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5-4 相手船動静監視システム各機能に関する評価結果
 平成17年度相手船動静監視システムに関する各種評価は5-2項の相手船動静監視システム評価指針で述べられた評価方針あるいは評価手順に則り、「さんふらわあ とまこまい」殿による実航行中の海上評価試験、エム・オー・マリンコンサルティング殿、海上技術安全研究所殿および古野電気(株)における陸上評価試験において実施された。
 ここでは相手船動静監視システムの、主として平成16年度において未確認であった機能、平成17年度に新規追加あるいは改善提案によって実施された機能などに関する動作例の紹介や動作確認結果をはじめに本5-4項にて報告する。
 また、「さんふらわあ とまこまい」殿の実航海中における相手船動静監視システムの動作例を紹介する意味で、房総沖から東京湾の航行にともなった本システムの表示内容が代表的な航行ポイントでどの様なものであったかを記録写真をもとに項を改め5-5項にて紹介する。
 さらに、相手船動静監視システムの安全航行に対する有効性が従来システムによる航行(目視、レーダ、ARPA、AIS等による判断を基にした航行)に比較してどの様に位置付けられるかという事に関して、操船経験者殿に海上評価試験や陸上評価試験を通して評価いただいた。その評価のためのアンケートに対する操船経験者からの回答などを基本とした調査結果のまとめを更に項を改め5-6項にて報告する。
 
 本5-4項における評価は5-2項の相手船動静監視システム評価指針で示された評価手順書の各内容を整理する形で、本システムの各主要項目に関して動作確認を行なったものである。従って、各評価項目は評価手順書の項目的な類似内容をそれぞれまとめて実施したもので、本項の最後にまとめられている評価チェックリストの各項目は評価手順書に示されているそれとは必ずしも一致していない。
 なお、「さんふらわあ とまこまい」殿に装備した相手船動静監視システムプロトタイプの制御および表示用ソフトウェアと陸上評価のための再生システムの制御および表示用ソフトウェアとの違いは、陸上評価用に対しては各種データ記録機能がないという事などで基本的には同一であり、従って各機能の動作記録は船上で記録したものと陸上再生評価システムで記録したものの両者を含んでいる。
 以下に本システムの代表的な機能・性能の動作例を紹介するが、項目が多岐に渡っており下記紹介例以外は紙面の関係で省略する。
 
5-4-1 カメラ部動揺安定制御機能「1」
5-4-2 記録・再生機能「4」
5-4-3 各種情報の表示色変更機能「7」
5-4-4 画面内カーソルを使用した機能の追加「8」
5-4-5 OZT発生相手船のカーソル 指定による情報表示「9」
5-4-6 OZTの範囲指定による表示色変更や直下ラインの表示範囲等の設定「10」
5-4-7 各種マーカ類の表示機能「11」
5-4-8 試行操船機能「12」
5-4-9 ARPAとAISの融合機能「16」
5-4-10 ブイ・灯台等のシンボル表示「18」
5-4-11 再生レーダ画像表示機能「21」
5-4-12 チェックリストによる各機能の評価結果
5-4-13 情報統合化による相手船動静監視システムの開発におけるズームアップ画像の評価(参考資料)
 
注1)5-4-1項から5-4-11項までの各項目内容の後についている「 」の中の番号は5-4-12項で紹介するチェックリストの各項目においてそれぞれ対応する番号を示している。
 
注2)5-4-13項は相手船動静監視システムの「さんふらわあ とまこまい」殿による海上評価試験において、景観画像のサービスエリアを向上させるための一つの手段としてズームカメラによる景観画像を表示させて画像記録したものである。評価用の参考資料として添付する。
 
情報統合化による相手船動静監視システムの開発におけるカメラ動揺修正機能に関する効果
2006年2月13日
株式会社トキメック
項目番号:5-4-1
評価項目:景観画像表示機能
評価内容:カメラ動揺修正機能に関する効果
評価基準:船の動揺に対する景観の画像安定度が仕様基準以内であること。
検証方法:平成16年度 計算結果による検証
平成17年度 動揺試験機での計測、実船による計測
評価結果:
 
(1)動揺試験機での計測
動揺安定精度は下記動揺条件にて±1°
動揺条件:
ピッチ角:±10°、周期:6秒
ロール角:±30°、周期:8秒
(動揺条件は、インマルサットSDMを参考にして定義している)
 上記動揺に対する動揺安定精度を動揺試験機にて計測し、仕様を満足しているかどうか検証した。
 
 表1に計測した追従偏差角度を示す。追従偏差角度は、概ね動揺安定精度と考えてよい。
 計測の結果、動揺安定精度±1[°]以内という仕様は充分に満足していることを確認した。
 
表1 動揺試験結果(動揺時間は5分間)
No 動揺[°] 周期[s] 追従偏差角度[°]
1 ピッチ ±10 6 ±0.23
2 ロール ±30 8 ±0.18
3
(2軸)
ピッチ ±10 6 ±0.09
ロール ±30 8 ±0.21
 
(2)実船での計測
 「さんふらわあ とまこまい」殿に搭載後、実船にて2回、動揺安定精度を計測した。
 ここでは紙面の都合で、台風の影響により船体動揺が大きかった第2回目の試験結果を紹介する。
 
<2回目 平成17年9月26日〜27日>
 前日に台風が通過したため、1回目の試験と比較し、動揺角は大きく、大きくうねるような状況であった。実船試験中、画像での水平線の動きは問題なく、動揺安定動作は良好であった。
 
 ロール軸、ピッチ軸のエンコーダ角度と、各軸サーボ系の追従偏差角度を計測した。結果(代表例:原ノ町沖)を以下に添付する。
 
 計測結果から、船体の動揺はピッチングは±1.5[°]程度、ローリングは±4〜5[°]程度であったことがわかる。
 
 サーボ系の追従偏差角度は、各軸とも±0.05[°]以内に収まっている。
 今回の海象でも設計目標を満足できたことを確認した。
 
情報統合化による相手船動動静監視システム 2軸安定台 実船計測データ(2005092702)
2005年9月27日 原ノ町沖航行中 船速 29.6kt


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