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3. 損傷破口からの流量の計測
3.1 実験概要および解析方法
 模型船の縮尺が異なると、損傷破口からの浸水の流量や階段室からの下部甲板への浸水の流量などの船体内部での水の運動が相似でない可能性がある。ここでは、いくつか考えられる原因のうち破口からの浸水の流量Q(t)(m3/sec)に着目し、簡便な模型試験により、その特性について調査すると共に、縮尺の影響について考察を行うこととする。
 Fig. 5に実験の概略図を示す。側壁に長方形の流入口(以下、破口と呼ぶ)を持つ直方体を透明なアクリル板(厚さ10mm、ただし破口のある面は厚さ1mm)で作成し、この直方体を検力計で完全に拘束する。あらかじめテープで塞いだ破口から、すばやくテープを剥がして水を流入させ、このとき直方体に働く鉛直方向の力(下向き+)を計測し、この力を用いて内部水面の上昇量および破口からの流量を算出した。
 Fig. 6に示すように、大小2種類の相似な直方体を作成した。なお、同図中の寸法は、直方体の内寸であり、黒い部分が破口である。それぞれの破口の大きさは、前章で用いた小型の3次元模型と大型の2次元模型のそれにほぼ等しい。
 
Fig. 5 Schematic view of experiment.
 
Fig. 6 Models used in experiments.
 
 Fig. 7に示す(a)の破口の高さ中心が水面と一致する場合と、(b)の破口が完全に水面下にある場合の実験を行った。さらに(b)の状態では、直方体に破口以外の空気口(排気口)がある場合と無い場合とで、破口からの流量が異なる可能性がある。そこで、
(b-1)破口と同等の大きさの空気口がある状態
(b-2)空気口面積が破口面積の1/25の場合
(b-3)空気口が無い場合
の実験を行った。
 計測した力から次式により、流入開始後t(sec)での内部水面の底面からの高さZW(t)(m)を算出できる。
 
 
 ここで、Zw0は底面から破口の下端までの高さ(m)、Sは直方体内部の底面積(m2)である。なお、(1)式右辺第1項は直方体内部の水の重量(kgf)を示し、第2項は破口からの水が自由落下し内部水面に衝突したときの反力を示す項であり、内部水面が破口下端に到達するまでは(1)式を、内部水面が破口下端に到達した後は同式の右辺第1項のみを用いて内部水面の高さを算出できる。なお、Zw(t)と流量Q(t)(m3/sec)との関係は次式で表される。
 
 
Fig. 7 Experimental conditions.
 
Fig. 8  Time history of flooding water depth in large model under condition (a).
 
Fig. 9  Time history of flooding water depth in small model under condition (a).


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