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4.4 破壊挙動
 破断後の試験片の代表例をFig. 10に示す。破壊のタイプは大きく分けて、1)荷重軸に垂直な断面の中で最小断面積を持つ断面で破断するタイプ、2)複数の大きなピットでき裂が発生しそのき裂が合体することによって破断するタイプ、の2つがある。上記の1)に分類される試験片の破断後の写真の例をFig. 10(a)〜(c)に示す。また、上記の2)に分類される試験片の破断後の写真の例をFig. 10(d)〜(f)に示す。破壊のタイプが上記の1)と2)のどちらになるかは、両面に存在するピットの位置関係や大きなピットの位置間隔などに依存するものと考えられる。それぞれの試験片における破壊タイプをTable 2にまとめて示す。
 
Fig. 10  Wide tensile test specimens after test
(t0=5mm)
 
4.5 引張強度に及ぼす腐食ピットの影響
 幅広試験片を用いた引張試験結果を公称引張強度とピット面積率の関係でFig. 11に示す。両面のピット面積率が異なる試験片があるが、その場合は両面の平均値とした。この図には、前章で提案した強度評価式により得られるラインについても合わせてプロットしている。この図から、ピット面積率が異なるので単純な比較はできないが、ピット直径が同じデータを比較した場合、Type Cの公称引張強度は、Type AやBよりも大きくなる傾向が見られる。これは、Type Cでは、両面の同じ位置にピットが存在せず、最小断面積がType AやBよりも大きいためと考えられる。
 
Fig. 11  Relationship between nominal tensile strength and DOP in wide tensile test specimens (t0=5mm)
 
 Fig. 12に、公称引張強度と荷重軸に垂直な最小断面における平均衰耗量の関係を示す、図中の破線は、荷重軸に垂直な最小断面積Aminの模擬腐食ピットを設ける前の断面積A0に対する比Amin/A0の値をプロットした。破線の下側に位置する実験データがあるが、これは、[荷重軸に垂直な最小断面積Amin]×[材料の引張強さσu0]で最大荷重を予測すると危険側となることを意味する、この原因は、前述のように、荷重軸に垂直な最小断面で破断が生じず、大きなピットで発生したき裂が合体して破断に至る場合があるためである。
 
Fig. 12  Relationship between nominal tensile strength and average thickness loss at minimum cross section
 
4.6 破断伸びに及ぼす腐食ピットの影響
 幅広試験片を用いた引張試験で得られた標点間の破断伸びとピット面積率の関係をFig. 13に示す。この図から、3種類の直径のピットが混在するピット分布Type D、Eの場合、特に標点間の破断伸びが小さくなっていることが分かる。また、ピット分布Type Cよりも、Type A及びBの方が、標点間の破断伸びが小さい傾向があることが分かる。これは、Type Cでは、両面の同じ位置にピットが存在しないので、ひずみ集中が小さいが、Type A及びBでは両面の同じ位置にピットが存在するので、その位置でのひずみ集中が大きく全体としての変形量は小さくなるためと考えられる。
 
Fig. 13  Relationship between total elongation and DOP in wide tensile test specimens


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