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船体隅肉溶接部の曲げ圧縮強度に及ぼす溝状腐食の影響(第2報)
―自立型防撓材の場合―
 
正員 松下久雄*  正員 中井達郎*
正員 山本規雄*
 
* (財)日本海事協会 技術研究所
原稿受理 平成17年8月10日
 
Effect of Grooving on Static Strength of Fillet Welded Joint for Ship Structure under Compressive Stress Condition applied by bending moment (2nd Report)
 
by Hisao Matsushita, Member
Tatsuro Nakai, Member
Norio Yamamoto, Member
 
Summary
 Corrosion of structural members of ships is one of the main problems for ship safety.
 In this report effect of grooving on static strength of corroded fillet welded joints for ship structure is investigated with experimental result and FEM analysis. Four points bending (4PB) test was conducted with T-shape specimen (TSS) without bracket plate against lateral deflection of web plate and the test result was compared with 4PB test result using a half size model specimen of hold frame of Cape-size bulk carrier (SMS). It is mainly obtained that in case of grooving in compressive stress region applied by bending moment, at fillet welded joint, maximum load occurs at lateral deflection of web plate and grooving width and grooving depth effects maximum load. There is no precise difference between 4PB test result with TSS and that with SMS. There is precise effect of inclined angle (20°) on the maximum load and is a little effect of Face-shape on it.
 
Words: Fillet Welded Joint, Corrosion, Grooving, Local Strength of Ship Structure. Static Strength
 
1. 緒言
 船舶の経年使用時の安全性を確保するためには、船体構造部材の腐食衰耗による強度低下を正確に把握しておく必要がある。現在、溝状腐食(グルービング)や孔食に関する研究を行っている1)〜5)。前前報1)では、経年船の溝状腐食した溶接継手等の試験片を用いた静的強度試験を行い、溝状腐食した隅肉溶接部の、単純引張、単純せん断、単純曲げ応力状態での静的強度を求めるとともに、腐食衰耗による金属組織的な静的強度の変化は少なく、溝状腐食した溶接継手の静的強度は、溶接金属やウェブの残存断面積でほぼ決ること等を明らかにした。即ち、溝状腐食による隅肉溶接部の静的強度を検討する際には、溶接部に機械加工等による溝を有する試験片を用いた検討が有効であることが分かった。また、前報2)では、“船体隅肉溶接部の曲げ圧縮強度に及ぼす溝状腐食の影響”について、断面積が1/4となるケープサイズバルクキャリア倉内肋骨の1/2部分構造モデル試験体でウェブの支点に横倒れ拘束用ブラケットがある場合(Fig. 1参照)の四点曲げ試験結果を報告した。本報では、引き続き、長いホールドフレームの中間部分等を想定したウェブの両端部を拘束していない自立型防撓材の場合(Fig. 2参照)の曲げ圧縮強度に及ぼす溝状腐食の影響について検討した。
 主な検討項目は以下である。
(1)溝状腐食の程度の影響:溝深さ、溝幅
(2)ウェブの傾斜角度の影響:20°(一例として)
(3)フェイス形状の影響:T型(両側)、L型(片側)
 
Fig. 1 Small Model Specimen (SMS) 2)
 
Fig. 2 T-Shape Specimen (TSS)
 
2. 試験体
 本報では、前報2)と同様に、外板(板厚19mm)、ウェブ(板厚6mm)、フェイス(板厚10mm)にKA32鋼板を用い、溶接材料B17の手溶接で隅肉溶接を行い、Fig. 2に示したようなT字型の試験体を製作した。この試験体の外板部分を4点曲げすることにより、外板とウェブの隅肉溶接部及びウェブの面外変形抵抗を求めた。ここに、外板とウェブの隅肉溶接は連続溶接で、基本溶接脚長(L0)は4mmとした。溝付試験体の場合、機械切削・グラインダー加工で隅肉溶接部に溝加工を行い、目標脚長(L)を得た。溝幅(W)は、ウェブと外板で同じで、6, 15, 30, 60mm(W/T0=1, 2.5, 5, 10)とした。また、外板、溶接金属部、ウェブとも同じ溝深さ(D)に加工した。従って、模擬腐食部分のウェブ板厚(T)は、ウェブの元板厚(T0)から2Dを引いた値である。この溝部分のウェブの板厚(T)は、元板厚の75%(4.5mm)(L75)と50%(3mm)(L50)の2種類とした。隅肉溶接部の形状は形取り材で確認した。尚、ウェブの元板厚が6mmで隅肉溶接の元のど厚(N0)が約3mmであることから、α値(ウェブ板厚÷溶接のど厚合計)は1である。溶接のど厚もウェブと同様に減少していることから、α値は常に1である。本報では、ウェブの傾斜角度の影響を調べるための傾斜角度は20°のみとした。フェイスは、両側に張り出したT型(幅100mm)、片側だけのL型(幅56mm)とした。Fig. 3参照。
 
Fig. 3 Definition of specimens
 
 ここに、試験体No.の添え字は、T: 両側フェイス、L: 片側フェイス、ia: 傾斜継手をそれぞれ示す。各試験体の溝形状は、実験結果と共にTable 1にまとめて示す。


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