王切開が必要な場合にProvincial Hospitalに送られるとのことである。
(文責:城下)
 
8月10日 今日の一言
岡田:ターラックヘJICAの旧母子保健プロジェクトの現在を見に行った。続く援助と終わる援助、そこの分かれ目は何か。
『shareとrelationshipを大事にすればhappyは生まれる』。格差の広がる今、僕にできるのはなんだろうか。
金子:暖かい出迎えに感激すると同時に、その裏にある意味について考えさせられた。フィリピンの人って何でこんなに笑顔が素敵なんだろう?
貞方:現場の第一線で働く保健所の医師、保健師の方々はとても仕事に熱心だった。見学した保健所の建物はJICAの援助で作られており、立派だった。ただ水道管が壊れているのか、水が出ず、歯科治療ができていないようだったのが残念。
:バスに揺られターラックヘ。そこには、技術的には発展してなくてものんびり幸せそうに暮らす人々の姿があった。
貧困って何だろう?疑問。
飛永:マニラからターラックヘ。前日までの疲れが取れずにどんどん累積していく感じ。ミーティング中、幾度となく意識が飛んでしまった。周りを見渡すと皆代わる代わる意識を飛ばしている。まさに自分との戦いですな。
福永:バランガイ単位での医療システムは現状では合理的だと思ったが、基本的な医療器材がもう少しあれば、とも感じた。
今井:Tarlacへ。気候はManilaよりカラッとしていた。Dr. Ramosの話が心に残った。子供たちの笑顔はいつみてもかわいい。
Rura lareaも様々な問題が山積みだった。
関谷:Ramos先生の「Think what makes you alive. Learn to live with one another.」という言葉が心に染み、自分が多くの人によって支えられ、生きていることを改めて感じました。JICAのプロジェクト中に使われていた母子手帳は厚い冊子だったようですが、JICAが撤退した今となっては一枚の紙となっていました。限られた資源を使い、その地域がまかなえる範囲で継続されていることを実感しました。
筒井:ターラックの緑豊かな風景と子供たちの無邪気さに癒された一日。癒されすぎてしまったせいか、夜のミーティングでは、我らが兄貴、西村先生の目線をビシバシ感じ・・・それでも瞼が・・・。本当にすみません。
船橋:RHUやBarangayの訪問はフィリピンの経済力・DOHの施策・海外からの援助などが実際の現場でどの様な実となっているのかを窺い知る良い機会となった。
赤木:セブやマニラと違って、豊かな自然の中に伝統的な集落が集まるターラック。子供達の天真爛漫な笑顔が忘れられない。
城下:Where is CR?:かなり通じるので感動しています。Comfort Roomの略らしいが、なぜ便座がないんだぁ。
(訳 トイレ)
平野:ほとんど医療設備の整っていない村で、医師の数もたりない。そんなところで、ほとんど無給で働いている人などがいて、なんとか保健システムが保たれているのだろう。
鈴木:海外を見て自国を知る、人と交わり自分を知る、自ら実行に移す事の大切さ、この研修で感じ始めました。


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