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3. 自由横揺れ試験による減衰の計測
 Fig. 1に示した供試模型船について、停止状態の自由横揺れ模型試験を行った結果を以下に示す。供試模型船および帆の主要目をTable.1に示す。
 
Table.1 Principal dimensions of ship model.
Lpp (m) 1.9062 (m) 0.0485
B (m) 0.3672 Tφ (sec) 1.29
dm (m) 0.1469 ∇ (m3) 0.0756
AS (m2) 0.07 (=0.4 x 0.35) zS/dm 2.38
aspect r. 2.29 AS/Ld 0.250
 
Fig. 4 Arrangement for experiment.
 
Fig. 5 Ship and sail model.
 
 試験はFig. 4に示すように、造波と送風が可能な北海道大学水産学部の長水槽において実施した。模型船は、rollをできる限り拘束しないよう船首と船尾を2本のワイヤーでyawとswayをヒンジ拘束し、制御定数:kを種々に変えて実験を行った。なお、横揺れの回転軸は重心高さとした。模型帆はFig. 5に示すように、高さ400mm×底辺350mmのビニルシートで製作した。マスト・ブームはアルミパイプを使用し、帆の旋回による重心の横方向変化による横揺れへの影響を極力小さくした。帆の角度はサーボモータにプーリー及びワーヤーを介してマスト全体を回転させる機構とした。また風速は6m/s(一定)とした。解析した減滅曲線の線形係数aを(5)式あるいは(6)式による理論式と比較してそれぞれFig. 6、Fig. 7に示す。図中の○□×▲■●の各印はk=2, 1, 0.5, 0(固定), -0.5, -1, -2. における線形の減滅係数であり、各曲線が上記と同じたに対応する理論推定結果である。
3.1 帆の揚力が主体で迎角が小さい場合
 揚力が主体の場合、減滅曲線の線形係数aをFig. 6に示す。相対風向が正面から約115°まではkの極性が負、l15°から後方の風では正の場合に帆によるアクティブな減滅係数が増加し、横揺れを減揺することができる。また、それぞれkの絶対値を大きくすると、その大きさにほぼ比例して横揺れの減滅係数が増加することが実験でも確認できる。ここでkの極性を逆にすると、減衰が悪くなるばかりか、帆が無い場合の減滅係数より低下し、自由横揺れ試験でも横揺れが時間と共に増加する自励振動状態が観測された。また、相対風向が真横付近では、帆の揚力の大半が船の前後方向の推進力となり、横方向の力は帆の抗力だけになるから、制御定数を大きくしても帆による減揺効果は小さい。
 
Fig. 6  Comparison of extinction coefficient for various roll-rate feedback gain k, between measured and calculated (α=10°).
 
3.2 帆の抗力が主体で迎角が大きい場合
 抗力が主体の場合の減滅曲線の線形係数aをFig. 7に示す。前述とは逆に、相対風向が正面から75°まではkの極性が正、75°から後方の風では負の場合にアクティブな減滅係数が増加し、横揺れを減揺することができる。また、それぞれkの絶対値を大きくすると、その大きさに比例して横揺れの減滅係数が増加するが、前述の3.1より増加は少ない。これは主に、抗力が主体の場合の揚力係数勾配の絶対値が小さいことによっている。
 
Fig. 7  Comparison of extinction coefficient for various roll-rate feedback gain k, between measured and calculated (α=80°).


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