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3.4 準備試験
 H17年度の原理実証試験へむけた準備試験として、前節で述べた給水システムと高温高圧水発生装置の機能確認運転を行った。具体的には超臨界水を発生させる確認運転ほかを行った。油圧ユニットについては、3.1節で述べた噴射試験時に運転を行い、問題のないことを確認している。
 まず試験前の確認として、給水システムについては定格値(35[MPa]、6[L/min])を安定に供給できることを確認し(H15年度に試験実施済み)、本年度追加したイオン交換樹脂、膜脱気(真空ポンプを含む)、薬注装置の調整を行った。イオン交換樹脂については、比抵抗計が十分な値を示していること(18[MΩ]レベル)、膜脱気装置では真空が引けていること、また薬注装置ではポンプの作動確認とpH確認を実施した。安全運用の観点から、ポンプ故障時を想定した補助ポンプの設置、インターロックの確認、また計測系の準備として、レベル計の確認、高圧対応流量計の設置などを行った。
 高温高圧水発生装置については、据付完了後に各部の損傷の有無、設置状態良否などの確認を行った。配管系統(LPG配管、熱交換器、本管、ドレン管)のエアおよび水によるフラッシングを十分に実施し、ついで定格圧力にて耐圧試験を実施し問題のないことを確認した。つぎにバーナ部の確認を実施した。バーナファン、冷却ファンの作動確認、また手動による電極のスパーク、パイロット点火、パイロットバーナ燃焼状態確認、およびメインバーナの点火確認、インターロックの確認を実施した。
 以上の確認後に、超臨界水を発生させる確認運転を実施した。装置の配置図を図.3-4-1に示す。確認運転の手順としては、まず給水システムで圧力および流量を設定する(圧力は給水システムのリリーフ弁で調整し、流量は給水システム出口のバルブを全開でドレン弁を微開として調整した)。ついで熱交換器出口温度(高温高圧水温度)を設定して燃焼を開始する。各目標温度到達時に燃焼状況および制御性を確認し、問題がなければ順次設定温度を上げていくこととした。
 実際の確認運転ではまず目標温度250℃で運転した。種々調整を実施してLPGバルブ開度を制御するPIDの諸値が概略決まったところで、先述の手順どおり目標温度を上げていった。図.3-4-2は確認運転結果の一部で、熱交換器出口が450[℃]に達し、超臨界状態となっているときのグラフである。このとき流量は約7.0[L/min]である。出口温度は±5[℃]程度の振れ幅で推移しており、良好な制御性が確認できる。
 以上によりH17年度の原理実証試験へむけて、給水システムと高温高圧水発生装置が基本的な仕様を満たしていることを確認した。今後もH17年度の原理実証試験へむけて制御性などの改善を図っていく。
 
図.3-4-1 高温高圧水発生装置配置図
(拡大画面:159KB)
 
図.3-4-2 確認運転結果
 
3.5 平成16年度 開発研究の成果およびまとめ
 排気ガスの熱を回収して超臨界水を生成し、これをシリンダ内に噴射することで、NOxの低減とCO2の低減を同時に図ることを狙いとした、超臨界水場エンジンの開発研究に取組んだ。本年度得られた成果は以下のとおりである。
 
(1)H15年度の試作をもとに、超臨界水噴射弁の改良設計・製作を行った。また超臨界水噴射試験のためにシリンダを模擬した容器を製作した。
 
(2)超臨界水噴射弁の機能確認試験を実施した。高圧下への超臨界水の間欠的な噴射を行い、目標の仕様を満たす見込みを得た。
 
(3)H17年度の原理実証試験に備え、ユーティリティおよび計測制御系の設計を行った。またエンジン本体の改造として、超臨界水噴射弁を据付けるエンジンカバーの製作を行った。
 
(4)H17年度の原理実証試験に備えて、給水システムおよび高温高圧水発生装置の製作を行いその機能を確認した。
 
 本調査研究は、平成14年度のFS研究を経て、平成15年度から平成17年度の3ヵ年で産官学連携のもと、実用化の目処をつけるため開発研究を推進させるものである。
 本年度は来年度のエンジン試験へむけて、各コンポーネントの製作および確認試験、また改良製作を行った。本年度の成果をもとに来年度の原理実証試験で、本システムの総合的な評価を行う。


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