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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


討論
2 杉樹皮製油吸着材の微生物分解処理技術に関する研究
【討論】佐藤 徹君(東京大学)(1)実際に海洋で油を吸着させたSBSでも,バーク堆肥を用いた生分解は可能でしょうか。塩分などが微生物に影響しないのでしょうか。
(2)実際の流出事故で仮に数万トンの10数パーセントを回収したとすると,堆肥量や使用面積はかなりなものになると推測します。堆肥コストや土地利用規模はどの程度でしょうか。
(3)バーク堆肥内での生分解の後,エイコサンは残留するとありますが,使用後のバーク堆肥はどのように処分されるのでしょうか。また,堆肥温度が実験中に低下したことから微生物活動の低下を指摘されていますが,バーク堆肥の再利用は可能でしょうか。効率を落とさず再利用が可能な限界を示す指標等はありますでしょうか。
【回答】(1)ある事故での回収物の組成で油17%,海水70%,SBS本体13%との我々のデータがあり,試算すると油1tにつき塩分も約0.12t回収されます。今回の実験の濃度で必要な堆肥量は100t,仮に改良され10tの堆肥で分解可能になったとして,塩分濃度は0.12〜1.2%です。一般微生物の生育塩濃度範囲は人体リンパ液(0.9%),海水(約3%)周辺であることが知られており1),海水由来の塩分が分解の支障にはなりにくいと考えられます。また,生成堆肥の塩分濃度は例えば麦で0.3〜0.5%とされる発芽遅延範囲2)に入るため,通常の使用法では希釈され問題にならなくても,継続して使用すれば塩害の恐れがあると考えられます。
1)松本孝夫 他:石油汚染土壌浄化の省力化に関する技術開発,(財)石油産業活性化センター技術開発成果発表会要旨集R6.1.4(2004)
2)福岡県農業総合試験場:水稲塩害田における後作麦類の出芽と初期生育,(独)農業・生物系特定産業技術研究機構九州沖縄農業研究センター平成7年度研究成果情報第11号(1996)
(2)今回の実験の最高濃度(1%-wet)で回収物5千t(濃度17%で油分850t)の処理には堆肥のべ85,000t,面積のべ85,000m2が必要となりバーク堆肥を3千円/tとすると2〜3億円が堆肥コストです。最高濃度の改善や再利用が可能になればそれぞれ削減されます。他に作業や土地利用コスト等を考慮する必要があります。
(3)使用後のバーク堆肥は緑化用途を検討していますが残留成分の問題から同所への重複使用は慎重に行うべきと考えられます。バーク堆肥の再利用および指標は,栄養塩投入など再活性化手法やC/N比などの指標を今後検討したいと思います。
 
【討論】長沼 毅君(広島大学)(1)Fig. 14とTable 1だけではCFBグループの存在が示唆できない。分子系統樹における分類上の位置を示すべきではないか。
(2)C重油成分のうちC20(エイコサン)付近が特異的に残留したことについて,過去にも同様な事例があったか。また,考えられる理由は何か。
【回答】(1)下図の分子系統樹においてはTabIe 1のA1,3〜5がCFBグループに属します1)
 
 
(2)例えば,海岸での原油のバイオレメディエーション実験においてC20付近の成分が特異的に残留する同様の結果が報告されています2)。石油は多種の直鎖・分鎖の脂肪族,芳香族の炭化水素を含み,分鎖脂肪族や多環芳香族は分解されにくくそれらの一つが残留している可能性があります。また,バーク堆肥そのものにもC20付近の成分が特異的にあり,これが検出されている可能性もあります。
1)Yoshihiro Nishikawa, Masaki Saito, etc.: Succession of bacterial communities during petroleum degradation in bark compost as detected by small subunit ribosomal RNA gene profiles, Aquatic Ecosystem Health and Management誌,投稿準備中.
2)牧秀明 他:微生物で環境をきれいにする, 国立環境研究所公開シンポジウム講演要旨(2003).
 
【討論】柴田 清君(海上技術安全研究所)Fig. 15にも示されるように大規模なコンポストでは内部の温度が上昇します。微生物による分解に対して,軽質分の揮発の寄与はどのくらいと想定されるでしょうか。また,パイル中の水分濃度の管理あるいは水分の供給はどのようにされたのでしょうか。
【回答】80℃で平衡状態まで蒸発させる実験では使用C重油における揮発分は10%であり,未分解での揮発の寄与はその程度と想定されます。なお揮発分も含め,本文3.4の「C重油回収率」で補正済です。また,水分は攪拌時に測定し,不足の場合は水道水を添加しました。
 
20 円柱の焼入れにより生じる残留応力について
―第2報― 相変態で生じる応力の数値解析方法について
【討論】村川英一, 徳安君(大阪大学 接合科学研究所)(1)相変態ひずみについて:冷却する時に、300℃から200℃までの温度範囲の低温相変態によるひずみは,Modified K-M関係で計算していることが分かりましたが,加熱する時に,700から800℃までの温度範囲の相変態によるひずみの計算方法を教えていただけませんか。
(2)Condition 2の計算結果の検討について;
Condition 2の計算結果は実験と合わなかった原因については,相分率が一つの理由と考えられますが、変態誘起塑性(Transformation-induced Plasticity)も原因として考えられないでしょうか。
【回答】(1)加熱過程の相変態ひずみの考え方は,冷却過程と同じです。加熱過程で相変態が生じる場合(α相→γ相)に鋼材は収縮します。今回取り扱った円柱焼入れでは,加熱過程での相変態の挙動は残留応力・変形の局部挙動に寄与しないため,変態膨張量のみが正しく計算できるようにし,K-M関係のような変態分率は考慮せず,温度の一次式で与えました。
(2)Condition 2の計算結果が実験値と合わなかった原因としては混合則以外に,更に変態誘起塑性を考慮すればよいとの考えは可能です。しかし,どのように変態誘起塑性を与えるのかが明確でありません。それよりも,降伏応力の実験値を使用すれば,計算値と実験値が一致したことが重要と考えます。
 
【討論】豊田政男,望月正人,三上欣希君(大阪大学)
(1)Modified Koistinen-Marburger則について(2.4節)
 無拡散変態の物理的意味から考えれば,Mf点での変態分率を実験結果に合わせて記述するには(2.3)式の定数bを検討する方法も有力候補として考えられますが,これと(2.4)式を用いることの優劣についてどのようにお考えでしょうか?(2.3)式のb=0.011は,数十年前の鋼材での実験定数に過ぎないと考えますが。
(2)降伏応力の温度依存性について
 Fig. 14の降伏応力の温度依存性の実験値に関して,仮にMf点で降伏応力の測定を行った場合,図中に破線で示されている値よりも,むしろ室温の降伏応力に近い値が得られると予想されます。そのような降伏応力の温度依存性を用いた場合,残留応力や変位の数値解析結果はどの程度影響を受けると考えられるでしょうか。
(3)変態ひずみの冷却速度依存性および変態塑性(4.3節)
 3章までの比較的冷却速度のゆっくりとした基礎実験で得られた情報をもとに,実際のように炉出し後水焼入れの場合,特に,表面近傍での冷却速度の速い付近では,変態ひずみがもっと大きくなると予想されますがいかがでしょうか。
 また,上記の変態ひずみの冷却速度依存性(熱ひずみ曲線の上側への逸脱現象)に加え,丸棒のような軸対称体の焼入れ処理では,通常は表面近傍において変態塑性の影響が大きいとして取り扱うことが熱処理シミュレーションの国際的な流れとして一般的であるかと思われます(貴論文の参考文献6などを参照下さい)。これらの影響を考慮せずに,降伏応力の値に測定までの温度履歴を考慮することのみによって比較的簡便に応力・変位ともに良好な解析結果を得られていることについて敬意を表するとともに,降伏応力の温度依存性と過変態,変態塑性などの間にどのような相関があるかについて見解をお聞かせ下さい。
【回答】(1)ご指摘の考えもあると思います。著者らの実験値ではFig. 8に示すように式(2.3)に示す係数0.011を用いて,式(2.4)で求めたマルテンサイト変態分率で実験値が精度良く表現出来ています。したがって,Koistinen-Marburger則の定数までを検討することは考えませんでした。
(2)論文では紙面の都合上省略しましたが,Mf点(100℃)の降伏応力を室温の降伏応力(1280MPa)と同じに仮定し解析を行った結果を添付図に示します。残留応力は円柱の中心側で僅かに圧縮応力が大きくなりますが,残留応力及び変位共に実験値の降伏応力(Fig. 14の●印)を用いて解析した結果とほとんど同じでした。(添付図の○,△,□の残留応力分布は実験値の降伏応力値(Fig. 14の●印)を使用した解析結果を示す。実線および破線等の残留応力分布はMf点(100℃)の降伏応力の値を室温の降伏応力である1280MPaと仮定して解析した結果を示す。)
 
残留応力分布の数値解析結果の比較
 
(3)実際の円柱は実験で行った円柱寸法より大形ですので,冷却媒体などの冷却方法が同じ条件下では,むしろ冷却速度は3章よりも小さくなるか,表面ですので同じです。この辺りは著者らの第1報の論文(参考文献1)を参照してください。Fig. 12に示した相変態ひずみ及び冷却速度の関係より,相変態ひずみは冷却速度の影響をほとんど受けないと判断し解析を行いました。ただし円柱端面の変位が僅かに実験値の方が解析値より大きな変位を生じています。円柱端面表層の冷却速度は数値解析の結果では1000℃/min以上となっておりFig. 12の実験では求めていない条件になります。そのため御指摘のとおり冷却速度が速いため相変態ひずみが大きくなり端面の実験値の変位が大きくなった可能性が残ります。
 著者らも参考文献6にあるように変態塑性を考えなければ,実験値が説明できないだろうと想像していました。しかし,変態塑性を考えなくても降伏応力の実験値を用いれば,残留応力及び変位を精度良く解析できました。変態塑性の機構をよく理解していないため,ご質問の降伏応力の温度依存性と過変態,変態塑性などの相関についてはお答えできません。
 
38 船体縦通材の疲労き裂伝播に関する研究
―3次元板骨構造の複数き裂同時進展解析―
【討論】北村 欧君(三菱重工業)疲労き裂の発生(発覚)寿命と伝播経路の実用的予測技術の確立は,船体構造設計上の最大の課題と言って過言ではありません。本研究について,以下について質問させて頂きます。
(1)5.2節の実験で観察されたブラケットの剥離は,実船でも把握されている疲労破壊モードの一つで,ロンジ材のウェブ貫通モードに比較すれば良性?と認識されております。構造形状によって応力分布/伝播経路を積極的に制御できればバックアップ対策として有益です。その為には剥離モードへの分岐判断を可能とするモデル化が必要であり,Fig. 4の様な剛体棒要素結合に対し更なる工夫が必要と考えられます。
(2)5.1節では,き裂進展に伴う荷重再配分の影響も再現する3ロンジスペース試験体と紹介されております。また,試験体の横部材の前後にスチフナ或いはブラケットが設けられており,対称構造となっております。従って,1.5ロンジスペースで前後非対称構造からなる計算モデル・計算事例との整合性がとれておりません。マクロ的な剪断力・曲げモーメント分布の一致があっても,注目部の応力分布詳細に差が生じますので,き裂伝播経路への影響及びき裂成長時間に影響がありますが,敢えて一致させなかった意図は何でしょうか?
【回答】(1)ブラケット剥離型の疲労き裂伝播は,ブラケットとロンジ材フェイスを接合する隅肉溶接のルート部を起点とする複数の疲労き裂の成長・合体によるものと考えられます。それ故,ブラケット剥離型の疲労き裂伝播を正確にシミュレートするためには,現状の2次元モデルでは不十分であり,ソリッド要素による溶接ルート部を含めたモデル化が必要と考えられます。ただし,ブラケットとロンジ材フェイスの接合部における直応力,せん断応力分布を用いて,溶接ルート部からの疲労き裂発生,伝播のクライテリオンが確立できれば,現状の2次元モデルによる簡易的なシミュレーションはできる可能性があると考えられます。
(2)水圧荷重を受ける実船モデルでは,周辺構造及び境界条件の影響によりき裂の開口が妨げられるため,き裂材に作用する応力分布はき裂進展に伴い変化します。実験試験体で実船モデルでの現象を再現するためには,実船モデルのスパン程度のサイズの試験体を用い,端部の支持条件は固着とする必要があると考えられます。今回の実験ではそれを行うことは不可能であったため,試験体の端部を隣接する部材と結合し,き裂に作用する応力再配分影響が実船モデルとほぼ相似となるように調整しました。また試験体を対称構造とした理由はヒール部からの想定外の疲労き裂発生を防ぐためであり,そうした場合でも試験体の疲労き裂伝播挙動は実船構造モデルとほぼ同じとなることが,事前のシミュレーションにより確かめられています。
 
【討論】山本規雄君(日本海事協会技術研究所)大変貴重な論文と思いますが,実用的な見地から幾つか質問させていただきます。
(1)Fig. 13の(a),(b),(c)の構造では,ヒール部の方が厳しいと思われますが,ヒール部における面外圧力を受けた場合の進展挙動はどのようになるのでしょうか?
(2)実際の構造では,面外圧力と軸力が重畳して作用します。当然,き裂の進展経路と進展寿命は,夫々の荷重成分による応力値の割合に依存するので,難しい問題とは思いますが,別個の荷重要因として得られた結果からどのように評価すればよいのでしょうか。或いは,組み合わせ荷重下でのシミュレーションが必要なのでしょうか?
(3)実際の構造物では,き裂の進展に伴い荷重の再配分が生じ境界条件が異なってくるので,スーパーエレメントの更新が必要となると思いますが,更新の目安等どのように考えれば良いのでしょうか?
【回答】(1)ご指摘の通り,構造詳細形状(a),(b),(c)ではトウ部とヒール部の応力レベルは同程度かヒール部がやや高いため,トウ部からのき裂とヒール部からのき裂の同時進展を考慮する必要があります。ヒール部から生じたき裂はロンジ材ウェブとトランス(カラープレート)の隅肉溶接に沿って伝播すると考えられるため,シミュレーションを行うためにはき裂がトランス(カラープレート)より内側に入らないようにき裂伝播方向に制約を設ける必要があると考えられます。
(2)面外圧力と軸力が重畳する場合,それらを組み合わせた境界条件による疲労き裂伝播シミュレーションが必要となります。実船構造では対象とする部位によって作用する荷重成分の割合が変化するため,全てについてシミュレーションを行うことは実際的ではなく,今後データベース化等の対応が必要と考えられます。
(3)本研究の手法ではき裂進展に伴うき裂伝播領域とその周辺領域の相互作用を考慮しており,スーパーエレメントとして扱う周辺構造ではその剛性及び荷重に変化はないため,スーパーエレメントを更新する必要はありません。
 
【討論】後藤浩二君(九州大学)疲労き裂伝播経路の推定に関する著者らの手法ではK値の計算が必要であり,これは境界条件やき裂伝播経路が複雑になれば計算精度に問題が生じる可能性が懸念されます。
 一方,疲労き裂伝播経路に関する他の研究成果1)〜3)(変動応力範囲Δσθが最大となる方向に伝播)ではK値計算が不要であるため,計算精度に対する問題への配慮が不要であると共に,計算プロセスの省略が可能であるため,より簡便にき裂伝播経路を推定することが可能だと考えられます。そこで,著者らの手法とΔσθ最大説による手法により推定される伝播経路による推定結果の相違レベル及び著者らの手法の優位性について検討していれば紹介願います。
[参考文献]
1)大路清嗣, 辻昌宏, 久保司郎, 小野嘉雄, 八幡篤, 梅井健司:高張力鋼の残留応力場における疲労き裂の伝ぱ方向および伝ぱ寿命の予測, 日本機械学会論文集A, Vol.59, No.562, 1993, pp.1429-1436.
2)片坐泰治, 村田征一郎, 立石勝, 豊貞雅宏, 岡本太郎, 藤原裕彦, 三輪茂, 金澤武:破壊管理制御設計手法の一提案, 日本造船学会論文集, Vol.149, 1981, pp.174-194.
3)日本造船研究協会第169研究部会:船体構造の破壊管理制御設計指針, 1983.
【回答】試験片レベルの単純な構造であれば,無き裂構造の応力解析よりΔσθ最大説に基づいて簡便にき裂伝播経路を推定できると考えられますが,本研究で対象とする構造のようなき裂進展に伴う応力再配分が顕著にき裂に影響する場合,或いは複数き裂の干渉がある場合には,本研究の手法のような逐次のき裂伝播経路推定が必要となります。また本手法でき裂先端応力場解析に採用している解析解と有限要素解の重ね合わせ法は誤差1%以下で解が得られることが確認されており1),き裂が現時点からある長さ伸びた状態のK値には摂動法による解析解を用いていることから,数値計算精度に対する懸念はほとんど無いといえます。また本手法の持つ優位性として,き裂進展経路を(2)式のように高次近似しているため,き裂が急激に湾曲する問題でも,少ないステップ数で高精度にき裂伝播経路を推定できること,2軸応力場のようなき裂経路不安定性を有する問題についても精度良くき裂伝播経路を求められること2)等が挙げられます。
[参考文献]
1) Y. Yamamoto and N. Tokuda: Determination of stress intensity factor in cracked plate by the finite element method, International Journal for Numerical Methods in Engineering, 6, (1973), pp.427-439.
2) Y. Sumi, :Computational crack path prediction for brittle fracture in welding residual fields, International Journal of Fracture, 44, (1990), pp.189-207.
 
【討論】勝田順一君(長崎大学)(1)Fig. 20の残留応力分布についてですが,ここは縦通材のフェイス上にブラケットを回し溶接された箇所だと思います。何故,左右非対称な分布となっているのでしょうか?また,この場合,フェイスで両側への伝播状況は同じでしょうか?
(2)残留応力を考慮したシミュレーションですが,残留応力の与え方,再配分等はどのように扱われていますか?
(3)Fig. 26に対する考察で,試験体の複雑な溶接残留応力分布が影響していると述べられていますが,溶接順序や推定される組上げ最終残留応力分布の影響を考慮すると,妥当な伝播状況となっているのでしょうか?
(4)Fig. 24のような伝播が生じる場合,CP-Systemでシミュレート可能でしょうか?
【回答】(1)一般的に縦通材フェイスの残留応力はフェイスとブラケットの回し溶接及びフェイスとウェブの隅肉溶接による影響があると考えられますが,Fig. 23の試験体の場合は縦通材が中央部及び両端部で長手方向に拘束されており,施工順序の関係で縦通材フェイスに非対称な拘束応力が働いていた可能性が考えられます。フェイスを伸びるき裂の伝播状況はFig. 26に示す通り,左右非対称な伝播速度を示しています。
(2)本研究では応力重ね合わせの原理1)を適用しています。プログラムではき裂伝播経路に作用していた残留応力を打ち消す分布力対をき裂面に負荷し,それに対する応力拡大係数を計算します。この場合,き裂進展に伴う残留応力の再配分は自動的に考慮されます。
(3)Figs. 20, 21の左右非対称な残留応力分布を与えてシミュレーションを行った場合,Fig. 26の実験結果が示す顕著な非対称性は得られません。Figs. 20, 21はスチフナ型モデルの疲労試験後に,対称な試験体のき裂が発生しなかった側の残留応力分布を計測したものです。そのため,計測時にはき裂進展により残留応力がある程度解放されており,これがき裂伝播速度の相違を生んだものと思われます。
(4)これについては,北村氏の討論への回答(1)を参照してください。
 
[参考文献]
1)例えばY. Sumi,: Computational crack path prediction for brittle fracture in welding residual fields, International Journal of Fracture, 44, (1990), pp.189-207.
 
39 3次元ソリッド解析のための完全自動の六面体メッシュ生成手法の研究
【討論】鈴木克幸君(東京大学)六面体のメッシュ生成という困難なテーマに取り組んでいる著者らのチャレンジに敬意を表します。
(1)筆者らのアルゴリズムを用いると,「質のよい」メッシュができると書いてありますが,定量的な比較は行っていますか?要素の質は通常,アスペクト比,Skew,Taperなどで定量的に表現が可能かと思いますが,具体的な値を示して頂けるとどの程度質のよいメッシュが生成できたのか判ると思いますが。
(2)「質の悪い要素が生成される場合には,要素生成を後回しにすることにより,悪形状の要素生成をある程度防止することが可能となる。」とありますが,問題の先送りに過ぎず,要素形状の改善につながらないように思いますがいかがでしょうか。
 
 質の悪い六面体要素は解析精度が極端に落ちる危険性があり,六面体のメッシュ生成においては重要な問題ですので,今後の十分な検討を期待します。
【回答】(1)従来の自動六面体メッシュ生成手法では,有限要素解析に使用できないナイフ要素や(ヤコビアンが負になるような)反転した要素が生成されることが多くありました。本論文で提案した手法により,これらの質の悪い要素の生成の多くを避けることができます。Table. 1に,論文中のメッシュ生成例について,従来から良く用いられている,要素のアスペクト比(Aspect Ratio)・要素面の最小テーパー(Face Taper)・要素の辺角度(90度からの偏差)(Edge Angle)1)により評価した結果を示します。この表では,各メッシュにおける,すべての要素の評価の平均値と,最大値(Aspect Ratio)または最小値(Face Taper, Edge Angle)を示しています。
 
Table 1 Quality of hexahedral mesh for each problem
論文中図番号 平均値 最大値 最小値
Aspect Ratio Edge Angle Face Taper Aspect Ratio Edge Angle Face Taper
Fig. 19 1.40 49.22 0.885 2.55 54.37 0.688
Fig. 20 1.26 14.70 0.915 1.85 49.22 0.722
Fig. 21 1.72 34.43 0.780 8.41 88.09 0.050
Fig. 22 1.96 10.34 0.950 5.97 64.57 0.650
 
 論文中のFig. 21とFig. 22のメッシュは,評価値が良いとは言えないですが,反転した要素やナイフ要素の生成は避けることができています。また,要素の質が良くならないのは,入力として与えられた表面四角形メッシュの不規則性が原因です。今後より質の良いメッシュを生成するには表面四角形メッシュのコントロールが必要となると考えられます。
(2)論文中では要素生成を後回しにすると記載しましたが,これは後回しにすることで別の要素配置法が適用されるという意味です。例えば,表面の3つの四角形面を基に要素を1つ生成する配置法(論文中のFig. 18)は,もし図中の頂点N0が角でないと判定できれば,表面の3つの四角形からそれぞれ一つずつ(計3つ)の要素を配置することができます。このように,本研究で提案する手法の利点は,ウィービング中に3次元形状の判定を行うことにより,適用するアルゴリズムを変えられることであると考えています。
 
参考文献
1) MSC. Patran 2001, Reference Manual Vol.2, pp180-191.


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