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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


5. 水槽試験による船型比較
5.1 実験方法
 先に述べたように、数値計算では船体近傍場の波形の評価しかできないため、船型を最終的に決定するには不充分なものに止まらざるを得ない。そのため、数値計算結果の検証を兼ねて、東京大学工学部船型試験水槽で抵抗試験および波形解析を行った。
 供試模型は実船の20分の1スケール。Lppは「ぐらばあ」、新船型についてそれぞれ1.6, 1.9mである。供試模型の主要目をTable 4に示す。
 Fig. 14に模型、水槽側壁と波高計の位置関係を示す。また、Fig. 15に水槽試験の様子を示す。
 
Table 4 Principal particulars of the models.
Graba Type-B
LOA m 1.78 2.00
Lpp m 1.60 1.90
Displacement
kg
67.1 65.2
Wetted suface
m2
0.649 0.543
 
Fig. 14 Towing tank test layout.
 
Fig. 15  A snapshot of the towing tank test. (Type-B model)
 
 双胴船対称面の対称条件を実現するために、水槽の片側壁面を利用している。これにより、幅の狭い水槽でも遠方(船体中心線より船長の1.75倍外側)の波高を計測すると同時に模型制作費を節約することが可能となった。長水槽における曳き波の評価としては、比較的十分に遠方場での計測が可能になったと考えられる。
 また、計画船であるB船型は「ぐらばあ」と同一排水量としたが、これは船長を大きくする一方で、旅客定員数減と重量軽減を図った場合を想定したものである。しかし、更なる馬力低減と曳き波問題の解決のためには船体をアルミ合金製とする案も考えられた。この時、予想される排水量は原船型の約70%と推算された。この様な事情を考慮し、本章の検討では原船型と改良船型であるB船型に加え、B船型の喫水を浅くし、排水量を70%とした状態も加えることとした。
5.2 抵抗特性実験結果
 「ぐらばあ」、B船型、および排水量を70%に減らしたB船型のFnと全抵抗係数Ctの関係をFig. 16に示す。全抵抗の無次元化には浸水表面積を用いている。また、速力Vと有効馬力EHPの関係をFig. 17に示す。
 
Fig. 16  Relations between Fn and Ct ("Graba", Type-B, Type-B of 70% load).
 
Fig. 17  Relations between V and EHP ("Graba", Type-B, Type-B of 70% load).
 
 この結果、異なった計画航海速力でのCtはB船型(16kt, Fn=0.425)では「ぐらばあ」(122kt, Fn=0.354)の約10%増となったが、排水量を70%にすると約5%減少した。有効馬力(EHP)に換算すると、B船型では307馬力から941馬力へと207%増加したのに対し、排水量を70%にすると561馬力へと83%の増加にとどまった。
 
5.3 曳き波の評価
 次に、それぞれの計画航海速力における曳き波の様子をFig. 18〜20に示す。
 
Fig. 18  Time history of wake height at Y=1.75Lpp ("Graba").
 
Fig. 19  Time history of wake height at y=1.75Lpp (Type-B).
 
Fig. 20  Time history of wake height at y=1.75Lpp (Type B of 70% load).
 
 この結果から排水量を70%にすることで曳き波の最大波高が以前の波高の57%に大幅に低減しており、高速化前の旧艇「ぐらばあ」と同レベルに抑えられていることがわかる。
 また、抵抗についても排水量を70%にすることで必要馬力の増加が約40%にとどまっており、計画された計画速力で曳き波軽減を達成し、抵抗増加を防ぐためには船型改良と同時に、アルミ構造の採用による船体の軽量化も必要であることを示している。
 
6. 結論
 非対称なdemi-hullを持つ双胴船型を取り扱うことの出来るCFDコードを開発し、開発したコードによる数値計算によって曳き波の評価と馬力の推定を行いながら船型開発を行い、非対称船型やセミSWATH船型を開発できることを示した。また、遠方場の波高を評価するため、水槽試験による波形解析を併用した。
 適用事例として、長崎湾内の交通艇の船型開発(2002年実施)を取り上げた。計画速力を大幅に上昇させながら、曳き波を低減させるという大変難しい条件下のものであったため、アルミ船体構造の採用による排水量の30%削減が不可避との結論となった。しかしながら、曳き波を原船型以下のレベル、EHPを約250馬力増のレベルに抑えられることが確認できた。
 以上のように、CFDと水槽試験を併用することにより、曳き波と馬力の両方を低減させる船型開発の手法を示した。
 
参考文献
1) H Kofoed Hansen, A C Mikkelsen: Wake wash from fast ferries in Denmark, FAST97 Conference Papers, Vol. I, pp.471-478, 1997.
2) Stan Stumbo, Ken Fox and Larry Elliott: Hull form considerations in the design of low wake wash catamarans, FAST '99 Conference Papers, pp. 83-90, 1999.
3 ) Ernst Bolt: Fast ferry wash measurement and criteria, FAST2001 Conference Papers, Vol. I, pp.135-148, 2001.
4) H. Miyata, S. Nishimura: Finite difference simulation of nonlinear waves generated by ships of arbitrary three-dimensional configuration, Journal of Computational Physics, Vol. 60, pp.391-436, 1985.
5)奥村真史:密度関数法を用いた高速船型の造波シミュレーション, 東京大学修士論文, 1999.
6)松尾博志:CAD/CFD統合による船舶設計システムのフェリー設計への応用, 東京大学卒業論文, 2000.


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