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15:45〜17:45
フリーディスカッション 〜国際医療協力、公衆衛生活動を中心に〜
座長 国立保健医療科学院 院長 篠崎 英夫 先生
国立国際医療センター国際医療協力局局長 北井 暁子 先生
厚生労働省大臣官房国際課国際協力室室長 金井 要 先生
独立行政法人国際協力機構人間開発部技術審議役 橋爪 章 先生
国立国際医療センター国際医療協力局派遣協力第一課課長
建野 正毅 先生
国立国際医療センター国際医療協力局計画課課長 石川 典子 先生
 
 フリーディスカッションでは、あらかじめ当日の午前中に行われたアンケートで参加者の関心が高かった分野について、それぞれの先生のお考えやご経験をお話いただいた。国際協力を目指す学生にとってとても参考になるお話ばかりであった。紙面の都合上、貴重なお話のうちの一部を抜粋した。
 また、大谷藤郎先生がディスカッションの途中で駆けつけてくださり、参加者に対して激励の言葉を述べて下さり、大変勇気づけられた。
 
Q. 国際保健医療協力の課題・現実、国際保健医療協力における日本の役割とは。
北井先生:まさに本日会場となっている国立国際医療センターは日本の国際協力の拠点となっています。具体的な内容としては、国際協力を18ヶ国で展開し、海外からの研修生を2,000人ほど受け入れています。様々な国際協力が様々な機関によって行われていますが、まだ課題はたくさん残っていますね。これからの日本の果たす役割としては、国際協力をする際に、援助を希望する相手国が主体になるように工夫し、相手国が自分たちの手で自国の健康問題を解決する方法を築いていくようにサポートすることです。しかし、これはなかなか達成するのが難しく、永遠の課題とも言えますね。
建野先生:課題としては、今まで先進国が行ってきた協力形態が良かったのかを見直し、援助の手法を変えることで改善していかなければいけませんね。「先進国の常識は発展途上国の非常識である」ことを援助する私達はいつも認識しておかなければなりません。
石川先生:その土地に根付いたシステムをつくることが大事ですね。予定通りに計画を進めたいときに、現地の人は私達が望むようには行ってくれないことが多々あります。援助を受けている国の背景や社会的問題をよく知り、その土地に合った対策を講じなければなりません。
篠崎先生:最近では、ビルゲイツが3兆円の財団をつくったことが話題になりましたね。その財団は保健医療分野で活動するようですね。このことが示すようにこれからも保健医療は重要な分野です。欧米は戦前植民地を持っており、植民地に対して保健医療協力を行ってきました。日本は欧米と違う方向性を持って国際協力を行っていったら良いと思います。分野としてはHuman Securityがこれから重要ですね。また、日本の援助の方法としては、日本が戦後の状態から現在の世界最高水準に至ったノウハウを技術移転する方法があります。
 
Q. 重点課題にはどのようなものがあるか?
金井先生:保健医療協力をうまく進めるためにインフラ整備も重要な課題です。医療だけを提供するのではなく、生活レベルを向上するために大切なものを提供しなければなりません。
橋爪先生:アフリカでは、国の担い手である若者がバタバタ死んでいる現状があります。母子保健は昔から重点分野でしたが、現在も重要です。それにエイズ対策も重要です。また、最近は交通手段が車に変化する一方で交通事故での死亡者も増えていますから救急体制の確立も望まれます。人口密集地に関する課題としては結核対策があります。
篠崎先生:疾病では、エイズ、結核、マラリアが重要点です。
北井先生・篠崎先生:どのような切り口で入っても保健医療システムの構築がなければ、他の活動を活かせません。各国のHealth Systemをどう確立するかが大きな課題です。
建野先生:ヒト・もの・金は不足しているのですから、バックにあるものをどう変えていくかが重要です。また、医学だけ良くしても状況は改善しません。Social Scienceと医学を組み合わせて援助する必要があります。
 
Q. 国際協力を行うために学生の間にできること・国際協力に向いている資質について。
橋爪先生:自分なりの売りをつくることが必要です。発展途上国にも、外国に留学して学位をとった医師が多くいます。彼らと対等に仕事をするには自分にも実力が必要なのです。専門性を磨いてください。それに語学力に応じて伝えられるものが増えますから語学力も大事ですね。ただ、本分である国家試験合格も忘れないようにしてください。
金井先生:コミュニケーションを取る能力が必要です。語学力も必要ですが、何を伝えたいのか自分自身が把握しておかなければなりません。話の幅を広げるように何にでも好奇心を持っておくことも大切な点です。
北井先生:たくさんの国際協力の場がありますから要求される資質はそれぞれの場所で違います。共通項は、一人の人間としてコミュニケーションをとれるように積極的に考えて相手に伝える訓練をすることの大切さです。また、日本の医療問題に関心や疑問を持っておくことも必要ですね。
建野先生:チームワークが大切です。異文化を理解し、途上国のヒトが幸せになれるためにはどうしたらいいのか?と考えられる人が国際協力に向いています。いろいろな分野の人の考えを受け入れられること、視野を広げていくことが必要ですね。また、国際協力では発展途上国の人が主役となれるように、自分は縁の下の力持ちに徹すことが重要です。
石川先生:学生の間はいろいろな人に会って話すことが大事です。日々の積み重ねが国際協力を行う際の力となりますから、日ごろから途上国の出来事に注意を向けておくことを行ってみたらどうでしょうか。
篠崎先生:こころ(情熱)が大切ですね。それに威張らないことも大切です。途上国の人が自分の国を卑下して話をすることがあったとしても、「日本も同じような状況ですよ。」と似た状況を見つけて応対することが、相手の方との関係を円滑にしてくれます。謙虚さは日本でも大事ですが、海外に出ても重要なことです。
 
Q. 国際機関で働く女性から苦労話について。
北井先生・建野先生:国立国際医療センターの専門家の多くは女性ですが、皆たくましいですね。苦労話は聞いたことがありません。中には自分自身が任地に赴いたあとで、夫が休職し生後数週の子供を連れて妻のあとを追いかけて行ったという話もあります。その場合、夫は新しく職を探したり、専業主夫をするようです。
(文責:貞方)
 
パネルディスカッションの様子
 

 守康先生は、笹川記念保健協力財団寄生虫症対策専門家として、永年にわたり中央アフリカ共和国をはじめとした寄生虫症対策の現地技術協力にご尽力されました。また、当初より本プログラム国内研修では、毎年貴重な講義をいただいておりましたが、大変残念なことに2006年1月12日に急逝されました。
ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 
8月2日 今日の一言
岡田:ついに始まった国際保健協力フィールドワークフェローシップ!英語の自己紹介は大失敗(>_<)それにしても先生方から学生までよくもまぁこんなに活きのいいキャラが集まったもんだ。これからの11日間ワクワクしてきた。がっつり学んでしっかり楽しんでいきます♪
金子:勢いで引き受けてしまったものの、本当に私がリーダーでいいのでしょうか・・・。みんなに助けてもらいながら、自分なりに頑張ってみたいと思います。そして、11日間楽しみます!
貞方:1年生のときから参加したいと願っていたフェローシップにいよいよ本当に参加できる!初日は先生方から国際保健への心構えを伺い、自分を正して気合を入れることができた。
:個性的な仲間と出会った。これからのプログラムが充実したものになりそうだ。期待。P.S遅刻はもう絶対しません。
飛永:強烈な個性を持つ集団、やる気あり、一体感・・・未だ無し。
福永:やっとみんなに会えました。しかし、すごい個性の持ち主が集まったなー(笑)
今井:みんな個性が強く、経験もみなそれぞれ違う。色々な意見が聞けそうで楽しそう!吸収できることは全部吸収したい。
関谷:国際人にはバランスの取れた人間性や幅広い知識、謙虚さが大事。研修中は自己の内面をどんどん磨いていきたいです。それにしても、かなりにぎやかなメンツとなりました。帰りのバスの中でも大騒ぎ。これから先の研修が楽しみ!!
筒井:いよいよ始まりました!第1日目!多くの素晴らしい方々と出会うことができて感無量。体の五感フル回転で多くのことを吸収しようと思います。みんな、よろしくっ!
船橋:格差の原因は?許容しがたい格差とは?蝶ネクタイ姿の島尾先生のお話が印象的だった。
赤木:待ちに待ったフェロー第1日目。みんな経験豊かで、人柄もあたたかで、これからの11日間楽しみだ。
城下:マボハイ:紀伊國先生より教えていただいた。早速懇親会で使わせていただいた。この研修中もっともよく使ったタガログ語かも。
平野:今日の研修は昨年も来たので2度目だが、大谷先生の熱いメッセージなど聞けてよかった。自分のやっていることを愛すること、誇りをもつこと。謙虚さを忘れないこと。
鈴木:とうとう始まる!緊張、絶頂!今宵結集、金子祥とゆかいな仲間達!8月3日(水)


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