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3. 実験結果
3.1 位置誤差評価実験
3.1.1 固定基地局配置密度
 位置誤差の要因としては,マルチパス,フェージング,外来ノイズ,人体遮断の影響などが挙げられる.このうち人体遮断による影響は,端末を身に付けることを前提にするため避けられない問題であることと,使用周波数帯(2.4GHz)が人体の吸収を受けやすいことから,誤差に与える影響が最も大きいと考えられる.そのため,はじめに人体の影響を排除した場合の位置誤差の評価実験を行い,次に人体の影響を検討することとした.
 固定基地局6台を環境中に設置し,移動端末は人体に装着せず,1m程度の高さの紙製の箱の上に固定して位置計測の実験を行った.本システムでは,移動端末と固定基地局との距離が離れるほどS/Nが低下し,距離精度が悪化するという特徴がある.そこで固定基地局の配置密度を変化させ計測を行った.固定基地局6台を(a)10×18mの範囲に5m間隔で配置した場合と,(b)5×6mの範囲に2m間隔で配置した場合とでそれぞれ2分間の定点計測を行い,実際の位置と計測の結果求められた位置との距離誤差を比較した.Fig. 4は(a),(b)それぞれの場合の固定基地局のレイアウト及び位置計測結果の一例である.(b)の場合は(a)の場合に比べて計測位置が実際の位置に近づき,また計測位置のばらつきも小さくなっている.(a)の場合,平均誤差1.8m,標準偏差0.5mであり,(b)の場合,平均誤差0.4m,標準偏差0.1mであった.
 さらに10点の観測位置で2分間ずつ計測を行い位置誤差の平均をとったところ,(a)は平均誤差1.9m,標準偏差0.8mであるのに対し,(b)では平均誤差0.8m,標準偏差O.2mに低減した.
 
Fig. 4 人体影響がない場合の位置計測結果
(a)設置間隔が広い場合
(b)設置間隔が狭い場合
 
3.1.2 人体影響の補正
 次に人体の影響評価を行った.Fig. 5は3.1.1と同様の固定基地局配置(設置間隔5mの場合)において,移動端末を計測者の腰部にウェストポーチの中に入れて装着し,観測位置は固定したまま90度ずつ向きを変えた場合の計測結果である.Fig. 5(a)は移動端末を体の前側に装着したときの計測位置Pfを表し,Fig. 5(b)は移動端末を体の後ろ側に装着したときの計測位置Pbを表している.人体の向きに応じて,人体の遮断を受ける固定基地局の位置関係が変わってくるために,計測位置が人体の向きごとに別な位置に分布していることが分かる.計測者本人の人体の影響を軽減するために,体の前後に移動端末を装着し両者のデータを用いて人体影響の補正を行った.補正後の位置Pcを以下のように求めた.
 
 
 Fig. 6は(5)式の補正により求められた結果である.Fig. 5(a)の場合が平均誤差1.4m,標準偏差2.8m,Fig. 5(b)の場合が平均誤差1.6m,標準偏差3.0mであるのに対して,補正を行ったFig. 6の場合,平均誤差1.4m,標準偏差1.9mとなり,人体の向き変化による計測位置のばらつきを約2/3に低減させることができた.
 
Fig. 5 人体の向きに対する位置計測結果
(a)体の前の端末による位置Pf
 
(b)体の後ろの端末による位置Pb
 
Fig. 6 人体影響の補正結果
 
 10点の観測位置で2分間ずつ計測を行った場合の位置誤差についてTable.3にまとめる.ただし補正前の平均誤差及び標準偏差は,端末を前に付けた場合と後ろに付けた場合の平均値を表している.表中の固定基地局レイアウト(a),(b)の固定基地局配置に関しては,3.1.1節に述べたものと同様である.
 
Table.3 人体補正による位置精度向上
固定基地局レイアウト 補正なし 補正あり
m σ m σ
(a)10×18m 1.5m 3.0m 1.4m 1.9m
(b)5×6m 0.8mm 1.6m 0.7m 0.9m
m: 平均距離誤差,σ: 標準偏差


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