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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


太平洋定期船航路直行便のシミュレーションによる評価
学生員 田中大士*  正員 勝原光治郎**
正員 大和裕幸*
 
* 東京大学大学院新領域創成科学研究科
** (独)海上技術安全研究所
原稿受理 平成17年10月14日
 
Evaluation of Direct Transpacific Liner Service by Simulation
 
by Hiroshi Tanaka, Student Member
Mitujirou Katuhara, Member
Hiroyuki Yamato, Member
 
Summary
 Transpacific trade grows 10% per year and shipping companies have to consider the introduction of new transportation systems to adapt to this rapidly changing business environment. The changes of the freight flow and the competitiveness of the new business are major concerns when the new transportation system is introduced. Therefore, in this paper, we establish a discrete simulation model that the cargoes' choice of transportation route is expressed in logit model to evaluate the effect of new transportation system. The parameters of the model are estimated by the PIERS data of August 1999. The simulation result is compared with the PIERS data and it is shown that our model reproduces the real situation of freight flow well. The case that the new liner connects nonstop from Hong Kong to Los Angeles / Long Beach in the shortest time is discussed, and our simulation model proves that new service is competitive.
 
1. 緒言
 近年の国際コンテナ貨物の流動量は著しく増加している。国土交通省の海事レポート1)によるとアジア・アメリカ間の流動量は年率約10%の成長を続けている。このためアジア・アメリカ間定期船の航路編成が著しく変化し、各船社とも各種の運航システムを検討する必要に迫られている。
 運航システムの検討を行う際には、航路の変更や港湾の荷役能力の変化によって貨物流動がどのように変化するか、それが経済的に成立するか、ということが問題となる。これらは今までに多く議論されてきているが、定量的な計算例には均衡モデルを利用する方法や、時間の流れに沿って個別にモデル化した貨物や船舶を行動させるような離散シミュレーションを利用する方法が提案されてきている。
 均衡モデルを利用した例としては家田ら2)、黒田ら3)の研究が挙げられる。前者はアジア圏を対象として、総合的なネットワーク分析を主体とした国際コンテナ流動を再現するモデルを構築している。後者は船社、荷主という2種類の経済主体を想定し、それぞれに対して完全競争市場の成立を仮定して国際定期コンテナ流動モデルを開発している。
 離散シミュレーションを利用した例としては国内の物流を対象とした大和ら4)、松倉ら5)、間島ら6)のようなものがある。大和らは東京―北海道間において荷主の輸送機関選択行動を犠牲量モデルで表現し、市場による時間の制約も考慮した輸送機関の設計やスケジューリングを行う手法を提案している。松倉らは国内セメント海上輸送を対象として、与えられた輸送需要からタンカーがそれぞれ自律的に行動計画を作成するマルチエージェント型のシミュレータを開発している。また、開発したシミュレータを用いて複数の企業が協力して輸送を行う場合の、物流の効率化効果について検討を行っている。間島らはマルチエージェントシミュレーションにより、河川を利用した災害時の貨物輸送能力を評価している。
 上記の2つの方法を比較した場合、離散シミュレーションは船社、荷主を個別に扱うことが可能であり、また、時間の流れに沿った貨物流動の変化の様子を表現することが可能であることから、均衡モデルを利用する方法よりも環境の変動が激しい物流の状況を現実に近い形で表現することが可能であると考えられる。よって、本論では直行便の評価・検討のために離散シミュレーションの手法を採用する。データは1999年8月のPIERS(Port Import Export Reporting Service)の米国輸出入貨物データを用い、貨物の航路選択行動を人間の選択行動を表現するモデルとして多く用いられているロジットモデルで表現したコンテナ貨物流動シミュレーションモデルを提案する。これは勝原の研究7)を発展させたものとなる。
 荷主の要望は大きくは運賃の低下とリードタイムの短縮、およびその他に分けられる。近年のコンテナ船の大型化は規模の経済によるコンテナ1個あたりのコスト低減を目指しており、運賃低減の要望に対応するものである。一方、近年の航路編成では航路数が増加し、航路周回週数の低下が進んでいる。特に太平洋定期船航路においては中国―北米の直行便が増加し、6週航路の減少と5週航路の増加がすすんでいる。これはリードタイム短縮の要望に対応するものとなっているが、運賃を押し上げる要因にもなり得る。これらコンテナ船の大型化と航路数の増加という2つの傾向は貨物量の増加局面では同時に可能な方策であるが、運賃とリードタイムのどちらを優先させるかは未解決の課題であり、定期船のビジネスモデルに関わる重要な知識である。
 以上のような状況を踏まえ、本論ではリードタイム短縮のサービスとして、特に貨物量が多いためビジネスとして成り立つ可能性が高いと考えられる香港―ロサンゼルス(LA)/ロングビーチ(LB)間に高速かつ寄港数の少ない直行便を導入することについて、提案したシミュレーションモデルによる航路の競争力、他航路の集荷力の変化に関する評価を行う。
 
2. 太平洋定期船航路の実態と変遷
 国土交通省の『平成17年版海事レポート』によると、2004年の太平洋航路における貨物量は東航(アジア→アメリカ)が1079万TEU(前年比15%増)、西航(アメリカ→アジア)が393万TEU(前年比5%増)であった。東航では中国発の貨物が最も多く(前年比30%増)、全体の半数以上を占めるに至っているという。西航においても中国向けの貨物量は増加が続いている(前年比14%増)。
 本論では1999年8月のデータを用いてシミュレーションを行うので、1999年のコンテナ荷動きの概要についても述べる。1999年の世界全体のコンテナ荷動き量は国土交通省の『平成12年版日本海運の現況』8)によると3553万TEUであった。そのうち、アジア・アメリカ間航路は東航が599万TEU(8月は56.2万TEU)、西航が316万TEU(8月は22.4万TEU)であり、世界全体のコンテナ荷動き量の25%を占める重要な航路であることがわかる。1999年8月のPIERSの米国輸出入貨物データによると、アジアからの貨物を多く荷揚げしている港はロングビーチ(LBと略記)(18.7万TEU、1999年8月のアジア→アメリカ貨物全体の33.3%)とロサンゼルス(LAと略記)(17万TEU、1999年8月のアジア→アメリカ貨物全体の30.2%)である。また、アメリカヘ向かう貨物は大部分が香港で荷積みされている(21.4万TEU、アジア→アメリカ貨物全体の38%)。香港からロングビーチ、ロサンゼルスヘ輸送される貨物量はそれぞれ7.8万TEU、4.7万TEUであった。このことから、アジア―アメリカ間航路、特に香港―LA/LB間航路に貨物輸送の需要が多いことがわかる。
 次に、太平洋航路に就航している船舶について概説する。Fig. 1とFig. 2はそれぞれ1999年と2004年において太平洋航路に就航している船舶の積載量と速度の度数分布を表したものである。これらは国際輸送ハンドブック9)のデータをもとに作成した。1999年では就航している船舶数が384隻であったが、2004年には492隻に増加しており、特に積載量が4000TEUを超える大型の船舶が増加している傾向にあることが分かる。また、速度の増加とともに24ノット以上の速度で運航している船舶も増加傾向にあるといえる。
 
Fig. 1 Distribution of ship size
 
Fig. 2 Distribution of speed
 
 Table.1、Table.2はそれぞれ太平洋航路におけるアジアの太平洋を渡る前の最終発港、太平洋を渡った後の最初着港について、それらの港が属する国、最終発・最初着となる航路数とその割合をまとめたものである。これらの最終発、最初着港は各航路が最短時間で結ぶメリットがある港である。表を見ると航路数が増加している中で、香港を含む中国の港湾の比率が1999年から2004年にかけて増加してきていることが分かり、近年の中国の経済成長を反映したものになっていると考えられる。また、日本の港湾の地位が低下していることも見て取れる。
 
Table.1  Location of Asian final departure ports and transition of their share
Year 1999 2004
Country Route Share Route Share
Japan 22 48% 22 31%
Korea 9 20% 19 26%
Taiwan 7 15% 9 13%
China 5 11% 20 28%
Singapore 3 7% 2 3%
Total 46 100% 72 100%
 
Table.2  Location of Asian first arrival ports and transition of their share
Year 1999 2004
Country Route Share Route Share
Japan 28 61% 28 39%
Korea 7 15% 13 18%
Taiwan 5 11% 9 13%
China 4 9% 21 29%
Singapore 1 2% 1 1%
Malaysia 1 2% 0 0%
Total 46 100% 72 100%


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更新日: 2019年10月12日

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