3. ストレートリーディングエッジプロペラとチップレーキプロペラの模型実験
3.1 プロペラ単独性能試験
PNO.(A)、(B)、(C)の模型プロペラ(直径250mm)を製作して明石船型研究所の曳航水槽にてプロペラ単独性能試験を実施した。Kempfのレイノルズ数が6x105となるようにプロペラ試験回転数を10〜11rpsとした。プロペラ設計点での単独性能をTable 4で比較している。
PNO.(A)と(C)についてJ=0.810においてKT、KQ、ηoともほとんど差はない。一方、PNO.(B)のKT、KQは10%近く小さく、ηoはKT/J2一定条件で約1.5%良い結果となっている。
前述の理論計算結果と比較すると、PNO.(B)のKT、KQが小さくなる傾向はいずれの計算結果にも見られず、その原因は特定できていない。
Table 4 |
Propeller open characteristics at design point (Experiment) |
PNO. |
(A) |
(B) |
(C) |
J |
0.810 |
KT |
0.144 |
0.132 |
0.143 |
10KQ |
0.261 |
0.236 |
0.260 |
ηo |
0.710 |
0.723 |
0.712 |
PNO. |
(A) |
(B) |
(C) |
KT/J2 |
0.227 |
J |
0.804 |
0.789 |
0.803 |
ηo |
0.707 |
0.718 |
0.709 |
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3.2 キャビテーション試験
前述の3種の模型プロペラを使用してIHI横浜研究所のキャビテーションタンクで伴流中のキャビテーション試験を実施した。ワイヤメッシュスクリーンを用いてFig. 1の伴流分布をシミュレートし、通常のキャビテーション観察、高速度ビデオカメラによるキャビテーション撮影および船尾変動圧力計測を行った。使用した高速度ビデオカメラは、(株)ノビテックのPhantom V7.1であり、約10,000コマ/秒で撮影した。試験回転数は約25rpsであるから、約400コマ/回転、すなわち約1°に1コマ撮影したことになる。
船尾変動圧力はプロペラ直上に挿入したアクリル板に埋め込んだ8個の圧力センサにより計測した。試験状態をTable 5に示す。キャビテーション観察および高速度ビデオカメラによるキャビテーションの撮影はBallast/CSO状態、船尾変動圧力計測はFull/MCR状態とし、キャビテーション数はトップポジションの0.7R(R:プロペラ半径)位置で設定した。
Table 5 Cavitation test condition
PNO. |
(A) |
(B) |
(C) |
Pressure measurement |
KT |
0.152 |
0.146 |
0.152 |
(Full/MCR) |
σn |
1.32 |
1.27 |
1.32 |
Cavitation observation |
KT |
0.141 |
0.136 |
0.141 |
(Ballast/CSO) |
σn |
1.13 |
1.09 |
1.13 |
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3.2.1 キャビテーション観察
デジタルカメラで撮影したキャビテーション画像をFig. 3a〜3fに、高速度ビデオカメラで撮影した画像の抜粋をFig. 4a、4b、4cに示す。なお翼面上のキャビテーションの最大発生角度と消滅角度はTable 6の通りである。
PNO.(A)と(C)は最大発生時で、およそ0.6Rから翼先端にかけてキャビテーションが発生し、PNO.(B)は0.5R近くまで発生した。いずれのプロペラともにプロペラ翼前縁にカーボランダムを塗布していないため、前縁はく離渦キャビテーションが綺麗に発生せず、前縁沿いに翼先端方向へ流れる様子は観察できなかった。
PNO.(A)と(C)の翼前縁で発生したシートキャビテーションは翼面上を移動して翼先端のTVCに巻き込まれる様子が見られた。またシートキャビテーションの一部がクラウド状になっていたが、この付近のプロペラ表面にはエロージョンの兆候は見られなかった。PNO.(A)のTVCはFig. 3bおよびFig. 4a 11.7msに示すように、翼先端の下流で急激な収縮・リバウンド(以下 バースティング)を起こす様子が見られた。しかしPNO.(C)ではシートキャビテーションがTVCとつながった状態でバースティングを起こし、Fig. 3fおよびFig. 4c 10.0msに示すように0.9〜0.95Rの翼後縁がたたかれながら消滅したため、Fig. 5のように後縁部のアルマイト加工がはがれた。
PNO.(B)については、Fig. 4bに示すようにシートキャビテーションが翼先端方向と0.7Rの後縁方向の2つに分かれる様子が見られた。まず翼先端近くのシートキャビテーションは、先端付近でTVCに巻き込まれるが、内側のシートキャビテーションは0.7Rの後縁方向に流れて、最後にTVCとつながった状態でTVCがバースティングを起こすと同時にFig. 3dのように0.6〜0.7R付近の翼面上で消滅した。この結果、Fig. 6に示すようにキャビテーションが消滅した周辺の0.6Rと0.7Rを示す黒マジックの一部が消えた。Fig. 5、6ともにキャビテーションエロージョンの兆候を示している。
Table 6 Comparative table of cavitation condition
PNO. |
Max. generating angle |
Disappearance angle |
(A) |
30〜40° |
80〜90° |
(B) |
0〜10° |
50〜60° |
(C) |
30〜40° |
80〜90° |
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Fig. 3a Cavitation of PNO.(A) (40°)
Fig. 3b Cavitation of PNO.(A) (90°)
Fig. 3c Cavitation of PNO.(B) (0°)
Fig. 3d Cavitation of PNO.(B) (60°)
Fig. 3e Cavitation of PNO.(C) (40°)
Fig. 3f Cavitation of PNO.(C) (90°)
Fig. 4a |
Cavitaiton patterns of PNO.(A) with high speed vide camera |
Fig. 4b |
Cavitation patterns of PNO.(B) with high speed video camera |
Fig. 4c |
Cavitation patterns of PNO.(C) with high speed video camera |
Fig. 5 Cavitation erosion of PNO.(C)
Fig. 6 Cavitation erosion of PNO.(B)
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