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日本船舶海洋工学会論文集 第2号

 事業名 造船学術の振興
 団体名 日本船舶海洋工学会 注目度注目度5


4.2.2 油種の調査
 投入したC重油が微生物分解によりどのように変化するかを,GCによる定性分析により調査した.
 Fig. 12に今回実験に使用したC重油のクロマトグラムを示す.C重油のピーク分布は,C17付近を中心とした分布となっている.規則性のあるシャープなピークは直鎖の炭化水素とみられる.ピーク分布の中央付近でベースラインが山のように盛り上がっているが,これは枝分かれした炭化水素などの成分ピークが重なりあって形成したものと考えられる.
 次に,実験2(100m3)において油分解が進行している過程のバーク堆肥パイルの残留油分(58日時点)の定性分析結果を示す(Fig. 13).クロマトグラムを見ると,投入したC重油そのもののピーク分布とほぼ一致するものの,C重油の組成成分炭化水素のピーク強度は減少していることが確認される.これはC重油に含まれる各種成分がほぼ一様に減少していることを示すが,一方で,C20(エイコサン)部位付近のピークが大きいままであり,一部特異的に残留している成分があることを示している.
 
Fig. 12 Chromatogram (Bunker C, 100ppm)
 
Fig. 13 Chromatogram (58 日時点,1000ppm)
 
4.2.3 微生物相の変化
 これまでに記述したように,杉樹皮製油吸着材は使用後に焼却処分ではなく,吸着材本体が生分解性である特徴を活かし,微生物分解の手法によって油分および吸着材本体を分解し,低い環境負荷かつ安全な形で土壌などに還元しようとする試みをこれまで行ってきた.
 一方,これまでバーク堆肥パイルという活性な微生物活動が行われているフィールドにおいて,油分濃度が減少していくということは確認されていたが,その中にどのような微生物が生息し,油分解に貢献しているかについては確認されていなかった.
 そこで,今回は油分分解処理・堆肥化工程の微生物相を,変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)の手法を用いて特定を試みた.このことは,今後の本技術の実用化に向け,技術自体の信頼性を向上すると共に,分解工程の安定化および再現性確保に資するものと考えられる.
 実験ではサンプルから抽出したDNAにつきDGGEを行い,油分解前後の2サンプルについて比較を行った(Fig. 14).分解前に特異的なもの,分解後に特異的なもの,分解前後で共通のものにつき,16SrDNAのシーケンス解析を行って微生物種を推定した(Table 1).
 
Fig. 14 DGGE Patterns of Before/After Experiment
 
 Fig. 14において,サンプル0〜1は分解前の,サンプル2〜5は分解過程および分解後のDGGEパターンである.Table 1において,「Before」は分解前に特異的なもの,「After」は分解後に特異的なもの,「Common」は両者に共通するものを示す.「Before」は5種中3種がBacillus,「After」は5種中4種がCFB(サイトファーガ・フラボバクテリウム・バクテロイデスグループ)である.CFBは油流出事故のバイオレメディエーションにおいて増え,石油分解菌として働く微生物であるという報告がなされており13),この微生物が今回の実験において油分分解に関与している可能性が示された.
 
Table 1 Identification with 16SrDNA Sequence
Band Sequence with Highest Homology Homology
Before B1 Uncultured firmicute 96.01%
B2 Uncultured firmicute 95.30%
B3 Rhizosphere soil bacterium 86.87%
B4 Rhizosphere soil bacterium 84.56%
B5 Paenibacillus sp. 96.58%
After A1 Chryseobacterium indolthetieum 97.43%
A2 Uncultured bacterium 91.64%
A3 Rhizosphere soil bacterium 92.72%
A4 Uncultured bacterium 92.56%
A5 Uncultured bacterium 95.51%
Common C1 Uncultured soil bacterium 98.27%
C2 Pedobacter sp. 85.50%
C3 Uncultured Bacteroidetes 91.71%
C4 Flavobacteria symbiont 90.86%
C5 Uncultured Bacilli bacterium 94.89%
C6 Uncultured Chloroflexi 96.98%
 
4.2.4 目視観察
 油の臭気については,40〜60日程度までは,本来のC重油の臭気から若干変質した感じを受けるものの,いまだ明確に油の臭気であると判別可能な程度に感じられた.その後は徐々に臭気が変質し,もとの投入物が重油であることを知らない人間には油の臭気かどうか判別がつかない状態に変化した.
 また,60日時点で手指への油の付着は感じられず,周囲の水溜りにおける油膜も観察されなかった.
4.2.5 パイル内の温度
 実験2(100m3)のバーク堆肥パイル内の温度変化をFig. 15に示す.実験当初はバーク堆肥の活性な状態とされる60℃前後を保っていたが,徐々に温度が低下する傾向が見られた.開始後90日時点からはほぼ50℃以下を推移し,180日時点でほぼ40℃程度となった.
 温度が低下する原因は,微生物活動の低下,外気温の低下などが考えられる.また,切り返し直後は温度が一旦低下し,その後上昇する傾向があるが,この現象は通常のバーク堆肥製造過程でも同様であり,好気発酵が酸素供給により活発化することを示していると考えられる.
 
Fig. 15 Temperature of Experiment Pile
 
5. 結言
 本研究により得られた知見は以下のとおりである.
・杉樹皮製油吸着材に吸着させたC重油は,バーク堆肥微生物パイルにおける分解処理により,36m3規模の実験で開始直後の油分濃度14,300±1,600ppmは164日後に1,500±500ppmに,100m3規模の実験で開始直後の油分濃度8,600±900ppmは170日後に1,400±400ppmとなった.バックグラウンドが430±140ppmであることを考慮すれば,目標値の1,000ppm前後の値に至ったと推定される.
・油分の定性分析により,油分解過程における残留油分のクロマトグラムにおいて,投入したC重油のピーク分布とほぼ一致しつつ強度が減少しており,C重油に含まれる各種成分がほぼ一様に減少している一方,一部特異的に残留している成分があることが示された.
・微生物相の変化については,石油分解菌として働くとの報告があるCFBが油分解過程または分解後に特異的に確認され,油分解に関与している可能性が示された.
・パイル内の温度については実験当初は60℃前後,90日以降は50℃以下,180日時点で40℃程度となった.
 
 これらを踏まえ,生分解性の油吸着材の特徴を活かした更なる環境負荷低減技術の実現に向け,本技術の実用化を目指したい.
 
謝辞
 本研究に貴重な助言を頂いた東京大学・山口教授,九州大学・近藤隆一郎教授,広島大学・長沼毅助教授,資材をご提供頂いた九州石油(株)に御礼申し上げます.
 
参考文献
1)斉藤雅樹, 小倉秀 他:杉樹皮製油吸着材の開発と海洋流出油回収への適用(第1報), 日本造船学会論文集, 第190号, pp.287-294(2001)
2) M. Saito, S. Ogura et.al.: Development and Water Tank Tests of SBS, Papers of IMO 3rd R&D Forum on High-density Oil Spill Response, Session III ID39, pp.1-9 (2002)
3)(独)海上災害防止センター:杉樹皮製油吸着材の有効利用及び微生物分解処理技術に関する調査研究報告書II, 第4章, pp.30-43(2005)
4)内藤林 他(ナホトカ号の事故に関する調査研究会):ナホトカ号の事故に関する調査研究報告書, pp.54-55(1998)
5) Joergensen, R.G. et al.: Microbial Decomposition of Fuel Oil after Compost Addition to Soil, Z. Pflanzenernahr. Bodenk., No.160, pp.21-24 (1997)
6) Joegensen, K.S. et al.: Bioremediation of Petroleum Hydrocarbon-contaminated Soil by Composting in Biopiles, Elsevier Environmental Pollution, No.107, pp.245-254 (2000)
7)例えば, 大作和子:バイオレメディエーションによる汚染土壌浄化システム, 特願2001-113525
8)斉藤雅樹, 小倉秀 他:杉樹皮製油吸着材の微生物分解処理技術に関する研究, 日本造船学会講演会論文集, 第2号, pp.131-132(2002)
9)未来工学研究所:生物学的環境修復手法の社会的コンセンサス形成の調査研究(1997)
10)環境庁水質保全局:油処理剤及びバイオレメディエーション技術の検討調査報告書(1997)
11)(社)土壌環境センター他:2003地球環境保護 土壌・地下水浄化技術展パンフレット, pp.18-19(2003)
12)栗原正人 他:化学・微生物複合型重質油汚染土壌の浄化技術開発, (財)石油産業活性化センター技術開発成果発表会要旨集R6.1.1(2004)
13) S. J. Macnaughton, etc.: Microbial Population Changes during Bioremediation of an Experimental Oil Spill, Applied and Environmental Microbiology, Vol.65, No.8, pp.3566-3574 (1999)


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