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平成17年度 国際的海上保安業務能力向上の推進 事業報告書

 事業名 国際的海上保安業務能力向上の推進
 団体名 海上保安協会 注目度注目度5


III 日米間における裁判制度及び警察活動の関連性についての研究
第4学年I群 福松 研郎
第4学年I群 山木戸 奨
第4学年I群 文字 勇一
第4学年II群 山田 剛士
 
指導教官 海上警察学講座 檀上 弘文 講師
 
1. 調査研究概要、目的及び必要性
 米国は、我が国の法律を考える上で多数の法理に関連しており、日本の刑事訴訟法を学ぶ上でその類似点、相違点を比較研究することは十分に有意義であると考える。
 私たちは、平成17年8月13日〜20日の間、米国連邦裁判所(Court House)及びワシントンDCを管轄する警察機関であるメトロポリタン・ポリス・デパートメントを対象機関として調査・研究を行った。具体的な調査目的は次のとおりである。
(1)日本国憲法第35条と、アメリカ合衆国憲法第4修正は非常に類似点が多いと見受けられるが、日米間での条文上の違いだけではなく、実務上の捜索、押収について、どのような点で異なるのか。
(2)米国は日本の警察機関とは若干体系が異なり、州警察とFBIが存在している。取り扱う法域の管轄も異なっているが、主に、職務質問等において、米国では武器の携帯が一般的であることから、警察比例の原則はどのようなレベルで考えられているのか。
(3)まもなく始まる日本の裁判員制度について、現在国民の関心は高いが、参加への意思はむしろ消極的であるとの印象を受ける。米国は陪審制度への国民の関心度やそれを援助する環境・体制が整備されていると思われるが、実際はどうなのか。米国最高裁判所の裁判風景を見学し、実情を調査することにより日本の裁判員制度の問題点を研究したい。(陪審制度の研究)
 
2. 裁判所(Courts House)
(1)裁判所の概要
 米国には、州裁判所(State Courts)と連邦裁判所(Federal Courts)とがあり、この2つは、互いに独立している。
 州裁判所は、州又はその州内の郡又は市によって設立されるもので、州の裁判所制度をどのように定めるかは、それぞれの州の自由である。実際、各州はそれぞれの伝統、思想、実際上の必要などに基づいて、自州に適すると信ずる制度を採用している。その結果、裁判所の組織・名称などは様々で、日本の地方裁判所に相当する裁判所はDistrict CourtやCircuit Court、高等裁判所に相当する裁判所はCourt of AppealsやAppellate Division、最高裁判所に相当する裁判所はSupreme CourtやCourt of Appealsなどと呼ばれているが、これら以外の名称が用いられている州もある。州の裁判所には、約3万人の裁判官がおり、毎年、交通違反及び駐車違反を除き、2700万件を越える事件について裁判が行われている。強盗事件、交通違反、契約破棄、家庭争議のような市民個々人に関する事件のほとんどは、州裁判所で審議され、解決することが一般的である。
 連邦の裁判所は、合衆国憲法で連邦に与えられた権限に基づいて創設されるもので、約1500人の裁判官がおり、毎年、約百万件の事件について裁判が行われている。これらの事件の80%近くが破産の書類整理で、約10%が未成年者の刑事犯罪である。連邦の裁判所には、公判を行うDistrict Court(地方裁判所)、上訴裁判所であるCourt of Appeals(控訴裁判所)、そして、公判の管轄権と上訴管轄権の双方を有するSupreme Court(合衆国最高裁判所)がある。ただし、合衆国最高裁判所が専属的公判管轄権をもつとされているのは、2つ以上の州間の争訟のみである。また、最高裁判所の上訴管轄権については、連邦裁判所からの上訴は同じ司法制度内での上訴であるのに対し、州裁判所からの上訴は本来自己完結的な司法制度で、ある州の裁判所から、連邦制との関係で必要な場合に、州とは別の司法制度に属する連邦の最高裁判所への上訴を認めることができるため、日本ではないような問題が生じる。なお、今回訪問したCourt House(写真(1))は、D.Cにある連邦の地方裁判所の一つである。
 
(写真(1):Court House)
 
(2)陪審制度と裁判員制度の比較
イ 米国陪審制度
 裁判に市民の常識を反映させる制度で、陪審員は裁判区ごとに候補者名簿から選出される。刑事事件で、起訴、不起訴を決める大陪審(陪審員16〜23人)と、有罪、無罪を審理する小陪審(陪審員6〜12人)がある。評決は全員一致が原則で、それ以外評決不一致(hungjury)となる。有罪判決の場合は、評決後に裁判官が量刑を言い渡し、無罪判決の場合は、無罪が確定する。仮に選出されない場合であっても、他の裁判等で選出される可能性もあるため、候補者は、一定の期間中は裁判所に通わなければならない。また、州によっては、最終候補者を選出するために、裁判官が、弁護側と検察側で話し合い(お互いが有利になるようにかけひきがある)をして、陪審員を選出する場合もある。
 また、評決までの流れとしては、まず、選出された陪審員候補者に対して、陪審員裁判の2週間ほど前に、呼出し状(写真(2))とともに質問書(写真(3))が届く。人数は70〜80人程度に送られ(実際に来る候補者は50人程度)、特に難しいケースにあっては100人近い候補者が呼ばれることもある。呼び出された候補者は、JURORラウンジ(写真(4))に集められ、ビデオ等で陪審員のレクチャーを受ける。そして、候補者一人ずつに裁判官等の質問を受け、陪審員12人(予備陪審員を入れると14人)を選出する。そして、陪審員席(写真(5))で裁判を傍聴し、カンファレンスルーム(写真(6))において陪審員のみで話し合い、評決する。なお、予備陪審員は、公判中においては誰が予備陪審員であるのかを本人以外は知らされておらず、カンファレンスルームにおいて話し合う際に退席することになる。
 
(写真(2):呼出し状)(写真(3):質問書)
 
(写真(4):jurorラウンジ)
 
(写真(5):陪審員席)
 
(写真(6):カンファレンスルーム)
 
ロ 裁判員制度とは
 平成16年5月、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、公布された。
 これによって、平成21年5月までに、一般の国民の中から選ばれた裁判員が裁判官とともに一定の重大な犯罪に関する裁判を行うという制度、いわゆる裁判員制度が実施されることになる。わが国では、現在、職業裁判官による裁判が行われているが、かつて陪審員制度が実施されていたことがある。1928(昭和3)年から1943(昭和18)年まで15年間にわたって実施され、この間、484件の刑事事件が陪審員制度で裁かれているが、そのうち、81件(17%)に無罪判決が出ている。しかし、1943年に陪審法は、「廃止」ではなく「停止」になり、現在でも効力が停止されたまま法律として生きている。今回、裁判員制度における目的は、国民に裁判に加わってもらうことにより国民の司法に対する理解を増進させること、長期的にみて裁判の正統性に対する国民の信頼を高めることがあげられる。なお、一般の国民に、証拠書類の詳細な読み込みを期待することはできないため、必然的に公判廷で見て、聞いているだけでも心証を形成できるような審理に変えていく、すなわち、書証依存体質からの脱却を推進する力となる。さらに、審理に長い時間をかけるわけにはいかないため、争点の解明に必要な証拠調べを効率的に行う審理計画を立て、連日的開廷による集中審理を行うことにより、審理期間の短縮・審理の迅速化につながる。
ハ 陪審制度と裁判員制度の比較
陪審制度 裁判員制度
選任資格 原則、18歳以上で居住期間が一年以上で合衆国の市民であり、英語を理解できる者 原則、20歳以上の有権者
対象事件 すべての刑事事件、民事事件
(1)死刑、無期懲役・禁錮にあたる罪に係る事件
(2)法定合議事件のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件
合議体の構成 原則、陪審員は、刑事事件の重罪事件も軽罪事件共に12人、民事事件は6人 原則、裁判官3人と裁判員6人
権限
(1)裁判官の陪審員に対する説示の中で示された法の原則に従って重罪事件も軽罪事件共にその事実(有罪・無罪)は12人の全員一致による。
(2)裁判官は裁判の主宰者として、訴訟手続き、証拠の取捨選択、法令の解釈や適用を行う。
(3)陪審員は審理中に質問することはできず、陪審員のみの評議、評決となる。
(1)事実認定、法令の適用、刑の量定は、裁判官と裁判員の合議体の過半数で、裁判官、裁判員のそれぞれ1人以上の賛成する意見による。
(2)法令の解釈、訴訟手続きに関する判断等は、裁判官の過半数の意見による。裁判員は審理中に質問することもでき、評議、評決を裁判官と共に行う。
 
(3)質疑応答
Q1 We will start the similar system in Japan. This purpose is to improve the people's understanding and the trust in judiciary. Why can citizen jury who do not have the expert knowledge about law decide in the same way as juries do?
(日本では、国民の司法に対する理解や信頼を高めるという目的で新しく裁判員制度を行なおうとしているが、アメリカの陪審員制度も同様、そもそもなぜ法律の知識を全く持たない一般人(裁判員)が判断できると考えられるのか。)
A1 I am convinced that the general public can judge enough. Because juror absorbsproper knowledge by opinions of an expert of law.
(私は、一般市民でも法律の専門家を参考人とすることで、きちんとした知識を吸収し、充分に判断できると確信している。)
解説
 この質問は、アメリカの歴史を遡ると、長い間審議され続けている問題である。かつてアメリカは、きちんとした教育を受けた者のみが、陪審員を務めるべきであると考えられていたが、司法手続きに専門家のみが参加するということに対し、多数の国民が反対の意見を主張した。これにより、一般市民が裁判に参加する陪審員制度を導入したのである。その中で、複雑かつ解決困難な事案が発生した場合においても、法律の専門家を呼び、参考人とすることで、一般の教養でも判断することができるとした。実際に、陪審員の意見が全員一致でなければ評決をだすことはできないが、ほとんどの裁判で評決が下されるようである。仮に評決がでない場合においても、再度評議を行う又は陪審員を新たに集めることにより、裁判のやり直しを行う。
 
Q2 In America, people receive education that it is a civic duty to serve on a jury from childhood. But we don't receive such an education in Japan. Furthermore, it is said that 70% of the people do not want to participate in trial. What do you think about this?
(アメリカでは、陪審員になることは市民の義務として幼少の頃より教育を受けているが、日本ではそのような教育を全くうけていないのが現状である。また日本の国民の70%が裁判員として裁判員に参加したくないと言っている。これについてどう考えられるか。)
A2 In America, even if people are selected as jurors, many candidates don't attend like Japan. In fact, it is said that 50% of the people do not want to participate in trial. However, most of jury has a sense of vocation about and have interests their work once they participate in a trial.
(そのことはアメリカにおいても同様であり、陪審員候補者に選ばれても、多くの人々は出席しないものである。実際のところ、アメリカの国民の二人に一人は陪審員として裁判に参加したくないと言っているようだ。しかしながら、陪審員の多くは、一度裁判に参加すると興味を示し、陪審員の務めとは何かということを学ぶと、使命感からその職務を全うするのである。)
解説
 一般人が裁判の参加に積極的でない背景には、日米共に二つの理由が考えられる。一つ目は、人々は各々の仕事等で自分は忙しいと思っていること。もう一つは、陪審員(裁判員)として参加することは、他人の人生を左右するかもしれないということに対して自信が持てないことである。裁判官のウルビナ氏は、自身の務めとして以下のことを言っている。
 まず、第一に、陪審員がきちんと出頭するように呼びかけを行うこと。陪審員が裁判に落ち着いて取り組むことが必要であるため、ウルビナ氏は、陪審員に対して、「君たちは私達と同様の裁判官です。そして、私達は一つのチームです。」と話しかける。このような働きかけによって、自分達の重要性を認識させるようである。
 第二に、弁護士による説明を受ける前に、彼らがすべきことを指導すること。具体的には、陪審員が、「聞いたことを忘れてはいけない」という不安を避けるため、メモを取ることを許可するのである。なお、これは、ウルビナ氏自身のやり方で、メモ等の禁止を告げる裁判官も中にはいるようである。それぞれの裁判官によって考えは異なっているが、国民はこれに従っている。このことからアメリカでは、裁判官に対して国民からの強い信頼と尊重が感じられた。
 
Q3 In this system, the judgments concerning legal proceedings are made by the majority of professional judges because these will need the expert knowledge about law. But judges may hear opinions of citizen jurors if the confession was acquired illegally. What do you think of hearing opinions by jurors regarding professional issues?
(裁判員制度では、訴訟手続きに関する判断は、専門性が高いため裁判官のみの過半数で判断されるとしている。しかしながら、訴訟手続きの中でも、専門性の高い違法収集証拠や自白の任意性に関する判断においては、その審理や評議に裁判員も同席させ、裁判官が必要と考えた場合においては、裁判員の意見も参考にすることができるとしている(アメリカは訴訟手続きに関する判断は完全に裁判官のみに一任されている)。
 高度な知識が要求されるものまで法律の素人に意見を求めることについてどう考えられるか。)
A3 It is very good to hear opinions of citizen jurors about legal proceedings that need the expert knowledge about law because it will expect synergistic effects of relationship of the police and the citizen from region to region.
(裁判官が訴訟手続き等の専門分野等においても裁判員に意見を求めることは、非常にすばらしいことだと思う。なぜなら、陪審制度の裁判に参加した市民が各地域にいることで、警察と市民の関係がより良くなるのではないだろうか。)
解説
 専門性の高い違法収集証拠の判断についてなども一般市民と討論することで、市民への司法に対する関心は更に高まり、法の知識が増していくと考えられる。これにより、例えば警察が、証拠を捏造したりする(車の中に銃や麻薬をおき、犯罪にしたてあげる)ことを市民の目から抑制することになる。
 
Q4 In this system, it will be prohibited to contact with citizen judges and expose personal information on citizen judges. In the America, how do you protect of juror on trial or after trial? Was there the problem by the protection system so far?
(裁判員制度では、裁判員の保護のために、裁判員の個人情報の公開の禁止や何人も裁判員との接触を禁止するといった措置や罰則をとるとしている。米国では、陪審員に対して、裁判中、又は裁判後の保護体制はどうしているのか。そして、今までにその体制で問題等(主観的に納得のいかない評決からの逆恨みによる犯罪等)はなかったのか。)
A4 At by security cameras and a juror usually can come home every day. However, if there is a danger to them, it will take measures to protect them. For example, they will use security glass in court and arrange accommodation for them, and let them stay at a court to deal with mass media.
(基本的にアメリカの法廷では、防犯カメラがまわっている程度で、陪審員は、裁判中でも毎日帰宅することができる。ただし、危険の可能性があると判断された場合においては、防弾ガラス付きの法廷(写真(7))で裁判を行う場合や陪審員を確保するために裁判所が安全なホテル等を用意する場合もある。また、有名人等の判決においては、マスコミの対応のために、裁判所の特別なエレベーターを用いて陪審員を帰宅させる場合や裁判所に寝泊りさせる場合もある。)
解説
 特に陪審員を自宅に帰すことについて問題はないと考えているのは、実際に今まで陪審員に接触をしようとする者はほとんどいなかったからである。しかしながら、注意を常に払っておかなければならないのは事実である。なお、大陪審員の安全確保のために、大陪審は、非公開で行っている。
 
(写真(7):防弾ガラス付きの法廷)


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更新日: 2019年12月7日

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