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3.3 FSWモデル
 実際の溶接問題への適用性を確認するために、以前に報告しているFSWの回転変形制御7)の計算をISMで行った。
 前報では、アルミ中空型材の突合せ接合に、アルミ薄板では実績のあるFSWを適用した場合、FSWツールが進むにつれて接合線の前方で口開き(以下、回転変形と呼ぶ)が発生し、施工が出来なくなる場合がある。この問題を解決するために、接合線に対して平行な位置で加熱することにより、温度分布を制御して回転変形を抑制する方法を考案し、解析的および試験的にその効果を実証した。
 本報では、前報で実施したFSW回転変形制御確認試験の変形シミュレーションを行うこととした。複数ある試験ケースのうち、板幅中央をFSWで接合する場合(以下FSW-single)と、FSWと同時に板幅両端を加熱する場合(以下FSW-Para)の2ケースの計算を行った。加熱にはTIG装置を用いた。FSWの入熱量と裏面からの熱伝達係数は試験時の温度計測結果より同定した値を用いた。
 試験体のFEMモデルをFig. 14に示す。概略寸法は長さ300mm、幅340mmm、板厚4mmで、分割数は長手方向75、幅方向50、板厚方向2とした。モデル規模は17,025要素、27,664節点、81,716自由度である。計算マシンは前々節と同じである。
 
Fig. 14 FEM model of FSW model.
 
 FSW試験体の材質はA6N01-T6であり、溶接シミュレーションに必要な溶融温度近傍までの物性値の温度依存性データは、ほとんど報告されていない。物性値のデータは溶接シミュレーションの精度に大きく影響するので、今回は、A6N01-T6の物性値の温度依存性データを取得して計算に用いた。取得したA6N01-T6の物性値の温度依存性データをFig. 15に示す。図中の矢印は、各物性値の縦軸の参照を示している。
 
Fig. 15 Material properties of A6N01-T6.
 
 準定常状態での温度分布をFig. 16に示す。トータルの温度ステップ数はFSW-singleで320、FSW-paraで335である。試験での温度計測結果と計算結果の比較をFig. 17に示す。温度計測位置は、試験片中央部において幅方向にFSWツールに近い中央から20mm離れた位置をT1、加熱源に近い板端部から20mm離れた位置をT5とし、その間を等間隔で合計5点としている。グラフの横軸はFSWツールが計測位置を通過する時間を原点としている。計測結果から同定した入熱条件を用いているので、実測と計算の温度履歴は良く一致している。
 
Fig. 16 Temperature distribution of FSW model.
 
Fig. 17 Temperature transitions of FSW model.


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