日本財団 図書館


ストレートリーディングエッジプロペラとチップレーキプロペラのキャビテーション試験
正員 山崎正三郎*  正員 岡崎全伯*
 
* ナカシマプロペラ(株)
原稿受理 平成17年10月14日
 
Cavitation test on a straight leading edge propeller and a tip rake propeller
 
by Shosaburo Yamasaki, Member
Akinori Okazaki, Member
 
Summary
 The cavitation phenomena, such as tip vortex cavitation, leading edge vortex cavitation or sheet cavitation on a propeller increase vibration and noise. In order to reduce vibration and noise, the extent and the collapsing behavior of cavitation should be controlled. In this paper, three types of propellers were designed; a standard propeller, a straight leading edge propeller (SLEP) , and a backward tip rake propeller (BTRP) having the tip rake to the pressure side. With these model propellers, open water test, the observation of cavitation by means of a high speed video camera, and the measurement of the pressure fluctuations were conducted. For all three cases, sheet cavitation was involved into tip vortex cavitation around the blade tip and for the case of SLEP, sheet cavitation was separated on the blade surface. For the cases of SLEP and BTRP, the blade surface was attacked by cloudy sheet cavitation connected with tip vortex cavitation and this area was eroded. And the propeller open efficiency of SLEP was better than that of the standard propeller and the pressure fluctuations of BTRP were lower than those of the standard propeller.
 
1. 緒言
 伴流中で作動する舶用プロペラでは、前縁はく離渦キャビテーション、シートキャビテーション、クラウドキャビテーションおよびチップボルテックスキャビテーション(以下TVC)などが発生し、これらのキャビテーションの挙動が振動・騒音の増加やエロージョン発生の原因となっている。1)
 前縁はく離渦は翼中央付近の前縁で発生して、前縁に沿って翼先端方向に流れる。とくに後退角のついたハイスキュープロペラではその成長が著しく、翼先端近くで翼面から離れ、太い帯状のキャビテーションとなって後方に流れ去り、振動・騒音の原因となる。その対策として、サイドスラスタでは、通常のバックワードスキューのかわりにフォワードスキューインペラが実用されている。2), 3)そこで今回は前縁はく離渦の成長を弱めるためにストレートリーディングエッジプロペラ(以下SLEP)を試みることにした。
 また翼先端付近のレーキを局所的に変化させたプロペラがいくつか検討されている。その結果では、翼先端付近のレーキをFACE面からBACK面方向に曲げるとプロペラ効率がアップしている。キャビテーション発生量もそれほど変わらないようだが、キャビテーション発生側が凹になっているためエロージョンが懸念される。そこで今回は翼先端付近のレーキをBACK面からFACE面方向に曲げたプロペラ(バックワードチップレーキプロペラ)(以下BTRP)を試みることにした。
 本研究ではコンテナ船を対象として、揚力面理論を用いてSLEPとBTRPを設計した。次に、これらの模型を製作してプロペラ単独性能試験とキャビテーション試験(キャビテーション観察、高速度ビデオカメラ撮影、船尾変動圧力計測)を行い、性能面の特徴、キャビテーション、とくに消滅時の挙動ならびに実用化の可能性について調査した。
 
2. ストレートリーディングエッジプロペラとチップレーキプロペラの設計と単独性能計算
2.1 プロペラ設計
 コンテナ船を対象としてプロペラ揚力面理論を用いて基準プロペラ、SLEP、BTRPの3個のプロペラを設計した。プロペラ設計条件をTable 1、プロペラ主要目をTable 2、伴流分布をFig. 1、模型プロペラの写真をFig. 2a、2b、2cに示す。(元来、翼数は6翼であるが、今回は模型試験のために4翼に変更し、それに合わせて主機出力等も変更した。)
 プロペラ番号をそれぞれ(A)、(B)、(C)として、設計の概要を下記する。
PNO.(A):比較の基準となるプロペラ。4翼、直径8.2m、展開面積比0.65、スキュー30°とした。Burrillのキャビテーション判定図表値は、4.3%(Full/MCR、水深:シャフトセンター位置)である。
PNO.(B):前縁はく離渦の成長を弱めるために設計したストレートリーディングエッジプロペラ(SLEP)。翼前縁の後退角をなくすため翼前縁輪郭をほぼ直線とした。その結果、かなり翼先端幅広となるのでキャビテーション性同一条件として(通常の展開面積比同一の代わりに)0.8Rの翼幅同一条件を与えた。これによりPNO.(A)と比較して0.8Rより翼先端では幅広、0.8Rより翼根側では幅狭となり、展開面積比は0.615となった。さらに半径方向の循環分布が同一となるようにキャンバーをPNO.(A)と一致させ、揚力面理論計算結果をもとに翼先端部のピッチを増加させた。
PNO.(C):翼先端で局所的にFACE面方向ヘレーキを付けたプロペラ(バックワードチップレーキプロペラ:BTRP)。0.7Rより先端側でBACK面からFACE面方向へ翼先端で約5°レーキを付加し(Fig. 2c PNO.(c)矢印周辺)、それ以外の形状はPNO.(A)と全く同じとした。
 
Table 1 Propeller design condition
Kind of ship Container
BHP (MCR) (for strength) (kW) 32,940
N (MCR) (for strength) (rpm) 100.0
BHP (CSO) (for pitch) (kW) 28,000
N (CSO) (for pitch) (rpm) 94.7
RPM margin (%) 4.5
Vs (CSO) (knot) 26.62
1-ws (CSO) 0.800
Immersion (m) 7.5
 
Table 2 Propeller main dimension
PNO. (A) (B) (C)
Number of Blades 4
Diameter (m) 8.2
Expanded Area Ratio 0.65 0.615 0.65
Pitch Ratio (0.7R) 1.024 1.035 1.024
Skew Angle (deg.) 30° 10.5° 30°
Type - SLEP BTRP
 
Fig. 1 Wake Pattern
 
Fig. 2a PNO. (A)
 
Fig. 2b PNO. (B)
 
Fig. 2c PNO. (C)
 
2.2 プロペラ単独性能計算
 プロペラ単独性能の違いを調べるために、プロペラ揚力面理論計算(MF法4)(以下LST))およびプロペラ揚力体理論計算(SQCM5)、LBT6))によりプロペラ設計点(一様流中)で性能計算した。計算結果をTable 3a、3b、3cに示す。
 各計算方法ともに実験値に一致させるための修正は行っていないので、絶対値の評価はあまり参考とならない。プロペラ間の差についてみると、LSTはPNO.(A)、(B)、(C)にほとんど差がない。SQCMでもKT、KQともにそれほど大きな差はないが、LBTでは少し差が見られ、大きい方からPNO.(B)、(C)、(A)の順となっている。プロペラ効率は、SQCMではPNO.(B)が最も高いが、LBTではPNO.(C)が最も高い。これらの理論計算結果に一定の傾向が見られないことから、このような形状の違いは、これらの理論計算では評価し難いと思われる。
 
Table 3a  Propeller open characteristics at design point (LST)
PNO. (A) (B) (C)
J 0.810
KT 0.151 0.151 0.150
10KQ 0.268 0.268 0.266
ηo 0.726 0.726 0.726
 
Table 3b  Propeller open characteristics at design point (SQCM)
PNO. (A) (B) (C)
J 0.810
KT 0.145 0.144 0.144
10KQ 0.274 0.268 0.271
ηo 0.684 0.692 0.686
 
Table 3c  Propeller open characteristics at design point (LBT)
PNO. (A) (B) (C)
J 0.810
KT 0.123 0.142 0.136
10KQ 0.211 0.248 0.232
ηo 0.748 0.739 0.754


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION