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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


5.2 過渡応答特性
 前節で設計された[制御仕様2]を満足するゲインを用い、制御対象の応答特性を調べる。
 制御対象はSR108コンテナー船の線形モデル(線形運動方程式)と非線形モデル(非線形運動方程式)である。
 Fig. 8に線形モデルを制御対象とした時の、回頭角のステップ応答とその時の舵角を示している。舵角は指令値を直ちに実現できると仮定している。船速は12ノット、目標値は10°のステップ入力である。回頭運動の伝達特性は二次系として表されるので、定常値の63.2%に達する時間はTcよりわずかに大きくなるが、オーバーシュートも定常位置偏差も生じておらず、[制御仕様2]を完全に満足している。
 制御対象が線形モデルの場合は、目標値の大きさや船速が異なっても、(12)式で得られるゲインを用いれば[制御仕様2]を完全に満足することができる。
 
Fig. 8  Step responses of heading angle and rudder angles for linear model at different Tc's (U0=12 knots)
 
 Fig. 9以降は、SR108コンテナー船の非線形モデルを制御対象とした場合である。舵取機は時定数1秒の一次遅れ特性を有し、飽和特性は、最大舵角35°、最大転舵速度4.0 deg/secと仮定している。舵の形状と要目は文献4)に掲載されているので省略する。
 Fig. 9は、指定された相当時定数(応答速度)が回頭角のステップ応答に及ぼす影響と舵角を示す。初期船速は12ノット、目標値は10°のステップ入力である。
 Tcが小さく(応答が速く)設定された時の回頭角応答の立ち上がりは、舵取機の飽和特性に依存するので、Tc=10秒では定常値の63.2%に達する時間は倍の20秒を超えている。また、回頭角速度の制動が遅れるためオーバーシュートが生じている。このように舵取機が有する飽和特性によって実際の舵角は指令値から遅れ、更に操縦運動の非線形影響もあるので、Tcが小さい時の応答はFig. 8の応答より遅れ、オーバーシュートが生じる場合もあり、舵取機の時定数が大きければその影響は更に大きくなる。わずかではあるが定常位置偏差も生じる。しかし、Tcが大きくなるにつれて応答遅れの差は縮まってくる。
 
Fig. 9  Step responses of heading angle and rudder angles for nonlinear model at different Tc's (U0=12 knots)
 
 Fig. 10とFig. 11は、船速が回頭角のステップ応答に及ぼす影響と舵角を示す。
 Fig. 10は、目標値は10°のステップ入力、Tc=10秒、初期船速が6、12、24ノットの場合である。舵力の大きさはほぼ船速の自乗に比例する。従って、船速が大きくなれば操舵によって得られる舵力も大きくなるので、計画された時定数に近づいてくる。船速が小さくなれば、操舵によって得られる舵力も小さくなり、転舵速度と舵角の飽和により回頭角速度の制動が遅れるため、ステップ応答は計画された相当時定数から大きく遅れ、オーバーシュート量も大きくなる。
 Fig. 11は、Tcだけを40秒に変更した場合である。計画された応答速度を実現するためにはFig. 10の場合ほど大きな舵力を必要とせず、舵取機の飽和特性や船速の影響は小さくなる。
 
Fig. 10  Step responses of heading angle and rudder angles for nonlinear model at different ship speeds (Tc=10 sec)
 
Fig. 11  Step responses of heading angle and rudder angles for nonlinear model at different ship speeds (Tc=40 sec)
 
 Fig. 12とFig. 13は、目標値の大きさが回頭角のステップ応答に及ぼす影響と舵角を示す。
 Fig. 12は、初期船速12ノット、Tc=10秒、目標回頭角を10°、20°、30°、40°のステップ入力とした場合の応答である。相当時定数が小さい時には、目標回頭角が大きい程応答の遅れも大きくなり、[制御仕様2]を満足することができない。すなわち、応答の立ち上がりが舵取機の飽和特性に依存することを示している。
 Fig. 13は、Tcだけを40秒に変更した場合である。Tcが40秒程度以上になると、舵取機の飽和特性の影響はかなり緩和され、目標回頭角10°から20°程度までは、応答速度はほぼ満足されている。しかし、目標回頭角がそれより大きくなってくると、舵取機の飽和特性による応答の遅れは次第に大きくなり、その影響は無視できなくなる。
 
Fig. 12  Step responses of heading angle and rudder angles for nonlinear model for different step inputs (Tc= 10 sec, U0=12 knots)
 
Fig. 13  Step responses of heading angle and rudder angles for nonlinear model for different step inputs (Tc=40 sec, U0=12 knots)
 
 船舶の誘導制御を実施する際にステップ状の目標値を与えることはないと思われるが、目標値設定については、舵取機の飽和特性の影響が生じないよう留意する必要がある。また、通常船速における最大操舵角は、非常時を除いては10°〜20°程度であるので、操船者が危険を感じる横揺が生じないような操舵角となる目標値設定が必要である。
 
6. 結言
 舵で回頭角を制御する3変数フィードバック制御システムのゲインと応答の関係について解析的に検討し、計算機シミュレーションを実施した結果、次の結論を得た。
1. ゲインKβ、Kγ、Kφ及び相当時定数(応答速度)Tc間の関係式を導いた。
2. 時不変システムにおける[制御仕様2]を満足するゲインから、時変システムにも適用可能なゲインが得られる算式を導いた。
3. 舵取機の特性は、制御システムの過渡応答特性に大きな影響を与える。
 以上の得られた結論は、運動方程式の流体力がMMGモデルによってモデル化され、かつシステムが安定な最小位相推移系であれば一般性は失われない。
 モデル化誤差及び外乱に対するロバスト性についても検討しなければならないが、これは次の機会に譲ることにする。
 本論文は、操縦微係数を既知と仮定して議論を進めてきたが、現実は不明の場合が普通である。この場合の方策として、操縦性指数K、Tを利用することが考えられる。K、Tから(4)式の係数a21、b21が近似的に求められ、(10)式からKφとKγが推定できる。次に、Fig. 3の制御系による船速を変えた数回の船のステップ応答試験からKβを探索できる可能性があると考えており、今後更に検討を進める予定である。
 
参考文献
1)小川原陽一、小山清文、宮崎進、岩本才次:船舶の操縦運動制御システムの新しい設計法の試み、西部造船会会報 第94号、(1997)平成9年8月、pp.101-109。
2)小林尚登:オーバーシュートと零点の関係、計測自動制御学会論文集第21巻 第3号、(1985)昭和60年3月、pp.305-307。
3) Kijima, K, Katsuno, T., Nakiri. Y., and Furukawa, Y: On the manoeuwing performance of a ship with the parameter of loading condition, Journal of The Society of Naval Architects of Japan, Vol. 168 (1990) pp. 141-148.
4)第108研究部会 高速貨物船の波浪中における諸性能に関する研究報告書、社団法人日本造船研究協会、(1970)昭和45年3月。


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更新日: 2020年3月21日

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