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4. 実証システムの検証とまとめ(平成17年度実施内容)
4.1 実証システムの検証試験
 昨年度までに、実証システムの設計、実証システム構成要素の製作および機能確認試験に取組んできたが、本年度は、実証システム試験へむけて、まず構成要素の信頼性確認試験、実証システム構築の具体化に取組んだ。
 構成要素の信頼性確認試験については、実証システム試験へむけて構成要素の信頼性を確認するため、超臨界水発生装置および超臨界水噴射弁の連続運転を実施した。超臨界水発生装置および超臨界水噴射弁については、これまでに基本的な特性は確認済みであるが、本年度は昨年度の結果をふまえ、一部改良を行った上で連続運転を実施した。
 実証システム構築の具体化については、昨年度までの構成装置の試験は横浜にて実施してきたが、今年度の実証システム試験は長崎にて試験エンジンと組合わせて実施するため、構成要素の移設計画、設置ならびに組立計画の具体化、またエンジン関連スペックの詳細検討などを実施した。
 本節では、上記のまず実証システム試験までの実施内容について説明し、ついで実証システムでの検証試験について述べる。
 
4.1.1 構成要素の信頼性確認試験
 まず超臨界水発生装置および超臨界水噴射弁の連続運転試験結果につき説明する。昨年の運転結果を受け、給水ポンプ内機器、配管要素、バーナ制御、ならびに計測方法全般につき見直しをはかり試験を実施した。また超臨界水噴射試験は、連続的な作動を確認するため、昨年度製作した容器を用いて大気圧下噴射にて実施した。
 
4.1.1.1 超臨界水発生装置の信頼性確認運転
 実証システム試験を実施するにあたり、超臨界水の供給源となる超臨界水発生装置の信頼性確認運転を実施し、最終的に良好な運用を確立することができた。超臨界水発生時に定常で±5[℃]程度の良好な特性を得ることができている。昇温時間についても、バーナの制御定数の見直しを行い、従来に対し目標温度に達する時間を短縮することができた。通常では1時間以内で目標温度に達しており、実証システム試験においてはエンジンの起動時間などと比較して十分短い時間といえる。
 またこの連続運転中、給水ポンプにおいてもとくに問題がなかったことを確認している。
 この超臨界水発生装置の信頼性確認運転を実施するにあたっては、昨年度の運転結果を受けて、また実証システム試験を勘案し、超臨界水発生装置に以下の改良を実施した。それぞれにつき改良の概要を説明する。
(1)ドレンバルブの電動化
(2)給水タンクレベル計への流量変換機能追加
 
(1)ドレンバルブ電動化
 超臨界水発生装置の運転時(立上げ時、立下げ時)に、流量調整のため使用するドレンバルブを従来の手動式から電動式に改良した。また遠隔操作を可能とし、実証システム試験において作業性の向上、また安全性の向上をはかった。本装置はステッピングモータの動力を用い、ウォームギアを介してバルブステムをまわす構造となっている。製作にあたっては、まずオリジナルでのバルブ駆動トルク、また閉切り時の必要トルクを測定し、また必要なバルブの微開角度(最小角度)を設定し、それをもとにモータ選定、ギア比設定を行った。今回の電動化により、ドレンバルブは遠隔操作によりあらかじめ設定された角度の刻みで駆動させることが可能となっている。設定角度は大・小2種類用意した。
 
(2)流量の把握
 これまで超臨界水の流量は給水ポンプのタンクのレベル計および、給水ポンプ出口に接続した高圧対応型のフローメータにて測定していたが、レベル計からは流量を直接的に読み取ることができず、またフローメータについては電気的な信号出力がないことから、実証システム試験にそなえ従来のレベル計に演算機能を加え、信号出力を設けて流量変化を読み取ることを可能とした。
 
4.1.1.2 超臨界水噴射弁の連続噴射試験
 先述のとおり超臨界水発生装置の安定した運転を確認した上で、ついで超臨界水噴射弁の連続噴射試験を実施した。今年度は連続作動により噴射弁の信頼性を確認することを目的とし、大気圧下への噴射を行った。大気圧下への噴射にあわせるため、噴射弁内のオリフィス径、作動油圧などは任意設定変更している。
 作動時間の目標は、連続10000回とした。作動間隔は実証システム試験のエンジン回転数750[rpm]に対応して毎秒6.25回である。
 試験は、まず常温の高圧水にて連続作動を行い、徐々に温度を上げていき、最終的に超臨界条件での連続作動試験を実施した。作動回数についても、徐々に増やして試験を実施した。当初は針弁の応答の経時変化、また針弁の摺動性などに懸念があったが、試験の結果、各温度の噴射とも、連続作動においてとくに問題はなく実証システム試験へむけての信頼性を確認することができた。図.4-1-1に試験結果を示す。噴射温度をパラメータとして、連続作動時の超臨界水噴射弁の応答をまとめている。大気圧下への噴射であるため、噴射の応答は実証システム試験と異なるが、常温での噴射では、針弁リフトに振動がみられ、高温では振動がおさまるものの、超臨界条件を越えた温度では針弁のリフトが増大する傾向がみられた。この応答は針弁が開いた直後のサック内の状態によるところが大きく、サック内の状態を決める針弁シート部の流れが、この応答の変化をもたらしていると考えられる。
 また今回の超臨界水噴射弁の連続作動試験では、二種類の噴射弁材料について実施している。耐熱鋼ノズルは針弁とノズル本体の熱膨張係数に差があるため、針弁クリアランスを変えて設計しており、針弁の傾きにより摺動性の悪化、シートの悪化の懸念があったが、今回の連続作動ではとくに問題はなく良好な結果が得られた。その応答波形については、図.3-1-6にあわせて示している。従来材での試験と比較して、リフト量が小さい結果となった。(噴射弁への電流指令を小さくしている影響もある。)また、連続作動試験後に針弁リフトの観察を行い、シートの磨耗などがないことを確認した。
 以上超臨界水噴射弁の連続作動試験結果について示した。大気圧下へ噴射のため、針弁リフトは実証システムでの試験に比較して小さいが、連続作動により実証システム試験に対する信頼性を確認することができた。
 今回の超臨界水噴射弁の連続作動試験にあたっては、超磁歪アクチュエータ、噴射弁作動ドライバー、高圧作動油およびシール油供給のための高圧油ポンプ、についても問題がないことを確認した。高圧油ポンプについては圧力変動および温度を計測し、良好な特性を確認している。
 
4.1.2 実証システム試験準備
 今年度の実証システム試験は長崎の試験エンジンと組合せて実施する。そこで構成要素の移設計画、設置ならびに組立計画の具体化、またエンジン関連スペックの詳細検討などを実施した。
 
(1)装置配置関連準備
 横浜で試験を実施してきた構成要素を移設のうえ設置する計画を行った。実証システムの運転面および安全面などを考慮して配置を検討した。最終的な配置は図.4-1-2に示すとおりである。横浜から移設する超臨界水発生装置(給水ポンプと発生装置)は屋外の簡易建屋内設置(図.4-1-3参照)とし、発生装置から屋内の単筒エンジンまで配管を取りまわした。電動化したドレン弁は単筒エンジンの近くに設置し、排水ラインは再び屋外にぬけて排水ピットヘ貯めるようにした。超臨界水の配管はこれまでの実績よりSUS316を用いた。配管は高温高圧に対応した継手を用いて接続した。
 
(2)単筒エンジン本体関連準備
 図.4-1-4に実証システム試験で用いる単筒エンジンの外観写真を示す。また表.4-1-1に実証システムの単筒エンジン主要スペックを示す。
 
表.4-1-1 単筒エンジシ主要スペック
項目 単位 値ほか
ボア/ストローク mm/mm 300/420
回転数 rpm 750
出力 kW 450
燃料(今回試験) - A重油
 
 単筒エンジンに関する準備としては、とくに本試験ではエンジンカバーに超臨界水噴射弁が2本配置されることに伴う設計製作を行った。まず今回の仕様では、超臨界水噴射弁の先端が燃焼室内に飛出しており、現状のピストンクラウンと干渉するおそれがあるため、ピストンクラウンのリセスの部分をカットすることとした。またリセスの変更および超臨界水噴射弁の配置にともない燃焼室容積および圧縮比が変化するため、変更形状にてあらためて精算し目標の圧縮比の調整を行った。
 またエンジンカバーについては、昨年までに加工済みであるが、本年度筒内圧力センサ用の加工また、ブリッジ案内ピン、給排気弁座、弁案内、燃料弁用ソケットなどの製作カバーへの組込みを行った。また台座についても超臨界水噴射弁と干渉するため追加工を行った。
 またエンジンカバー廻りの超臨界水配管の配置検討も実施した。超臨界水噴射弁が2本配置されるため、超臨界水発生装置からの配管をドレン弁下流の単筒エンジンの直前で2つに分岐され、それぞれを噴射弁につなげるようにした。図.4-1-5に超臨界水噴射弁のカバーまわりの写真を示す。
 超臨界水噴射弁がカバーの左右に斜め30度で、さらに周方向に13度ずれてはいっており、一方で単筒エンジンには25度のバンク角があるため、配管の取りまわしを難しくした。エンジン周りの配管についても、これまでの実績をふまえた継手を用いた。
 
(3)計測制御関連準備ほか
 制御系については、単筒エンジンの回転と同期して超臨界水噴射弁を作動させるため、エンジン関連の制御系と超臨界関連(発生装置ならびに噴射弁)の制御系との取り合いを行った。また計測関連は超臨界水発生装置および超臨界水噴射弁については昨年度までの計測項目に準じ、これにエンジン関連の一般的な計測データをあわせて取得することとした。
 また安全関連については、単筒エンジン側および超臨界水発生装置側とも十分なインターロックを設定した。これら計測全般また監視については、すべて中央計測制御室で行うこととした。


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