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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


4. 代表船による性能評価
4.1 代表船
 代表被衝突船として、1隻のD/H VLCC(A15)を採り上げ、A15に対して脅威となりそうな衝突船としてVLCC(B6: 尖鋭形状船首バルブ、B4: 扁平形状船首バルブ)、大型コンテナ船(B5)の3船種を想定した。衝突船の船首構造は、それぞれ標準型船首構造(L: 縦肋骨式を標準型代表とした)と緩衝型船首構造(T: 横肋骨、緩衝型設計)の2種類の構造様式を想定して比較の対象とした。また、衝突船の載貨状態として、バラスト[Ballast]及び満載[Laden]の2状態を想定した。ただし、コンテナ船については、Ballastのみで代表させた。衝突船及び被衝突船の主要目等をTable. 1に、代表的な衝突船船首のFEMモデルをFig. 8, 9に示す。
 
Fig. 8 FEM models for inner structure.
 
Fig. 9 FEM models for container ship.
 
4.2 FEMシミュレーションによる衝突破壊解析
 想定した衝突シナリオについて、FEMシミュレーションによる破壊解析を実施して、緩衝型船首構造の性能を比較検証した。解析では、材料の破断条件を、相当塑性歪み0.12で与え、隅肉溶接の破断も考慮した。
 斜め衝突の代表例として、θ=110degを採り上げて、標準型船首(B4L)及び緩衝型船首(B4T)が衝突した場合の反力履歴を比較してFig. 10に示す。図中で、ROは外板が破断開始した時点を、RIは内殻が破断開始した時点を示している。衝突船及び被衝突船の損傷状況を船首バルブ中央高さレベルの水平切断図によりFig. 11(a), 11(b)に示す。B4Tの場合には、曲げモーメントを受けた影響により、船首バルブ先端が被衝突船の進行方向に曲げ変形しているために被衝突船との接触面積が大きくなっている。一方、B4Lの場合にはこの曲げ変形が小さいためにB4Tの場合に比べて被衝突船との接触面積が比較的小さい。B4Tの緩衝型構造の効果が良く現れている。この効果により、この衝突条件下では、B4Lは内殻破断を発生させたが、B4Tは内殻破断には至らなかった。
 
Fig. 10  Time history of reaction force for CASE A15-B4L[Ballast] and CASE A15-B4T[Ballast]: θ=110deg, VA=kt, VB=15 kt.
 
Fig. 11 (a)  Collapse pattern for standard bow: CASE A15-B4L[Ballast], θ=110deg, VA=9kt, VB=15 kt.
 
Fig. 11 (b)  Collapse pattern for buffer bow: CASE A15-B4T[Ballast], θ=110deg, VA=9kt, VB=15 kt.
 
 バルブ形状が異なる場合の代表例として、B4L及びB6Lが真横衝突する場合の反力履歴を比較してFig. 12に示す。断面が大きい(バルブ先端付近断面で高さが約1.7倍、Fig. 8参照)B4Lの場合には、接触面積が大きいために反力が大きくなる。標準型船首構造の場合(B6L, B4L)には、外板及び内殻の破断タイミングは断面積が小さいB6Lの方が早くなっており、小さな接触力で破断に至っている。
 
Fig. 12  Time history of reaction force for CASE A15-B4L[Ballast] and CASE A15-B6L[Ballast]: θ=90deg, VA=0kt, VB=15 kt.
 
4.3 限界速度及び限界角度
 想定した衝突シナリオ総てについて、限界速度VB,cr及び限界角度θcrを求めた結果をTable 2に纏めて示す。衝突限界角度については、シミュレーション解析により限界角度付近の衝突角度における衝突速度VBの限界値を求めて、限界関数を特定し、この限界関数を用いて、VA=9kt, VB=15kt(コンテナ船の場合はVB=20kt)の場合のθの値を推定した(推定法については3.3.3項参照)。
 
Table 2  Critical striking velocity and critical striking angle.
ID of Striking Ship Loading Condition Critical Velocity
VB,cr (kt)
Crirtical Angle
θcr (deg)
B6L Ballast 6.2 80-129
Laden 5.2 68-124
B6T Ballast 5.1 98-129
Laden 16.1 99-125
B4L Ballast 11.7 78-127
Laden 6.7 79-113
B4T Ballast 16.5 no
Laden > 20.0 no
B5L Ballast 10.9 40-131
B5T Ballast 12.4 40-129
 
 それぞれ、Ship IDのLとTの性能差が緩衝型船首構造としての効果を表している。
 θcrの値の比較から、衝突船がVLCC(B6またはB4)の場合には、バルブが先に貫入するBallast状態のみならず、ステムとバルブがほぼ同時に貫入するLaden状態でも緩衝型船首の効果が大きい(θcrの範囲が小さい)ことが確認できる。また、VLCCの限界速度VB,crの比較においても、大凡の場合において緩衝型船首の効果が顕著である(VB,crの値が大きい)ことが分かる。限界速度の性能差はLaden状態の場合の方がより顕著であったようである。ただし、B6LとB6TのBallast状態の場合のみについては、限界速度VB,crの値がB6Tの方がやや小さくなっており、緩衝型設計の効果が負に表れている。この原因は、真横衝突の場合には内殻破断時点までにB6L、B6T共に衝突船船首は損傷せず被衝突船のみが一方的に損傷を蒙るので、緩衝型設計の効果が発揮される前に内殻破断が終わってしまったために差が現れなかったためと判断される。
 Ballast状態とLaden状態とを比較すると、限界速度及び限界角度の指標で見るかぎりどちらの場合がより厳しいかはケースバイケースであった。特に、B6TとB4Lの場合を比較すると、BallastとLadenにおけるVB,crの値が大きく逆転している。この原因は、Ladenの場合には、初期運動エネルギーが大きいものの、衝突時の接触位置がステムとバルブの2箇所に分散されること、また、BallastとLadenでは喫水差のためにバルブの衝突貫入位置が異なること、等の総合的要因により逆転現象が現れたものである事が確認できた。
 コンテナ船が衝突した場合には、初期段階でバルブ部が圧潰してしまい、被衝突船の内殻まで貫入するのは、ステム部である。B5Tが緩衝型に設計されているのはバルブ部のみであるために、標準型船首のB5Lと比べて、その効果は小さかったようである。コンテナ船の場合には、緩衝型船首構造の適用範囲をステム部にまで拡張すれば、その効果が大きくなると推測される。


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更新日: 2019年10月12日

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