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2.3 溶接初期不整
Fig. 5 Assumed welding residual stress distributions
 
 溶接初期不整として,溶接残留応力と初期たわみを考慮する。溶接残留応力は,Fig. 5に示す矩形分布で近似し,パネルと防撓材のそれぞれで軸力の自己平衡条件が満足されるよう応力分布を定める。引張残留応力の大きさは,材料の降伏応力に等しいとする。Fig. 5の記号を用いると,圧縮残留応力は次式により与えられる。
 
 
 ここで,σYP,σYW,σYFは,それぞれパネル,防撓材ウェブおよび防撓材フランジの降伏応力を表す。なお,Fig. 5は,ウェブ・フランジ接合線に溶接線を有する組み立てtee-bar防撓材の場合を表している。flat-barおよびangle-bar防撓材の場合は,b2=h2=0とすればよい。
 Fig. 5の応力分布を,板要素および梁・柱要素の剛性積分点に初期応力として与えることにより溶接残留応力を考慮する。ISUM板要素の剛性積分点は,残留応力を考慮しない場合は7×7個の6等分点に設けるが,残留応力を考慮する場合は,引張・圧縮残留応力域を正しく考慮できる位置に積分点を設けて,剛性積分を行う。
 次にFig. 6に,ISUMで考慮する初期たわみの形状を示す。防撓材間のパネルの初期たわみには,式(4)のたわみモードを仮定する。防撓材には,次式のオイラー座屈モードの横たわみとねじれ変形を仮定する。
 
 
Fig. 6 Initial deflection of stiffened plates
 
3. 船体横断面の縦曲げ逐次崩壊解析法
 Fig. 7に,船体横断面の縦曲げ逐次崩壊解析のための解析モデルを示す。図のように,トランスを挟んで前後1/2フレームスペースずつの範囲を取り出し,断面平面保持の仮定の下に,縦曲げモーメントを加える。一般に,縦曲げ崩壊の過程では,構造部材の座屈・降伏によって断面の中立軸がシフトする。このことを考慮できるよう,以下の手順により崩壊挙動を解析する。
 
Fig. 7 Procedure of bending moment application
 
 まず,両端面の適当な高さに,断面の回転中心となる仮想節点m1およびm2を定義する。節点m1,m2の高さは任意であるが,両者同じ高さに設ける。今,これらの仮想節点における軸変位(船長方向変位)をum,回転角をθmで表す。断面平面保持の仮定を適用すると,同じ断面内で仮想節点から距離zi離れた節点iの軸変位uiおよび回転角θiは,次式で与えられる。
 
 
ここで,
 
 一方,節点iに作用する軸力fiと曲げモーメントMiは,次のように仮想節点に関する節点力に変換できる。
 
 
ここで,
 
 両端面のすべての節点について,同様の変数変換を行うと,断面の曲げモーメント〜回転角関係,軸力〜軸変位関係を,仮想節点の節点力{Fm}と節点変位{dm}の関係として表せる。
 ここで,Fig. 7のようにトランスフレームと外板の交線に沿って軸変位を拘束する。さらに,軸力ゼロ(fml=fm2=0)の条件で,両端面に互いに逆向きの強制回転角θmlm2=θを与える。これにより,純曲げ荷重下の断面の逐次崩壊挙動を解析することができる。両端面の軸変位を許容しているので,中立軸の移動は自動的に考慮される。
 本論文では,トランスフレームを十分に剛と見なし,トランス位置で横断面の変形を拘束する。パネルと防撓材の面外変形に対しては,Fig. 1およびFig. 2に示したダブルスパンモデルを適用する。すなわち,トランス位置で面外変形を拘束し,端面(x=-a/2, a/2)では対称条件を課す。
 パネルの塑性変形の局所化は,各ベイ(防撓材スペース)に2つのたわみ自由度Alを与えることにより考慮する。一つはパネルが防撓材の曲げの圧縮側となるスパン(Fig. 2では右側スパン)の最も中央寄りの要素に与える。もう一つは同じベイの残りの要素に共通に与える。これによりFig. 1の図中に示すようなスパン中央におけるパネルの塑性変形の局所化を考慮することができる。


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