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3.2 実験結果
3.2.1 破口の高さ中心が水面と一致する場合
 大小の直方体での計測結果をそれぞれFig. 8、9に示す。これらの図より、内部水面はそれが破口の下端に到達するまではほぼ一定に上昇し、到達後は上昇速度が減少することがわかる。このことは、(2)式からわかるように内部水面が破口下端に到達するまでは流量Q(t)は一定であり、到達後は流量が減少することを示している。
3.2.2 破口が完全に水面下にある場合
 破口と同等の大きさの空気口があり、直方体内部で空気の圧縮が起こらない場合の大小の直方体での計測結果をFig. 10、11にそれぞれ示す。前述の場合と同様に、この場合も内部水面はそれが破口の下端に到達するまではほぼ一定に上昇し、到達後は上昇速度が減少する。つまり、内部水面が破口下端に到達するまでは流量Q(t)は一定であり、到達後は流量が減少することを示している。
 
Fig. 10  Time history of flooding water depth in large model under condition (b-1).
 
Fig. 11  Time history of flooding water depth in small model under condition (b-1).
 
3.2.3 破口の大きさが流量に与える影響
 大小の直方体を用いた、相似な実験状態での結果を、フルード相似則に従って、大きい直方体の内部水面の高さおよび時間を小さい直方体のスケールにあわせて比較したものをFig. 12、13に示す。なお、Fig. 12は、Fig. 7(a)の状態であり、Fig. 13はFig. 7(b)の(b-1)の状態での結果である。両図共に、直方体の大きさが異なると内部水面の上昇速度が異なり、小さい直方体の結果の方が大きい直方体の結果に比べ流量Q(t)が大きくなることがわかる。この結果は、Fig. 4に見られるように、浸水中間段階の船体の横揺れを大小縮尺の異なる模型で計測した場合に、小さな模型の最大横傾斜角発生時刻が大きな模型の場合に比べて早くなることに符合していると考えられる。つまりこのことは、破口からの流量Q(t)が相似にならず、縮尺の影響が存在することを示している。
 
Fig. 12  Comparison between small and large models as time history of flooding water depth under condition (a).
 
Fig. 13  Comparison between small and large models as time history of flooding water depth under condition (b-1).
 
3.2.4 空気口の大きさが破口からの流量に与える影響
 破口が完全に水面下にあるFig. 7(b)の場合、空気口が小さいもしくは無いことにより、直方体内部の空気が圧縮されて気圧が高くなり、流量に影響を与える可能性がある。Fig. 14に、小さい直方体について(b-1)破口と同等の大きさの空気口がある状態、(b-2)空気孔面積が破口面積の1/25の場合、(b-3)空気口が無い場合の実験結果を比較して示す。同図より、空気口が小さくなるに伴い内部水面の上昇速度が遅くなっており、これは流量Q(t)が減少していることを示している。なお、(b-3)空気口が無い場合の実験結果では、内部水面が破口上端に到達後は内部の空気の逃げ場が無くなり、内部水面の上昇が止まっている。以上の結果は、Fig. 4に見られる水密区画内の各甲板からBHD上に繋がる給排気管の面積を変化させた浸水中間段階での運動計測結果で、給排気管を塞ぐと最大横傾斜角発生時刻ならびに大横傾斜継続時間が長くなることに符合している。
 
Fig. 14  Comparison among three air ventilation conditions in the small model.


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