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3. 小型構造物モデルを用いた3点曲げ試験結果
3.1 荷重―変位関係
 供試部のウェブの板厚(t0)を6mmとしたG3シリーズ及び供試部のウェブの板厚(t0)を5mmとしたH3シリーズの荷重と試験体中央下部の鉛直方向変位の関係をFig. 4(a)及び(b)にそれぞれ示す。この図には、P-δ2[31]により求めたせん断座屈荷重を合わせて○印で示してある。また、破断が生じた時点を×印で示してあり、最大変位時以降の矢印(→)は本実験の載荷範囲内で破断が生じなかったことを示している。なお、ピットが部分的に集中しているH3-6〜H3-8のデータはプロットしていない。これらの図から分かるように、負荷開始直後は、荷重と変位の関係は直線関係にあるが、荷重増加とともに両者の関係は直線関係から外れ、せん断座屈が発生すると勾配が小さくなるものの荷重は増加し続ける。その後、ウェブにピットを設けてある試験体では、ウェブの破断が生じる。また、ウェブにピットを設けていない試験体(G3-1及びH3-1)では、荷重はほぼ一定値となり変形し続け、本実験の載荷範囲内ではウェブの破断は生じなかった。本実験で用いた試験体では、ウェブ周辺の外板、フェイス及びスティフナからなる枠組みの剛性が高く、せん断座屈後も荷重が低下せず、斜張力場[30]が形成されると考えられる。その後、ウェブにピットが存在する場合には、破断伸びが著しく低下している[23],[24]ため、斜張力場に働く引張荷重により破断に至るものと考えられる。ピットが存在するウェブの引張強度特性については、第6章で詳しく述べる。
 
Fig. 4 Load-Vertical Deflection Curves
(a) t0=6mm
 
(b) t0=5mm
 
Fig. 5 General View of Specimen After Test (H3-1)
(a) Experiment
 
(b) FE-Analysis
 
3.2 崩壊モード
 実験後の試験体の例として、ウェブにピットを設けていない試験体H3-1の全体図をFig. 5(a)に示す。Fig. 5(b)は、後述するFEM解析による変形状況を示したものである。Fig. 5(a)から分かるように、供試部(図の左側)のウェブはせん断座屈しており、試験体全体が大きく変形している。ウェブにピットを設けた試験体の例として、G3-2及びG3-5の供試部をPhoto 2(a)及び(b)にそれぞれ示す。各図の左側には供試部の全体写真を、右側にはウェブ破断部の拡大写真を示す。これらの写真から分かるように、ウェブに発生すると考えられる斜張力場に対して垂直に近い方向に並ぶピットに沿ってき裂が発生して破断に至ることが分かる。ウェブにピットを設けている試験体では、ピットの多少によらず全ての試験体でウェブが破断に至った。
 
Photo 2 Buckling and Fracture of Web
(a) G3-2 (left: tested section, right: enlargement)
 
(b) G3-5 (left: tested section, right: enlargement)


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